中世ヨーロッパの色彩世界 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065332832

作品紹介・あらすじ

明日、何を着ていこう――冠婚葬祭をのぞけば、服選びで色がもつ意味を気にする人はいないだろう。ところが中世ヨーロッパではそうはいかない。たとえば緑は恋を、青は誠実さを意味し、黄は忌避される色だった。中世の色は現代よりもはるかに饒舌で、絵画や文学で描かれた人々の衣服の色には、単なる色の美しさや好みを超えた、さまざまな意味が託されている。中世の人びとはどんな色に囲まれ、どんな気持ちで色を身につけていたのか、あるいは目の前の人物が纏う色から何を読みとっていたのか。多彩な史料から複雑で精緻な色彩コードを読み解き、中世人の日々の感情生活を豊かに描き出す。あの絵画もこの伝説もいっそう深く理解できる、色が語る中世世界への招待!(カラー口絵付き。電子書籍版はオール・カラー図版)待ちに待った初めての逢瀬。恋焦がれた女性が鮮やかな青に緑のオウムをちらしたドレス着て現れたら、相手の男性は有頂天になるだろう。なぜなら、そのドレスの意味するところは「誠実にあなたを愛します」。ところがある日、夢に現れた彼女が全身緑の衣をまとっていたら、悲嘆に暮れてしまうかもしれない。青が意味する誠実さに対し、緑は恋の色であると同時に変動の色でもある。彼女の心変わりが青を脱がせ、緑を着せたのだ――。このように単なる色の好みや色づかいの美しさを越えて、中世の色は複雑な精神世界を織りなしている。「中世の色は饒舌であり、中世の人びとは意味もなく色をつけることはない」。たとえば黄色には負のイメージがつきまとい、縞柄は道化師や娼婦、気まぐれな運命女神のものである。権威と権力を示す赤、醜い色からやがて「悲しみの色」として大流行する黒……。ブリューゲルやジョット、ヤン・ファン・エイクの絵画、数々の華麗な装飾写本の挿絵に、アーサー王物語をはじめとする騎士物語、貴族の家計簿や財産目録など多彩な史料から、当時の染色技術も視野にいれつつ、色彩に込められたメッセージを読み解き、色から見えてくる中世世界を描き出すのが本書である。グリーンゲイブルスのアンはなぜ「赤毛」を嫌ったのか、ルーレットやバカラなどのカジノ台はなぜ緑のフェルトでおおわれているのか、囚人服は縞柄で、スーツにダークカラーが多いのはなぜなのか。現代社会に今なお息づく色彩に秘められた歴史に迫る!(原本:『色で読む中世ヨーロッパ』講談社選書メチエ、二〇〇六年)【本書の内容】序 章 色彩文明の中世第1章 中世の色彩体系第2章 権威と護符の赤第3章 王から庶民までの青第4章 自然感情と緑第5章 忌み嫌われた黄第6章 子どもと芸人のミ・パルティと縞第7章 紋章とミ・パルティの政治性第8章 色の価値の転換終 章 中世人の心性

感想・レビュー・書評

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  • 徳井淑子『色で読む中世ヨーロッパ』 | のぽねこミステリ館 - 楽天ブログ(2007.03.26)
    https://plaza.rakuten.co.jp/nopomystery/diary/200703260000/

    「色で読む中世ヨーロッパ」徳井淑子 講談社: 叡智の禁書図書館<情報と書評>(2007年05月20日)
    http://library666.seesaa.net/article/42355754.html

    LA|現場の声|色・音・香 6 色・音・香と生活文化 | 21世紀型文理融合リベラルアーツ
    https://www.ocha.ac.jp/la/column/class/09A2106.htm

    徳井 淑子 (Yoshiko Tokui) - マイポータル - researchmap
    https://researchmap.jp/read0008630

    中世ヨーロッパの色彩世界 徳井 淑子(著・文・その他) - 講談社 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784065332832

    『色で読む中世ヨーロッパ』(徳井 淑子):講談社選書メチエ|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000195324

  • ・徳井淑子「中世ヨーロッパの色彩世界」(講談社学術文 庫)は書名そのままの書であ る。本書は、「いわゆる色のイメージを中世ヨーロッパの世界に見ていこうとするものである。つまり、中世の人びとが自然の色にどのような感情を託し、またどのように色を創り、そこに社会はどのような意味を付与したのか、を解き明かすことを試みる。これは、逆に色を通して中世人のこころの世界と社会のありかたを見ていくことでもある。」(「はじめに」4頁)そこで「本書は基本的には衣服の色に関わる詮索を、ヨー ロッパのなかでも特にフランスを中心におこなっていく。」 (同5頁)ことになる。そのために中世の文学作品がある。これは、「それらの色にどのような意味を人びとが与えていたのかを伝える格好の資料」(同7頁)である。これら以外にも多くの資料等を用ゐながら中世の色彩世界を読み解いていく。正に蒙を啓かれる思ひの書であつた。
    ・衣服ではないが、「獣の毛色であるフォーブ色を代表する」(153頁)のは狐であり、それが主人公となるのが「狐物語」である。「キツネのルナー ルはペテンばかりを働いている。」(同前)のだが、この物語の主人公が狐でないといけな いのかなどと私は考へもしなかつた。日本の昔話のイメージからもそのやうには考へ得るのだが、中世ヨーロッパでも狐はずる賢い存在と考へられてゐたのかどうか、これは分からない。 しかし、ここでは色が問題であつた。第五章は「忌み嫌われた黄」(145頁)と題され、小見出しも「ヒトを排除する黄」「ユダと黄色」「『あいつは黄 褐色だ』という中世フランス語」「黄色の比喩ー悲しみと怒 り」等と続く。そして最後は 「ジャン・バルジャンの黄色い通行証」で終はる。ここには肯定的な文言はない。ユダやジャ ン・バルジャンは盗人、高利貸 しといふに等しいのであらう。 狐もこの流れにある。「フォーブ色が欺瞞という意味をもったのは、このことばの音が虚偽を意味することばに近かったためかもしれない。(中略)中世文学のなかで、フォーブ色の獣はいつも怪しい気配を漂わせる。」(153頁)だから狐なのである。日本の狐は化ける。 中世ヨーロッパの狐は嘘と欺瞞に満ちてゐるのである。更に、より重要な赤がある。この章題は「権威と護符の赤」(67頁)である。ただ赤の場合、「赤系の色のすべてが好もしい色として中世人のこころをひいたのではない。」(69頁)といふ。「茶色を帯びた赤色のニュアンスを示すrouxは、同じくラテン語ruberから派生・変化したことばであるが、これは赤毛を表すときにもっぱら使う色名であり、ゆえに忌まわしい意味をもっている。」(同前)赤毛がかういふものであつたことも私は知らなかつた。だから、「赤毛のアン」や「にんじん」の嫌悪感がよく分からない。「中世の赤毛は身体の醜さと同時に裏切り者という精神的な卑しさを示し、要するに蔑視感を表す」(同前)ものであつた。かうなつて、やつと赤毛の持ち主の気持ちが分かる。実はこの色、狐にも関係してゐる。「赤茶色の毛といえば、キツネもしばしばこの色で示される。」(70頁) それは「赤毛が狡猾さと結びつ」(同前)いてゐる。つまり「赤茶色は策略と裏切りを示す 色」(同前)であつた。狐には、その色からして良いイメー ジはなささうである。赤といつても赤毛はそんな色だつたので ある。ところが「権力者たちの赤い喪服」といふ小見出しで は、赤、スカーレットが権力者や医者に用ゐられることが述べられてゐる。これが章題である。しかしこれ以上は書けない。他にもまだ多くの色がある。皆、それぞれ意味がある。 正に啓蒙の書であつた。

  • あまり好みの書ではなかったけど、とても勉強になった。黄色が忌み嫌われる色とは知らなかった…緑にも善悪色々な意味があることがわかり、その理由も納得!エメラルドは自分の誕生石でもあるので、始まりの色と言われてとても嬉しかった!

  • 中世の色彩の話は本当に面白い。「紋章学入門」と合わせて読めば、ヨーロッパ旅行に行った時も役立ちますよ。

  • https://calil.jp/book/406258364X
    講談社(2006)の文庫化

  • 東2法経図・6F開架:B1/1/2784/K

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著者プロフィール

お茶の水女子大学名誉教授。専攻はフランス服飾・文化史。著書に『色で読む中世ヨーロッパ』『図説ヨーロッパ服飾史』『涙と眼の文化史』など、共著に『フランス・モード史への招待』などがある。

「2019年 『黒の服飾史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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