- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065312834
作品紹介・あらすじ
そもそも「地政学」とは何か?
地理的条件は世界をどう動かしてきたのか?
「そもそも」「なぜ」から根本的に問いなおし、激動世界のしくみを深く読み解く「地政学入門」の決定版!
現代人の必須教養「地政学」の二つの世界観を理解することで、17世紀ヨーロッパの国際情勢から第二次大戦前後の日本、冷戦、ロシア・ウクライナ戦争まで、約500年間に起きた戦争と激動世界の「構造を視る力」をゼロから身につける!
「一般に地政学と呼ばれているものには、二つの全く異なる伝統がある。『英米系地政学』と『大陸系地政学』と呼ばれている伝統だ。両者の相違は、一般には、二つの学派の違いのようなものだと説明される。しかし、両者は、地政学の中の学派的な相違というよりも、実はもっと大きな根源的な世界観の対立を示すものだ。しかもそれは政策面の違いにも行きつく。たとえば海を重視する英米系地政学は、分散的に存在する独立主体のネットワーク型の結びつきを重視する戦略に行きつく。陸を重視する大陸系地政学は、圏域思想をその特徴とし、影響が及ぶ範囲の確保と拡張にこだわる」――「はじめに」より
【本書のおもな内容】
●地政学は「学問分野」ではないという事実
●「英米系地政学」と「大陸系地政学」の決定的な違い
●地政学をめぐる争いは「人間の世界観」をめぐる争い
●ハートランド、シー・パワー、ランド・パワーとは?
●生存圏、パン・イデーン、ゲオポリティークとは?
●日英同盟が「マッキンダー理論」を生み出した
●なぜ戦後日本で地政学が“タブー視”されたのか?
●日米“シー・パワー”同盟が英米系地政学の命運を左右する
●冷戦終焉をめぐる視点――「歴史の終わり」と「文明の衝突」
●地政学はロシア・ウクライナ戦争をどう説明するのか?
●中国とは何か? 「一帯一路」とは何か?
●私たちはどんな時代に生きているのか?
感想・レビュー・書評
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世界の戦争・紛争の要因
世界では地域・国家とその勢力・勢により紛争、戦争が勃発しているが、これは文化、文明、宗教など含め静観する世界ではなく、参画(巻き込まれる)することへの恐怖も今後伴うことだろう。そこに地政学における区分けを無理やりしている感があるが「陸と海」の制覇は歴史が物語り、現代はその規模がネット社会により世界を一瞬に覆い巻き込むのが恐ろしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
そもそも地政学とは何か、
地理的要因を基に分かりやすく解説されています。
中国やロシアの暴走の内容について
一帯一路政策やランドパワーの話など
戦争に興味ない人にはお勧めしませんが、大人の教養としてあると良いものばかりだと思います。 -
「米英系地政学」と「大陸系地政学」という分類は初めて聞いた。
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篠田英朗(1968年~)氏は、早大政治経済学部卒、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス国際関係学Ph.D.取得、広島大学平和科学研究センター助手・助教授・准教授を経て、東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。その間、ケンブリッジ大学客員研究員、コロンビア大学客員研究員等も務めた。
本書は、近年関心が高まり、関連する書籍も多数出版されるようになった「地政学」について、理論的な枠組み・定義を示し、地政学的見地から、近代の戦争の歴史、日本の戦争、現代世界の戦争を考察したものである。
主な内容は以下。
◆地政学には2つの異なる枠組みがあり、ひとつはハウスホーファー、シュミット等による「大陸系地政学」、もうひとつはマッキンダー、スパイクマン等による「英米系地政学」である。前者は、有機体的国家観、大国の主権の重視、複数の生存圏の存在を前提にした秩序を志向し、19世紀ヨーロッパ公法に懐古的、反普遍主義的、反自由主義的で、多元論的世界観(圏域)を持つ。結果として、圏域拡張主義戦略をとる。後者は、地理的条件の重視、海洋の自由、海洋国家による陸上国家の封じ込めを志向し、現代国際法に親和的、普遍主義的、自由主義的で、二元論的世界観(海と陸)を持つ。結果として、同盟ネットワーク型戦略をとる。
◆マッキンダーは、ユーラシア大陸中央部(ロシア等)を「ハートランド」、同外周部分を「インナー・クレセント」、その外側の島嶼地域(イギリス、日本、米国、オーストラリア等)を「アウター・クレセント」とする概念を示し、全世界の見取り図を描き出した。更に、ハートランドのような大陸の要素を持つ国家を「ランド・パワー」、大陸に属さない国家を「シー・パワー」と呼び、ランド・パワーが拡張戦略をとるのに対し、シー・パワーは、歴史法則的に、ランド・パワーの膨張を封じ込めるための戦略をとる、とした。
◆近世以降のヨーロッパの戦争は、大陸系地政学的発想で、ヨーロッパを一つの圏域と見做す国(ドイツ等)と、英米系地政学的発想で、バランス・オブ・パワーの社会と見做す国(イギリス等)の戦いであった。
◆東西冷戦は、ハートランド国家の典型であるソ連の膨張政策を、シー・パワーの代表であるアメリカが封じ込めた対立であり、冷戦の終焉は、シー・パワー連合がランド・パワー陣営を打ち負かしたという現象である。今般のロシアのウクライナ侵攻は、冷戦終焉後、旧東欧諸国に拡大したNATOが、旧ソ連構成国に影響を及ぼすに至り、生存圏を脅かされたとするロシアが起こしたものと見ることができる。
◆日本が明治期に結んだ日英同盟は、英米系地政学によるシー・パワーの同盟と説明された。第一次大戦後、日本は大陸に進出していくが、それはランド・パワーの性格を持ち始めたということであり、更に、大東亜共栄圏構想は、大陸系地政学による生存圏と呼ぶべきものだった。しかし、第二次大戦敗戦後は、日米同盟を軸とする英米系地政学に回帰した。
◆冷戦終焉以降、紛争が多発しているのは、西アフリカから、北アフリカ、中東、南アジアに連なる地域で、英米系地政学的に見れば、ハートランドから、アラビア、「南のハートランド(アフリカ大陸のサハラ砂漠の南側)」にかけて広がるイスラム過激派の拡張を、アメリカが封じ込める動きと見ることができる。また、旧ソ連外縁部における紛争は、大陸系地政学に沿ったロシアの拡張主義的な行動によるものである。
◆中国は、英米系地政学的に見た、ランド・パワーとシー・パワーの両方の性格を持った両生類なのか、大陸系地政学的に見た、アジアの覇権国なのか、まだ評価は定まらないが、英米系地政学の理論を体現する「自由で開かれたインド太平洋」と、新しい大陸系地政学の展開を予兆させる「一帯一路」が対峙する構図は、21世紀の国際政治の行方を決定づける最重要の国際社会の構造的対立の図式である。
説明は論理的で、読み進めるのに難はなかったのだが、私は読みながらひとつの疑問を感じていて、それは、現在シー・パワーの同盟ネットワークの一部を担っている日本としては、本書の中から、日本の考えが唯一の正解であり、他の考えを持つ国は全て間違っているという結論を読み取ればいいのだろうかということであった。
そして、それについては、著者は終盤で次のように書いている。「二つの異なる地政学のそれぞれの信奉者たちが、世界観の違いから対立を深めることは起こり得る。だがそのことも含めて、分析の視座として活用するのであれば、一般論として二つの異なる地政学のどちらが本当に正しいのかと思い悩みすぎる必要はない。二つの異なる地政学は、具体的な状況で、様々な程度の関連度を見せながら、複合的な分析の視座を提供する。」
地球には様々な世界観を持つ国が存在し、我々はそうした国々と共存していかなければならない。多様な視座を持つために、一読の意味のある一冊と思う。
(2023年7月了) -
桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/1318976 -
著者の言うように地政学という学問の分野は今のところ確たるものは無いということだと思う。
大陸系地政学と英米系地政学があるとしても、その時の現実の世界の情勢を言い表したに過ぎず、現実はもっと多様だと思う。
結局のところその時々の各国の指導者の考え方次第なのではないか。 -
学術的には正式には成立していない地政学だが、個人的にとても関心がある。
『英米系地政学』と『大陸系地政学』と二つの学派があるとのことだが、そのあたりの違いが、まだきちんと咀嚼でいていないけど興味深い。
現在各地で頻発している国際紛争の原因を知る上で、歴史とともに理解を深めたい。 -
国際政治チャンネルで地政学についてトークしているのを見て手に取りました。とりあえず地政学として大陸系と海洋系の2つの流派があるのは判りましたが、それ以上は難しい内容だったなぁと(大学の教科書ですかこれ)。
とりあえず内陸国家が外にはみ出そうとする動きは武田信玄とか確かにあるなぁと納得してしまったり。
とにかく難しい内容で理解しきれてないので、時間をおいてもう一度読み直したほうが良さそうです。 -
シーパワー対ランドパワーを基軸に展開。けどソ連の崩壊以降、現代ではランドパワーの脅威はかなり減じられているのかな。オモシロイと思ったのは、中国をして両性的としたこと。ただ中国の海軍って実績はないよね。実際の実力はどうなんだろうね。
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序盤はチェーレンとかマッキンダーとかハウスホーファーにスパイクマンとシュミットを足してまとめた感じ。
面白いのはP75第2部以降である。
大陸系/英米系地政学の視点から、ちょっと読みにくく賛同できない点も多々あるが、P128あたりからの日本の大陸進出以降にかかる地政学の変遷は面白い。
現代の戦争に関しては、おまけで書いた感強く、それほど目新しくは無いかな。