キッチン・セラピー

著者 :
  • 講談社
3.24
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感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065318072

作品紹介・あらすじ

今夜、ひとりでキッチンに立ちたくなる一冊。第一話 カレーの混沌旅先での出来事をきっかけに、人生の「迷子」になってしまった大学院生。ひと皿:スパイスと「ある物」を使って作るカレー第二話 完璧なパフェ家事と仕事と子育てに追われ、自分の好きなものを忘れてしまった母親。ひと皿:「彼女にとって」一点の曇りもなく完璧なマンゴーパフェ第三話 肉を焼くキャリアを地道に積み上げるも、周りとのライフステージの変化に思い悩む医師。ひと皿:生きる力を取り戻すための肉最終話 レスト・イン・ビーンズ町田診療所の主、モネの過去が明らかに。いま、豆を愛したある人のことを偲ぶ。ひと皿:持ち寄った、それぞれの大切な料理「どうして私たちは、大切なことから真っ先に忘れるようにできているのだろう」

感想・レビュー・書評

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  • 『町田診療所』を舞台に、様々な理由で行き詰まりを感じている人たちを再生する物語。
    ただこの『町田診療所』、病院やクリニックではない。運営?する町田モネなる青年も医者ではない。そこにあるのは台所。一緒に『くすり』となる料理を作る。

    勿論一筋縄ではいかない。
    第一話『カレーの混沌』では、訪れた青年の家から持ってきた全ての食材(調味料、菓子、アイスに至るまで)を使ってのカレーを作る。こんなものまで入れてしまって果たしてカレーになるのか…?と不安になるが、大丈夫。カレーの懐はどこまでも深く広い。

    第二話『完璧なパフェ』は訪れた働く主婦が『完璧』と思うまで町田モネはどこにでも行くしどんな材料でも揃える。
    第三話『肉を焼く』ではなんと猟師と共に狩りにまで。

    それぞれの事情については共感できるところもあって、読みながら息苦しくも感じた。その分ホッとできるところもあって良かったのだが、第二話・第三話は途中からモネは退場してしまってそれぞれの主人公たちがあれこれ動いていて、料理もどこかへ行ってしまったような。

    そして第四話は『町田診療所』が開かれるまでの話が描かれるのだが、これは更に息苦しくて驚いた。
    モネの飄々とした明るさの裏で、こんなことがあったとは。新型コロナでは様々な人たちの人生が変化したが、こういう変化は苦しいし辛い。でもきっとこういうことはあったのだろう。

    鍋がお姉さんという言葉にはこんな意味があったとは。

  • 宇野碧さん初読み。タイトルの通り、料理で人を癒すことをしている「診療所」という名の大きな台所がある一軒家が舞台。短編ごとにその「診療所」を訪れる色々な境遇の人物が描かれている。診療所を運営するのは町田モネという不思議な感じを纏う男性。一見のんびり鷹揚な雰囲気を出しているが、自身も辛い経験を抱えていたりする。著者の宇野さん自身の経歴に「世界各地の放浪を経て現在は和歌山県に在住」とあり、完全に想像だが、放浪していた時の実体験や巡り合った人たち、あるいは宇野さんの理想の人がモデルになっているような気がする。料理を通じ元気を取り戻し人生を好転させる人たちの姿を見て温かい気持ちになったが、終始不思議な雰囲気を纏った小説だった。

  • 心を癒してくれる「町田診療所」は、自ら料理をして「くすり」を作る。
    自分自身を見つめながら料理をしていくこと自体が、確かに癒しになるかもと思った。
    が、第2話のパフェには癒やし効果を感じたけど、第1話のカレーや第3話やお肉には個人的には魅力を感じなかった。
    (あまり美味しそうに感じなくて、元気が出そうにない。)
    食の好みは人それぞれってことかな。

  • すごく好きな感じだった。
    2つめの家族のお話でポロポロ泣いた。
    そうなんだよね、
    ほんと誰と戦ってるんだろう。
    やらなきゃ。こうしとかなきゃ。
    っていつのまにか思ってる。
    条件ばっかり考えて、自分の好きや欲求は後回し。
    子供が小さい頃家族で行く外食で、自分が本当に食べたい物は頼まなかった。
    今は頼めてる。
    だいぶ子供達も大きくなったんだな
    と実感した。
    後半は苦しくもあったけど
    前を向いて頑張れる気がした。

  • 面白かった。自然体で過ごして、人にもなじめる町田さんが羨ましい。

    第3話のましろさんの話は切ない。狩猟を教えてくれた実君に好意を持ったが、タッチの差でケガをして入院した時の看護師に持って行かれてしまったという。プライドや見栄があだとなったけど、努力して医者になった背景を考えるとやむなし。今後、いい出会いがあって欲しいと思った。恋愛はタイミングもあるし、この人と思ったら、素直に動いていくことが大事だろうな。

    第2話 完璧なパフェ 共感した。好きで結婚した相手とも生活となると、育児、家事、仕事と盛りだくさん。そして、どうしても女性は家事、育児の負担が大きい。家事や育児を協力して感謝しあうことが、良好な夫婦関係には重要だと思う。息子達にはそうなるよう子育てしてきだけど、どうなるかと楽しみにしている。

  • 仕事も人生もキャリアも子育ても、
    生きていれば何かしらに対して
    嫌になったり逃げだしたくなったりする。

    料理を通して今自分に必要だという
    何かしらの行為をすることによって
    登場する人たちは自分に何が必要なのか
    足りないのかを見出していた。

    そのきっかけ作りが「料理」という
    料理小説好きな私にとって
    いいなと思う本になった。

    コロナの問題なども取り上げたりと
    今の時代に生きる私達にも
    きっと覚えのある話がたくさん詰め込まれていた。

    荒療治なようで、そのひとたちの事を考えている
    モネのキッチン・セラピー。
    こういう場所があれば私も受けてみたいと思った。

  • 台所に立つ。
    何かを考えるのに手を動かすのも良いし、作業に熱中して悩みから一時距離をとるのも良い。
    町田診療所は投薬もなければ診察もなく相談にのってくれることもない。
    自分が自分に戻る作業を手助けしてくれる場所なのである。


  • 料理を作って心癒やす、家にある食材を全部使ってカレーを作る。パフェを作る。肉を食べるそれもジビエで、こんなにもおもしろい発想力はないと思う。デビュー2作目これからも期待大の作家さんですね。あなたも読んで癒されて下さい。

  • 心が疲れた人々が癒やしを求めて集う台所。
    最高のパフェを完成させるためのマンゴーパフェがめちゃめちゃ美味しそうだった。
    ジビエの獲物を捌くシーンにドキドキした。
    最後は切なかった。

  • Kindleで読んだ。
    すべての料理は、人を癒す「くすり」になる――。森の中にある「町田診療所」。そこは温かくて不思議なキッチンで…。
    初読みの作家さん。

    「カレーの混沌」と「完璧なパフェ」が良かった。
    カレーの包容力ってすごいよね。だいたいは受け止めてくれる。

    周りはもちろん大切だけど、『もっと自分のために生きていい』んだなって改めて思った。

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著者プロフィール

宇野 碧(うの・あおい)
1983年神戸生まれ。大阪外国語大学外国語学部卒。放浪生活を経て、現在は和歌山県在住。2022年、本作で第16回小説現代長編新人賞を受賞しデビュー。旅、本、食を愛する。


「2022年 『レペゼン母』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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