大量絶滅はなぜ起きるのか 生命を脅かす地球の異変 (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065333952

作品紹介・あらすじ

2億150万年前(三畳紀末期)の地球で、陸も海も関係なく、80%もの生物種が一斉に消えた。世界中の地層に記録されたその大事件を「三畳紀末大量絶滅」という。このとき、いったい何が起きたのか? 気鋭の地質学者が、まったく新しい「絶滅論」を提唱する。【おもな内容】プロローグ 大地1980年代、ヨーロッパやアメリカから鳥たちの異変の報告が相次いだ。殻が不完全な卵の産卵率はなぜ急上昇したのか? その原因は大地の変化にあった。第1章 異変ニューカレドニアには、三畳紀末の海で形成された地層がある。三畳紀末に起きた異変の謎を解く、最初の手がかりだ。生物が小型化し、絶滅した世界「スモールワールド」が見えてきた。第2章 混沌ロッキー山脈の東端、ブラックベアリッジという丘陵地にも三畳紀の海の地層がある。そこでは、海退、酸性化、無酸素化という多様な環境変化の記録が見つかった。この混沌の中に大量絶滅の原因が隠されているのだろうか?第3章 犯人三畳紀末のさまざまな環境変化を引き起こした有力な容疑者は、巨大隕石と史上最大規模の火成活動。広範囲で見つかる海底地滑りの証拠は、犯人特定につながるか?第4章 指紋世界中の地層を対比するには、時間の物差しが必要だ。その目盛りとして、炭素同位体比という「元素の指紋」が使える。海洋の異変、生物の小型化と絶滅、そして地層から見つかった3つの目盛りはどのような順で並ぶのか?第5章 連鎖三畳紀末大量絶滅を説明する美しい理論が発表された。それは、二酸化炭素が形を変えながら大気・大地・海洋を変化させていく「連鎖モデル」だ。謎はすべて解けた……のか?第6章 疑惑オーストリア・タトラ山脈で見られる三畳紀末の地層には、生命活動の豊かな海と突発的絶滅が記録されていた。連鎖モデルへの疑惑が湧く。二酸化炭素のリレーでは「遅すぎる」!第7章 消失化石に記録された三畳紀の海水温が、驚くべき温暖化を示した。温暖化は生物の小型化をもたらしうる。さらに、2つの新しい異変が見つかる。海で生物が小型化したとき、陸地では森と土壌が消失していた。第8章 限界どれだけ暑く、湿度が高ければ、生き物は死にはじめるのか? スモールワールドは、極端な温暖化が生命の限界を超えた世界だったのかもしれない。第9章 境界現在の地球では、「第六の大量絶滅」が進行中だという。それは本当なのか。環境変化がどの境界を越えると、大量絶滅が起きるのだろうか。エピローグ 深海岐阜県の木曽川沿いには、三畳紀末の深海で形成された地層がある。そこで見つかる化石は、何かがおかしい。新たな謎が立ち上がる。

感想・レビュー・書評

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  •  BIG5の原因について実はよく分かっていない。そして現在6番目の大量絶滅時代に突入しているのかもしれない。多くの生命は、地球環境と他の生命と微妙な相互依存の関係にあり、ほんの少しバランスを欠いたことが大量絶滅のキッカケになりかねない。
     

  • 「小鳥たちの異変」は、なんと大地に原因があった…!起こりうる「次なる大量絶滅」のメカニズムを問う(尾上 哲治) | ブルーバックス | 講談社
    https://gendai.media/articles/-/116146

    大量絶滅まであと7℃!? 「どれだけ暑く、どれだけ湿度が高ければ、生き物は死にはじめるのか?」を真剣に考えてみた(尾上 哲治) | ブルーバックス | 講談社
    https://gendai.media/articles/-/116227

    『大量絶滅はなぜ起きるのか 生命を脅かす地球の異変』(尾上 哲治):ブルーバックス|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000381706

  • 『シュットブルージュの研究成果までが、いまわかっている大地の変化である。これより先のページで語ることは、限られたデータからの推論が主体となる。(中略)あるいは、大量絶滅にかんする正しい知識を得るために本書を手にとられた方や、研究者の科学的姿勢を尊重する方は、ここで本書を閉じることをお勧めする』ー『これから先で語ることについて/第7章 消失』

    いわゆる地質屋と呼ばれる職種を何十年もやってきてつくづく思うのだけれど、地質学という学問の分野は一応理科系の分野であるとされるが、博物学的意味合いの強い学問であり、物理や化学のように因果律に基づいて観測される事象やその変化を解析できる法則や理論がはっきりとあるわけではなく、かつ、扱う対象も生物学的な対象(動植物の化石)や物理・化学的対象(岩石の鉱物組成や化学組成、あるいは鉱物や粒子の集積様式)、観察対象の地理学的特徴や対象同士の相互関係の見極め、と幅広い、というか取り留めがない。

    それら雑多な情報を総合的に解釈して過去に何があったのかを推定するというのが多くの地質屋と呼ばれる人たちが主に行なっていることなのだが、それ故、その仕事は本書の著者も例えているように雑多な証拠から推理して過去に起きた事件の真相を明るみにする探偵にも準えられる。確かにそうだと思うし、理屈っぽい(そして頑固)と言われるタイプの人間に出会う確率の高い人々の集合だとも思うが、他の理科系的職種の人々と決定的に異なるのは、「正解」というようなものが存在しないと初めから分かった上で(かつタイムマシーンが発明されない限り真の意味での検証は不可能だということ知っている上で)見てきたような嘘を吐かなければならないということ。逆に言えば、余程の観察対象の誤認識やデータの解析/解釈の誤謬がなければその嘘が真実のように語られてしまう宿命を負った人々だともいえる。だから、冒頭引用した文章のようなことを宣言しておいて自説を開陳する地質屋は中々に珍しいのだということも読者には分かってもらいたいなと思ったりする。何故なら、繰り返しになるが、タイムマシーンが発明されない限りその嘘を嘘と確定することは誰にもできないのだから。

    もちろん、この冒頭の言葉は反語的なニュアンスで語られているものではないけれど、著者がこの分野の考え方の基本に不慣れな人にも解ってもらえるよう丁寧に説明する三畳紀末の大量絶滅に至るシナリオの持つ蓋然性はある程度高く、著者の自説に対する自負のようなものが透けて見えなくもない。実際、その説のあらましを聞いた印象のみで判断するなら、全ての証拠を無矛盾に説明するものではないにせよ、多くの事柄を整合的に説明し得るシナリオであると思う(あるべき地質屋の態度としては、データを自身で吟味して判断するべきではあるけれども、と一応、保険のようなものは急いで掛けておく)。そして雑多な観察対象を抱える分野であればこそ起りがちな特定の専門分野のみの視点から事象を読み解くようなことはせずに、様々な事実を統合的に解釈するという姿勢も好感が持てる。中でも地球環境の変化に寄与する重要な要因として二酸化炭素の気水圏内での循環に着目しているのが面白い。

    二酸化炭素の濃度というと気候変動という言葉や地球温暖化という言葉と伴に、その言葉が暗黙に参照する産業革命以降の大気中の濃度の変化のことを直ぐに思い浮かべてしまうかも知れない。だが、注目して欲しいのは、政府間パネルなどが依拠しているモデル上のそれらのパラメータの役割はほぼ物理学的な関数の入力値としてしか機能しないのに対し、著者の視点はそれに加えて、生物活動に与える影響や生物による二酸化炭素の固定あるいは循環も含めて、地球化学的な反応に与える影響を、時間軸上も長い目で見て(地質学の基本的時間の単位は約百万年)大局的な傾向を規制している要因として捉えている、ということ。生物と環境が複合的相互依存の関係にあるのは当然のことながら、物理モデルが前提とするような単純な因果律に従っている(例えば二酸化炭素の大気中の濃度が高くなれば地球の平均気温が上昇する、という)ようにも見える環境変化の痕跡を、地質学的データからは短絡的に読み取らない、ということ。その話を聞いて納得するかしないかは読む人にお任せするしかないとは思うものの、少なくとも物事は左程単純明快なものではないというメッセージだけは読み落とさないでおいてもらいたい。例えるなら、ネットで流れてくる広告のように、数独を毎日解いていれば老化を防げる、というような結論に飛びつくのではなく、少なくとも数独を毎日解くような面倒臭いことをすることを厭わない脳の活動の癖はつくということだなと読み取ることが大切ですよ、というようなメッセージを本書からは受け取ってもらいたいように思うのだ。

    さて、本書の中身はどうかというと、書かれている地質学的事実は当然しっかりとしたものだし、それをどう解釈するかという点においても丁寧な論理展開が開示されている。そして今更ながら地質学上の常識というものが自分たちが学生の頃に覚えたものから進化しているということにも気付く。それは誤認されていた事実の再定義という側面があるのに加え、細分化されていた地球科学的対象物が統合的に解釈されるようになってきた為でもある。タイムマシーンは発明されていないが、地球博物学が徐々により地球科学と呼べるようなものになってきている。ここらで学校の教育カリキュラムも見直したらどうだろう。

    膨大なデータ群を前にして、単なる寄せ集めになってしまってはいけないが、情報を統合して解釈を求めるということの大切さを改めて感じたところである。

  • 6回目の絶滅は、あるのでしょうか?それも近いうちに。何億年前の話ですが今の現実的な話です。

  • 地球生命史に起きた過去5回の大量絶滅は原因を含めて解明されていないこともまだまだ多い。それらを解明することは現在の地球が6回目の大量絶滅に突入してしまっているのかを考えることにもつながる。本書は特に三畳紀末大量絶滅について考察を進めていくものだが、実証された定説というのではなく、未知の状況に対して地質学者がどのように仮説(超高温化)を立て検証を進めているのか、その思考や研究の進み方や難しさなどが表れておりとても面白かった。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/569196

  • 457-O
    閲覧新書

  • 三畳紀末大量絶滅の謎を解きながら、現代の大量絶滅を知るための手掛かりを探す。学術的だが読みやすい本。

  • もちろん正解は未だ無く、著者の私見も色々と含まれていますが、楽しく読ませていただきました。

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著者プロフィール

九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門教授。1977年、熊本県生まれ。博士(理学)。専門は地質学(層序学、古生物学)。世界各地の地層を調査し、天体衝突や宇宙塵の大量流入による環境変動、古生代・中生代の生物絶滅について研究している。鹿児島大学理学部助手、モンタナ大学客員教員、熊本大学大学院准教授を経て現職。著書に『地球全史スーパー年表』(岩波書店;共著)、『新しい地球惑星科学』(培風館;分担執筆)がある。趣味はサーフィン。休日はロングボードでのんびり過ごす。

「2020年 『ダイナソー・ブルース』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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