サーカスの子

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065309667

作品紹介・あらすじ

大天幕の中に入ると、そこは夢の世界だった。--
舞台の上で繰り広げられる華やかなショー、旅を日常として生きる芸人たち。子供時代をサーカスで過ごした著者が、失われた〈サーカスの時代〉を描く、私的ノンフィクション。

あの場所は、どこへ行ったのか?
僕がそのときいた「サーカス」という一つの共同体は、華やかな芸と人々の色濃い生活が同居する場所、いわば夢と現が混ざり合ったあわいのある場所だった。(本文より)
幼いころ母とともにキグレサーカスで暮らした著者は、四十年近い歳月を経て、当時の芸人たちの物語を聞きにいく。
それは、かつて日本にあった貴重な場所の記録であり、今は失われた「故郷」と出会い直していくような経験だった。
気鋭のノンフィクション作家による注目作。

感想・レビュー・書評

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  • 彼はぜんぜん幸せじゃなかったと思う…スター団員の元妻が語る「サーカスで生まれ育った人」の人生 サーカス外での生活に適応しているように見えたが… | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
    https://president.jp/articles/-/67976?page=1

    サーカスの子 | 群像 | 講談社
    https://gendai.media/list/books/gunzo/9784065309667

    『サーカスの子』(稲泉 連)|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000374512

  • いい読書でした。
    シングルマザーと小学生手前の「筆者」が
    たった1年、寝食を共にしただけのキグレサーカス。
    既に廃業して、その場所はない。
    35年後に当時の芸人たちを訪ねていく。「れんれん」「懐かしいね」と当時のままの呼びかけで覚えてくれている当時の大人たち。サーカスの結びつき、なんかすごい。

    「いてもいい場所」、村のような共同体。
    今は探してもない。現存するサーカスは
    エンターテイメント、ショービジネスだ。

    おじさんになった筆者れんれんが、
    あのウキウキした村、なんだったんだろうと
    気になって確認したくて関係者に会いにいく
    自分の歴史再訪のノンフィクション、かな。
    郷愁を感じる作品。

  • 著者は幼時の一時期、母とともに実際にサーカスで生活していた経験から、大人になった今、当時の団員にインタビューをする。
    サーカスの「中の人」の生の声が興味深い。
    自分の意志でサーカスに入った人、生まれた時からサーカスで育った人、どちらもサーカスでの生活のいいところ、そうではないところを考えながら生きてきた人生なのだろう。
    短期間での転校を繰り返さざるを得ない教育環境や、子どもの教育を考えてサーカスを出て行く決断をすることなど、家族ぐるみの仕事だからこその悩ましさなども、当事者たちの言葉がリアルに胸に響いた。

    私も子どもの頃、何度か見に行ったことのあるサーカス。
    子ども心にも、その「ハレ」と「ケ」がくっきりわかれている空間に、郷愁めいたものを感じていた。
    本書を読んで、その理由の一端がわかった気がした。

  • とても良かった。
    奇をてらうものがなく、淡々とわかりやすい言葉で見事に胸に迫ってくる。
    著者の並々ならぬ筆力に感心した。

    新聞記事で著者へのインタビューを読み、興味を持った本だった。
    79年生の著者が80年代のはじめ、ほんの一年だけ、サーカスの下働きをした母とともにサーカスで暮らした体験をもとに、大人になってから当時のサーカスの関係者たちに会いに行く話。
    見世物小屋時代からあるサーカスが、高度成長期を経てそのありかた、魅せ方が大きく変わる時代に実際にたちあった人たちの人生。
    一言でいえば、過渡期にあったサーカス関係者のドキュメンタリー。
    誇張もなく、さらりと語られているのに、私のこころをギュッと掴む、この感情はなんだろう。

    この夏に、私もたまたまサーカスをみる機会があった。
    義父がビジネスとしてそのサーカス団に関わったので、近しい話題として読んだ。

    サーカスの華やかさと、あの哀愁。
    開催期間がおわり、サーカステントのあったところは、たった数日で夢のように消えて野原に変わってしまう。
    その瞬間に対して、サーカスの外からきて、魅せられたものたちは何かを読み取り、心が揺さぶられていたという。
    一方で、サーカスで生まれ育ったものたちにはその感覚はあまりない。
    彼らはむしろ、サーカスを《おりた》あとの社会との折り合いに四苦八苦している。
    移動しつづけ、ゆるやかなサーカス家族のなかで生きた人たちには、定住を受け入れることが苦しいのだ。
    それでも、子供が小学生になるタイミングで、サーカスをおりる人が多いのには、納得だ。
    自分のような大人になってほしいか、なってほしくないか。
    一昔まえより、そういう葛藤のある大人が多かったに違いない。

    サーカスで生まれ育ったひとが、大人になってサーカスをおりたのち、本来サーカスが移動するタイミングにあわせて、精神が荒れて模様替えをしていたという話が印象的。


    読みおわって、なぜか泣きそうになった。
    まつりのあとの、この寂しさはなんだろう。
    著者の真摯で誠実な書き方に、ただただ圧倒されてしまった。

    著者の母もこの当時の体験を本にしているらしく、それも読んでみたいと思う。

    私にとっては放浪していく世界は現代なのに異世界のよう。
    ヨーロッパの旅芸人の一座、ロマニーの物語などを読むときと近い感覚でした。

  • 常に気になっている存在の
    一つが「サーカス」である。

    あの「ぼくもいくさに征くのだけれどー竹内浩三の詩と死」を書かれた稲泉連さんが書かれている。もうそれだけで 読んでみよう! ではあるのだけれど、
     わずか一年とは言え、連少年が生い立ちの一時期に「サーカス」の場にいたからこそ、生まれた一冊。
     「ハレの空間」の象徴的な一つの場所が「サーカス」、なかなか部外者が取材を重ねたからとて、その「ケの部分」が引き出されることは先ずありえない。
     そして、その部分を 昔の仲間の一人だからと
    訥々と語ってくださったからこそ、生まれた稀有なルポルタージュである。

     サーカスが成り立っている世界は健全な世の中である。このコロナ禍で 改めて認識させられた。
    私たちの健全な日常には「サーカス」が必要である。
    そんなことを考えさせらた。
     
     

  • 面白かったです!お母さんのことは知っていたけど、息子さんから見るとこんな感じだったのね。知り合いの知り合いが出てきてびっくり!

  • 著者がキグレサーカスで過ごした時のことを書いた本かと思っていたが、その部分はメインではなかった。彼がいたのは小学校入学前の一年間だけ。母の久田恵さんが本を出しているので、実家に資料もあっただろうが、それを掘り起こすのではなく、当時サーカスで働いていた人々と連絡を取って話を聞くというスタイルだった。
    子どもには見えていなかったところを彼らの証言が伝えてくれるし、サーカス興行の栄枯盛衰も見えてくる。
    大衆演劇もそうだろうが、サーカスで育つ子どもは、あちこちで公演するため、学校を何度も転校する。ある芸人は小中学校で160回も転校したと言う。
    この本に出てくる元芸人たちは、子どもが小学校入学の時にサーカスをやめるか、子どもを実家に預けている。
    子どもはそれぞれなんとか成長したが、サーカスの芸人は親もサーカスの芸人で生まれも育ちもサーカスのテントという人が多かったため、やめてもなかなか実社会に馴染むことができず、ほとんどの人が離婚しているし、孤独死する人(主に男性)も多い。
    テントを一から組み立てて、華やかな非日常を演じ、テントを解体し別の土地に移るという生活をしていると、非日常が日常になってしまう。
    サーカスのメンバーは助け合い、苦楽を共にする家族のようなもので、居心地も大変いい。興行成績が良かった頃は、衣食住が保証された上で給料が出るのだから、羽振りも良かった。
    しかし、実社会に出てしまうと、芸人としては素晴らしくても、それ以外の稼ぎ方を知らないし、学歴もない。同じ土地で暮らすことにそもそも慣れない。生活は苦しい。
    サーカスの芸自体、やりがいはあるが、綱渡りや空中ブランコなど、失敗すれば命に関わる。(保険とかあったんだろうか?)

    今の目から見れば、いろんな点で無理があり、日本にサーカス団体が少なくなってしまったのは仕方ないと思える。
    しかし、その鮮やかさ華やかさ、芸のハラハラドキドキ、終わったときの満足感と切なさは、サーカスにしかない。
    サーカスに対する愛惜の情が伝わる本だった。

  • 779-I
    閲覧

  • 作者が2010年に廃業したキグレサーカスで過ごした幼年期一年で出会ったサーカス団員とキグレサーカスを回顧するノンフィクション。

    1980年前後の古き良きサーカスでの日々と負の面を書き綴った。保証の無い芸事を仕事にするいわゆる芸能界と似たりよってる、今の時代なら何かしら「資格」は取得しといた方が良いんだろうね。

  • 皆んなのサーカス愛がよくわかった。

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著者プロフィール

稲泉 連(いないずみ・れん):1979年、東京生まれ。早稲田大学第二文学部卒。2005年に『ぼくもいくさに征くのだけれど 竹内浩三の詩と死』(中公文庫)で大宅賞を受賞。主な著書に『「本をつくる」という仕事』(ちくま文庫)、『アナザー1964――パラリンピック序章』(小学館)、『復興の書店』(小学館文庫)、『サーカスの子』(講談社)などがある。

「2023年 『日本人宇宙飛行士』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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