ニホンという病

  • 日刊現代
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065319840

作品紹介・あらすじ

解剖学者の養老孟司と精神科医の名越康文という心配性のドクター二人が異次元の角度から日本社会が患う「ニホンという病」を診察、好き勝手にアドバイスを処方する。
2022年冬、春、夏、秋、2023冬と5回に渡って行われた対談をまとめ、新型コロナやウクライナ侵攻といった時事的なテーマから、南海トラフ地震、脳科学、宗教観、自然回帰、多様性、死と再生など、実に30に及ぶ対談テーマをもとに繰り広げられた賢者二人の思考の世界が楽しめる。
一部を紹介すると
・日本社会に内包する問題、本質については
(養老)日本人は楽天的に考えて、本質に関わるところは変えなくていいことにしようとしてきたわけです。表層的なところだけを変えてきた。和魂洋才が典型だと思うね。明治維新は政治で動いたからまだいいですよ。戦後(太平洋戦争終結後)は何をしたかっていうと、日常生活を変えちゃったわけですよね。
人間の社会ってそんなややこしいものを理屈で簡単に割り切れるもんじゃない。終戦後、それを割り切れると思ったのがアメリカであり、日本だったわけです。

・さらに専門家によれば2038年までに来ると言われている南海トラフ地震で、明治維新、太平洋戦争敗戦以来の大転換を迎えるが、
(養老)この国で初めて、政治とか経済じゃなくて、それぞれの人の生き方が問題になってきますね。どういうふうに生きたらいいかって。何といっても、第一に子どものことを考えなきゃいけない。今の時代、子どもがハッピーでないのはハッキリしていますからね。それでなければ、自殺が若い人たちの死因のトップになるなんてあり得ないですよ。80代が元気な世の中っていうんじゃ話にならない。
(名越)これからは生き方自体をなだらかにでも急いで変えていくべきだということです。南海トラフをどうとらえるかは、メディアを通じてもっと多角的に、バラエティ番組なんかで伝えて議論すべきだと思います。
死というものを深刻に考えたくなければ、ライフスタイルを変えていくことが大事だと思います。数年、5年ぐらいの単位で、自分がどこに住むのかとか、どういうことに生きられる時間を溶かしていくか。価値観が変われば日本人のライフスタイルが5年ぐらいで結構変わっている可能性があると思います。

どのテーマでも二人の独自視点で語られて、生き方のヒントがつまった一冊だ。

感想・レビュー・書評

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  • 医学者、解剖学者の養老先生と精神科医名越先生の対談、第二弾。
    お二人の知についていけず、難儀したが、そのぶん濃く、いろいろ脳に刺激を与えてもらった。
    南海トラフ地震がニホンのターニングポイントになると、おふたりとも話されていて、気が引き締まった。
    私は寿命まで生きるとしたらたぶん現地で遭遇することになる。
    もし、生き残ったとしたら被災地で生きる覚悟をしなければならない。
    ニホン自体も大きな打撃を受けることになる。
    それからどのように復興していけばいいのか、そもそも復興できるのか。
    地球温暖化問題も、メディアなどでは当然のこととして語られ、警告されているが、けっこう昔から、それは違うんじゃないか、という意見があるのは本で知っていた。(読んでないけど)

    脳のことも、人間の心理のことも人それぞれであり、こうすればこうなる、といった真理はいまだみつかってないようだ。
    個々に対応するしかない。

    養老先生も名越先生もすごくアクティブ。
    名越先生はバンドや演劇も経験されているのだそう。
    フィールドが違えど、それがきっとお仕事や人生に還元されていくのでしょうね。
    何かをすれば何かが変わる。
    現状がすぐに変わらなくても意識が変わる。

    養老先生が亡くなった愛猫まるのことをお話されている。
    まるの写真がいっぱい飾られた机?の写真に切なくなった。

  • Dr.名越のオトナの休憩室|日刊ゲンダイDIGITAL
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/3598

    養老孟司は、こんな本を読んできた。 1930年生まれの読書歴〜前編〜 | ブルータス| BRUTUS.jp(2022.8.30)
    https://brutus.jp/record-of-reading_yourou1/

    養老孟司は、こんな本を読んできた。 1930年生まれの読書歴〜後編〜 | ブルータス| BRUTUS.jp(2022.8.30)
    https://brutus.jp/record-of-reading_yourou2/

    ニホンという病 養老 孟司(著/文) - 日刊現代 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784065319840

  • 本書が二冊目という養老先生と名越康文さんの共著、というか、対話本。養老先生の著書では語られることの本質がずばり突かれているためか、時間軸に囚われた議論というものを感じないけれど、ごく最近の話題をしばしば取り上げている本書では、二人の会話は時間軸上の特定の点に固定されようとする印象が強い。それは、どちらかといえば名越先生の語りに「今」に執着する心を感じることに起因することなのかも知れず、そして、本書の中で饒舌なのもまた名越先生の方だからなのかも知れない。養老先生の著書愛好家としては、そこが少しだけずらされたような印象に繋がる。

    それでも、確かに自分もこんな風な時事ネタの話題に関して養老孟司という人が何を言うのか聞いてみたいといつも思っていた。だからそれを議論に載せてくれる人が居て、それに対して養老先生が思考を巡らすのを聞いているのは面白いことは面白い。大体、先生の著書で展開されている話は、先生の頭の中でずっと考え続けられてきたことで、それが言語化される様式も概ね決まっており、聞いていて、はっ、とすることこそあれども、あれっ、と思うことはほとんどない。それが先生のあとがきにもあるように、人と議論をじっくりしている過程で見えてくるものを捕まえて形にしている、という雰囲気の言説が彼方此方に垣間見え、時々あれっとなる。それが本書の面白さの特徴と言っていいのかも知れない。

    日本という国の思考様式、あるいは常識が、これまでもがらりと変わったことはある、と養老先生は本書の中でも指摘する。鎌倉時代の後は集団死というものが見られなくなる、とどこかの著書で養老先生が語っていたけれど、例えば、歴史上現在に近く、未だにその変化の余韻が残っているところで言えば、明治維新と終戦だとの指摘には唸らされる。正に一夜にして価値観が急に変わるという、信仰を集団統治の中心に据える西洋政治文化では考えられないことを、日本人は二度もさらりとやってのけたのだ、と。それはどうして可能であったか、そして、どうしてその余韻が未だに現在の日本社会を呪縛し続けるのか、という問い掛けは鋭い。

    その問い掛けに少しだけ自分でも答えてみたくなる。すると思いつくのは、そもそもこれほど水資源に恵まれ、放置された場所が瞬く間に自然に帰っていく環境の中で長いこと生きてきた人間というものは、人間の作ったものに対する信頼を、端から持ち合わせていないのじゃなかろうか、という考え。それは、中国の茫々の砂漠や欧州の森のない人工的な環境の中で暮らすのとは大違い(中国人も西欧人も木を切り尽くして使ってしまったのだ)。あちらは都市化の大先輩だ。

    そんなことを考えていると、例えば、争いごとが水に流されるというのも、要は人と人との取り決めに価値を見出したところでしょうがない、という考えの裏返しのようにも思えてくる。選挙の投票率の低さを交通違反を摘発するのと同じ調子でメディアは指摘するけれども、そもそもそんな仕組みに対する圧倒的な信頼の無さがことの本質であって、それは恐らく、平安の都で天皇を中心とした政治が行われていた時も、鎌倉幕府が力にものを言わせて政治を牛耳っていた時も、戦国時代も江戸時代もずっとずっと、上で国を動かしていると思い込んでいる人たちの間でだけで成立する約束事に過ぎなくて、田畑を耕したり、木を切り出したり、魚を釣ったりしていた人の生活の約束事とはあまり関係がなかったということであり、それは今日のいわゆる政治不信の状況と大差ないのじゃないのかな、とも思う。そもそも江戸にこれほど人が集中するまでは、本当の意味での都市化というのを日本は経験していなかったのだ。

    ただし、終戦後、地に足を付けた生活をしている人の比率が極端に下がってしまった(昔の社会科では昭和の年号と会社員の人口比率は同じような数字と習ったものだ)中で迎える今後の大きな変化(それを養老先生は南海トラフ地震の前後における変化だろうと指摘する)をどう日本人が身体的に乗り越えるのか、不安なことは大きいというのは指摘の通りだと思う。何しろ、今やほとんどの国民が会社員で定住の地を持たず、かつネットやメディアによって意見を表明したり賛成したり反対するという(非生産的な行為)が生きて行くことの何割かの位置を占める状況なのだから。取り敢えず水と食べ物だろう、という知恵が回らない社会になっているのだから。都会と田舎の参勤交代、というアイデアはけだし名案なのかも知れない。

  • 今の日本をネガティブ表現したタイトル本が氾濫しており、そろそろ食傷気味。表紙がタイトルだけだったらスルーしたが「大量のヒント」が得られるなら読んでみたい

    #ニホンという病
    #養老孟司
    #名越康文
    023/5/29出版

    #読書好きな人と繋がりたい
    #読書
    #本好き
    #読みたい本

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  • お二人とも好き、かもしれない。
    なんか肩の力が抜けました。
    でも身が引き締まりました。
    読めて良かったです。
    国内外問わず、自然の近くに行くと声が大きくなるのですが、それは自分に力がみなぎっているからなのかもな、と思いました。

  • 精神科医との対談。養老先生のお話も、だいぶ身に付いた、今日この頃です

  • noteで知った本

  • ままならない社会や組織などの大きな力に、個人としてどう対峙すればいいのかという問いに、道筋を提示している。個の内発的な力で行動する必要性。組織はひとりでに変わるとも。
    ただ、私は選挙にも行きます。おっしゃる通り何も変わりませんし、制度に絶対の信頼を寄せているわけでもありません。それでも、今あるものでできることをしておきたい派なので。
    とはいえ、お二人ともスタンスの違いはあれど、次元が違うんですよね。大局的というか。本書の内容を理解するには、もう少し思索を深める必要がありそう。

  • 未来の日本(著者の目)よりこちら(現在の日本)を解剖して見ればヤマイにかかっている。
    これから来るかも知れない困難に、今のままの都会人の日本人では生き抜けない。

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著者プロフィール

養老 孟司(ようろう・たけし):1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士(解剖学)。『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。『バカの壁』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。同書は450万部を超えるベストセラー。対談、共著、講演録を含め、著書は200冊近い。近著に『養老先生、病院へ行く』『養老先生、再び病院へ行く』(中川恵一共著、エクスナレッジ)『〈自分〉を知りたい君たちへ 読書の壁』(毎日新聞出版)、『ものがわかるということ』(祥伝社)など。

「2023年 『ヒトの幸福とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

養老孟司の作品

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