光をえがく人 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 81
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065320655

作品紹介・あらすじ

東アジアのアートが照らし出す五つの物語。その一つ一つが大切な人との繋がりを浮かび上がらせる。世界の「今」を感じさせる小説集!

【ハングルを追って】
ハングルが書き込まれたアドレス帳を拾った美大事務職の江里子は、油画科の親友に相談し、ソフィ・カルにちなんで韓国へ行ってアドレス帳の持ち主を探すことに……。
【人形師とひそかな祈り】
伝統の御所人形を作り続ける正風は子どもにも弟子にも恵まれず、そろそろ工房を畳もうと考えていた。そんな折、フィリピンからの留学生を紹介され心を開いていく……。
【香港山水】
現代水墨画家の成龍は、コレクターたちのパーティに駆り出される。そこで本土の実業家の夫人・美齢と出会い、デモ隊と警察が衝突する混乱のさなかに二人は再会し……。
【写真家】
有名な写真家だった父が、記憶をなくして海外から帰国。娘は世話をしながら、母から写真家としての父の話を聞き、生涯を辿ることになる。知らなかった真実がそこに……。
【光をえがく人】
ミャンマー料理店の店主に、自国の政治犯についての話を聞くことになった。学生のころ反政府運動に加わって投獄され、劣悪な監獄生活のなかでの奇妙な体験とは……。

感想・レビュー・書評

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  •  『沁みるアート。』と帯にある。見事な単語の選択。自分の中に沁みて行く、竹の様なしなやかさと確固たる生き様。
     思わず、自分のルーツを再確認したくなる。そして、自分の来し方も。こんな風に光を見上げて生きて来たか?影に向かって心を騙してはいなかったか?
     人形師のように、胡粉を乗せそっと布でぬぐい、何度も繰り返し、ほのかに光る文章を削り出している作品。『神の値段』から読んでいるが、ここまで心を動かされたのは、初めてだった。

  • 5つの短編集それぞれのアートの背景の話が、次、美術館でいろいろな作品を見る時に参考になると思う。
    西洋美術ばかりではなく、アジアの美術も見てみたい。

  • 韓国、フィリピン、香港、モンゴル、ミャンマーそれぞれを舞台に、アートをテーマにした短編小説集。生活や伝統、文化におけるアートと人との関係性が日常の一コマのように自然に組み込まれている。決して大上段に構えた厳かなアートではなく、一般的な人たちとアートとの関わりがうまく描写されている。

  • それぞれ独立した5つの短編集。
    それぞれに共通するのがタイトルにもある「光」。世間を大きく変えることはないけれど、それぞれのアートに内在している光がある人の心を揺さぶり動かし、ちょっとだけその人の世界を変える。
    現代アートは難しいところもあるけれど、この本を読んでその抵抗感がちょっと薄れて身近なものに感じられた。

  • 不思議な短編集。何故、韓国?

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著者プロフィール

1988年、京都府生まれ。東京藝術大学美術学部芸術学科卒。香港中文大学大学院修了。2015年、『神の値段』で第14回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞して作家デビューを果たす。主な著書に『ピカソになれない私たち』、『コンサバター 大英博物館の天才修復士』からつづく「コンサバター」シリーズ、『飛石を渡れば』など。近著に『カンヴァスの恋人たち』がある。

「2023年 『光をえがく人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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