著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065333396

作品紹介・あらすじ

だれも列からは逃れられない――。『銃』や『掏摸』『教団X』につらなる……中村文則の最高傑作誕生!「君だって、列に並びたいから、並んでたんだろ?」ある動物の研究者である「私」はいつのまにか「列」に並んでいた――。先が見えず、最後尾も見えない。だれもが互いを疑い、時に軽蔑し、羨んでいる。この現実に生きる私達に救いは訪れるのだろうか。「あらゆるところに、ただ列が溢れているだけだ。何かの競争や比較から離れれば、今度はゆとりや心の平安の、競争や比較が始まることになる。私達はそうやって、互いを常に苦しめ続ける」(本文より)

感想・レビュー・書評

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  • 列。比較的日常に目にすることもある光景ではあるが、たしかに奇妙なものでもある。
    長い列に対して、その先の期待感を感じるも方もいれば、並ぶことに対してネガティブに思い、場合によっては不快に感じる方もいるだろう。
    自分は後者寄りで、たとえばどれだけおいしい店と話題でも、長蛇の列の時点で、避ける傾向にある。
    「人間の存在」について、列に並ぶ人の心境に落とし込んだらどうなるのか、といった挑戦的な作品であったが、まぁ、なかなかおもしろかった。
    久しぶりの中村文則作品だけあって、読みながら相変わらずだなー(寧ろ濃さが増しているかも?)と思うこともしばしば。過去作がいまいち苦手な方にはお勧めしづらい作品なのかもしれない。

    余談だが、下記文中の言い回しが、なんだかつい口から出てしまった感が強調されていて、シャレオツ。

    p99
    よくある話だった。猿みたいですね、とは言わなかった。猿は大抵、血縁が重視される。
    「猿みたいですね」
    言っていた。

    • 傍らに珈琲を。さん
      チャオさん、こんばんは。
      私も後者です 笑
      そして本書を読んでいなくとも、ラストの文章をいいなと思えました♪
      チャオさん、こんばんは。
      私も後者です 笑
      そして本書を読んでいなくとも、ラストの文章をいいなと思えました♪
      2023/10/26
    • チャオさん
      傍らに珈琲を。さん
      コメントありがとうございます。
      並ぶくらいなら、それなりな店に入ってしまいがちですよね。
      でも長蛇の列があると、野次馬根...
      傍らに珈琲を。さん
      コメントありがとうございます。
      並ぶくらいなら、それなりな店に入ってしまいがちですよね。
      でも長蛇の列があると、野次馬根性でついつい見てしまうことはあります。。
      最後の文章、普通に出てくればすごい違和感あるのですが、「列の世界」自体が良い意味で変なので、すごく合った表現なんですよね。
      もし読まれる機会あれば、チェックしてみてくださいませ。
      2023/10/26
  • この作品ただ、ただ、行列に…「列」に
    並んでいるだけの、男の話…でした。

    冒頭から、これは安部公房風な…不条理な、不穏な
    ゾワゾワする空気感で、私の理解の範疇を超えている作品だな…と気づくが、それでも独特な文章に惹かれてしまって、読了…!

    ・一部
    いつの間にか、何かの列に、理由や意味が一切わからずに並んでいる「私」が主人公。
    長く遅々として動かず先が見えず、最後尾も不明。
    「列」は複数存在する様だったり…変化しているようだったり…。
    少しでも前に進みたい人間心理からくる
    「行列あるある」の様な、ちょっとした小競り合い話などで展開していく…
    ・二部
    猿の生態を研究する非常勤大学講師の男についての話が唐突に始まるが、(その男=列に並んでいる「私」である)主人公についての話。
    彼が、論文を執筆するワープロが故障し、修理を依頼する電話は、なかなか繋がらない…。
    元カノは、助手と付き合っていて、準教授の話も
    助手に決まってしまう…、などと、うまくいかない。
    そんなありふれたごく普通っぽい人間…。
    そして一部の時で、並んで主人公に関わっていた人たちとの関係性が徐々にわかってくるような構成になっていた〜!
    ・三部
    再び、「列」の世界と現実の世界が交錯していくような……展開になり。
    (私的にはなんとなく前向きな雰囲気がした…)ラストへ向かっていくという全部で三部の構成。
     
    確かに考えてみると人間は生きてる間、死ぬまで様々な「列」に連なっているようなものだな、と読んでて思った。
    「列」に並ぶという日常によくあるシチュエーションに例えて人生そのものだったり、現代の人間社会についてだったり、人間そのものだったりを考えさせられたし、どうしても比べあったり、競争し合ったりが、
    果ては戦争のように殺し合ったりしてしまう現代の人間社会についても考えたりもした。
    猿の生態系などと絡めて描かれたところも興味深く読めたし、鳥が出てくる意味合いなど、いろいろ難しいところも含めて、わからないながらも不思議と楽しめたように思う…(笑)

    「列を並んでいて…上空を見上げると
    少し前のことを忘れてしまうという鳥が出現し、
    地面には「楽しくあれ」の文字がある………」

    二年半以上をかけてずっとずっとこの小説を書いてきた…という中村文則さん。
    冒頭から一貫して不穏な空気感が纏わりついているのだが、ラストはあっさりと!
    何とも言えない独特な雰囲気の作品でした…

    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      ( ,,>з<)プッ!何かと話題のKアリーナ…(笑)あ~、そんな事あったりしましたね〜おさがわせな事件。
      でも、そこでは、ないですよ……(...
      ( ,,>з<)プッ!何かと話題のKアリーナ…(笑)あ~、そんな事あったりしましたね〜おさがわせな事件。
      でも、そこでは、ないですよ……(*^^*)♪w

      私も友達と夜、ランドマークを眺めながら、ちょっと…歩いたりもしてきたのですが…もう夜景が綺麗過ぎでしたね…………‧˚₊( ˶ ⁰∀⁰)‧˚₊
      で、ヒボさんとその時ひょっとして、ニアミスしてた…カモですね…♪w
      2024/01/13
    • ヒボさん
      ってことは、もう1つの方ですかね。

      みなとみらい地区の夜景は綺麗ですよね✿゚❀.(*´▽`*)❀.゚✿
      まさにブルーライトヨコハマ♪

      山...
      ってことは、もう1つの方ですかね。

      みなとみらい地区の夜景は綺麗ですよね✿゚❀.(*´▽`*)❀.゚✿
      まさにブルーライトヨコハマ♪

      山下公園の夜景も見に行きましたが、個人的には断然みなとみらい地区の夜景の方が好きですね☆

      またどこがでニアミスを楽しみにしてまーす♪
      2024/01/13
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      そうですね ദി ᷇ᵕ ᷆ )♪ハ〜イ!

      すっかり、みなとみらい夜景のファンにもなってしまったので…また今度は(と言ってもまだまだず...
      そうですね ദി ᷇ᵕ ᷆ )♪ハ〜イ!

      すっかり、みなとみらい夜景のファンにもなってしまったので…また今度は(と言ってもまだまだずっと当分、無理ですが!w…)
      素敵な所がたくさんあリますね。次はゆっくりといろいろ行ってみたいですね〜☆☆
      ありがとうございました~
      2024/01/13
  • 新感覚。
    人間という動物の滑稽さ、逃れきれない業を「列に並ぶ」という状態の中に描く不思議系小説。

    第一部で列あるあるを滑稽に描く様は、とある定型シーンをスタートに異なる展開で繰り返し笑いを誘うような漫才を彷彿とさせ、次はどんなパターン?と頁を捲るのが止まらなくなる。

    と同時に、淡々とした描写が醸しだすシュールさや、身に覚えのある滑稽さが胸へ刺さり、痛みを覚えるところは高瀬隼子さんの作風にも通づるところを感じた。

    第二部で展開されるそれまでの不思議ワールドとはうって変わった猿研究者としての主人公、草間の日常。
    地に足の着いた物語かと思いきやどこか不安定で、徐々に第一部との繋がりも見えてきてまた引き込まれる。

    極めつけは第三部でのかき混ぜ具合。
    この感覚は味わったことない。

    一部謎の性的表現に眉を顰めるところもあったが、それも業と捉えれば良いのかな。
    全体としては大変面白かった。
    中村文則さん、たぶん初読み。
    芥川賞受賞作の『土の中の子供』を読んだことがあったかなかったか。
    別の作品も読んでみたくなった。

  • 何かを待ち列に並んでいる。
    列からはみ出たら、何かが終わるような気がする。
    実に深くて、純文学の良いところが全面的に表現されていると思います。ここまで、「猿」について知識を得たのは初めてでした。あまり他作品で
    比較してはいけないが、エヴァンゲリオンの有名なシーンで碇シンジがみんなに、「おめでとう」と祝福されている場面をこの作品と似た感じに私は思いました。

  • 読書備忘録801号。
    ★★★★★。

    備忘録801号に相応しい作品でした。笑
    何の感動もない。ストーリーに衝撃もない。目から汁も出ない。
    しかし、中村文学の新たなステージを象徴させるような作品でした。よって★5つ。
    おススメしません。笑

    物語は3部構成。
    第1部。
    主人公は列に並んでいる。
    目的も何も良く分からないけど列に並んでいる。一向に進まない列。すなわち出口は無いということか?突然現れて消える横の列。横の列は動いている。横の列に移る一部の人々。
    列が進むとき。それは前に並んでいる人が列を離脱する時。
    列に並んでいる人々。特徴的な人々。男性、女性。

    第2部。
    主人公は草間。
    大学の非常勤講師で認知神経学を専攻しており、霊長類を分析している。要するにサル。
    ニホンザルの生態を山に籠って研究している。
    同僚に石井がいる。
    石井の彼女として亜美がいる。
    非常勤講師として未来はない。教授に准教授の空きポストに自分を推薦してくれとお願いしている。
    そのポストに選ばれたのは石井だった。
    そして草間の精神が乱れていく・・・。

    第3部。
    再び列。
    第1部では身体の特徴でしか表現されていなかった人々が第2部の個人としてマッピングされていく。
    そしてこの列に出口は・・・、ない。
    地面に書かれた文字「楽しくあれ」。

    さてさて難解ですねぇ。
    列は、人間社会、個々人が抱える社会で生きていくこと出口のない人生のメタファー?
    前に人がいる。その人が抜ければ前にいける。でもその先は果てしない。ちょっとでも前に詰めようとする主人公。後ろに並んでいる人々のことは冷静にみる。詰めたって進まないんだから詰めてくるな!と。

    中村さんは巻末で150p足らずの作品だけど2年を費やした、と記している。やり切った感満載で大満足の様子でした。

    読みながら安部公房さんを思い浮かべた。笑

    万人におススメではない。
    でもゲテモノ食いにはおススメ。

    • shintak5555さん
      ゆーきさま
      うちの息子は列を離れてどこに行ったのか?
      うちの娘は列を離れることを虎視眈々と狙っているww
      どこに行っても一緒やでwww
      ゆーきさま
      うちの息子は列を離れてどこに行ったのか?
      うちの娘は列を離れることを虎視眈々と狙っているww
      どこに行っても一緒やでwww
      2024/02/10
    • Mayさん
      ★5なのにオススメしない…天邪鬼なので余計に気になり早速図書館で借りてきました!笑

      これから入ります。自分は★いくつ付けるのか楽しみに読み...
      ★5なのにオススメしない…天邪鬼なので余計に気になり早速図書館で借りてきました!笑

      これから入ります。自分は★いくつ付けるのか楽しみに読み始めます^ ^
      2024/02/10
    • shintak5555さん
      Mayさま
      前代未聞の★ゼロもありかと!
      書きましたが安部公房の難解さに匹敵します^_^;
      Mayさま
      前代未聞の★ゼロもありかと!
      書きましたが安部公房の難解さに匹敵します^_^;
      2024/02/10
  • ◆不条理はらみ続く人生[評]横尾和博(文芸評論家)
    <書評>『列』中村文則 著:東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/285110?rct=shohyo

    並んでも報われない時代の焦燥感…中村文則さん「列」を刊行 : 読売新聞(2023/10/06)
    https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/interviews/20231005-OYT8T50138/

    EIKO SASAKI
    https://eikosasaki.com/

    『列』(中村 文則)|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000381465

  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    この世界には列が多すぎる


    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    男はいつの間にか、奇妙な列に並んでいた。
    先が見えず、最後尾も見えない。そして誰もが、自分がなぜ並んでいるのかわからない。
    男は、ある動物の研究者のはずだった。

    現代に生きる人間の姿を、深く、深く見通す――。

    競い合い、比べ合う社会の中で、私達はどう生きればいいのか。
    この奇妙な列から、出ることはできるのだろうか。
    ページをめくる手が徐々に止まらなくなる、最高傑作の呼び声も高い、著者渾身の一作。





    ※以下ネタバレ含みます 注意※


    ⚫︎感想
    大変興味深く、一気読み。
    この世に生を受け、物心ついたころにはいくつもの競争に巻き込まれている。「列」という具体に自分の過去が並んでいるという状態にだんだん気づいていく。列から逸脱しても、また違う列にいつの間にか組み込まれている。そして全ての過去を思い出してもなお、その列から離れない。列に並ぶのは宿命だから。
    しかし最後に「励ます」と書き直したところには光を感じた。気づいたら列に並んでいたとしても、何度でも「励ます」「楽しくあれ」と書くことはできる。

  • 第二部から話が複雑になり、理解するのが難しかった。自分の内面にあるものをどのように表現し、また受け入れていくのか。
    列はきっと人生を現していて、人生は先が見えないものだし、自分の選択で様々な人生模様が生まれる。
    自分の気持ちに素直になり行動した、その先の選択は自分が積極的に受け入れていくしかない。

  • んーーー深い!!!
    だいぶ好みです、この世界観!

    中村文則さんの本は初(たぶん)。フォローしている方のレビューがとても不思議で興味深かったのでワクワクしながら読み始めました。

    ずーーーっとザワザワ、ソワソワが止まらなかった。
    なんだろう…「人生とは」「生きるということは」「人間とは」「欲とは」を終始考えさせられた。見たくない、目を背けていたい部分を頭をグイッと掴まれて「直視しろ!」と言われているような…私にはとても哲学的な内容でした。

    なるほど、列か。前も後ろも左も右も斜めも。

    少し前に村上春樹さんの「街とその不確かな壁」を読んだばかりだったせいか、なぜかその世界観が途中でダブって見えた。(全然内容は違うけど)

    刺さる言葉もかなりあり、これは何度も読み返したいかも。

    短い本なのに、長編大作を読み終えたような感じがしている。それくらい何か心にグサグサ刺さったのだろう。(その何かを言葉にする能力がない自分がもどかしい…涙)

    とにかく傑作でした!

    他の作品も読んでみたい。そして思春期の我が子達がどう感じ取るのか、彼女達にもオススメしてみようと思う。

    • shintak5555さん
      言い忘れましたが、「土の中・・・」も絶品です。
      自分の備忘録読み返して、何もかもも、土の中も★5つでした。
      言い忘れましたが、「土の中・・・」も絶品です。
      自分の備忘録読み返して、何もかもも、土の中も★5つでした。
      2024/02/16
    • Mayさん
      シンタロウさん、まさかの大好きな感じでした笑
      この感じは本当に好みです!!
      シンタロウさんのレビューのお陰で中村文則さんに出会えて感謝です♪...
      シンタロウさん、まさかの大好きな感じでした笑
      この感じは本当に好みです!!
      シンタロウさんのレビューのお陰で中村文則さんに出会えて感謝です♪ありがとうございます^ ^

      その2冊も絶対読みたい!!
      図書館行きまーす。
      2024/02/16
    • shintak5555さん
      ★幾つになるかワクワクです!
      ★幾つになるかワクワクです!
      2024/02/16
  • 中村先生の本は長編だとわかりにくいところも頑張って説明してくれている感じがするのだが、これくらいの長さの作品だと、理解する前に終わってしまい、どこか突き放された気分になる。
    人生で出会った人達と列に並んだら、色々ドラマが起こるのかもしれない。

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著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中村文則の作品

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