有閑貴族エリオットの幽雅な事件簿 (集英社オレンジ文庫)

  • 集英社
3.54
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本棚登録 : 265
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784086803175

作品紹介・あらすじ

いいね! 実にきなくさい。ここで幽霊男爵のお出ましとしよう――。
19世紀ロンドンを舞台に繰り広げるオカルト・ミステリー!

産業革命により科学に照らされ、一方で闇が濃くなりつつあったこの時代。
博物学と胡散臭いオカルト現象に目がない“幽霊男爵"エリオットの元に数々の怪奇事件が舞い込む。
誰もが恐ろしさから口をつぐむ沈黙の交霊会、関係者が次々と命を落とす呪われたミイラの解剖ショー、血塗られた伝説に潜む約200年前の純愛、ビクトリア朝時代特有の女性しか罹らない病、さらに天使を地下へといざなう天井桟敷……。
怪奇に沸くロンドン、だが「謎」から闇を拭うと隠された人々の想いと悪意、切ない事情が見えてくる。
美貌の助手・コニーをしたがえ、幽霊男爵が明晰な頭脳と “異能"で人の心につけ込むインチキ霊能者を斬る!!

感想・レビュー・書評

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  • エリオットのキャラクターがめちゃくちゃ好きです。裏表なく誰にでも優しく親切な破天荒紳士。この手のタイプは人気のある脇役になりがちな印象があったので、主役というのは個人的に新鮮でした。

    1話目は完全にキャラクター紹介。エリオットとはどのような人物で何をしているのか、周囲にはどのような人物がいるのか、怪しさしかない交霊会の謎解きと同時進行で披露されていきます。
    エリオットの過去もあっさりわかります。悲劇ではあるけれど凄惨ではない、はまさにその通り。一冊の中でこの一話目が一番好きかもしれません。読みやすさと盛り上がり方がとても好きです。

    2話目はエリオットの友人ヴィクターが登場します。主人公も助手も霊が見える上に生い立ちが複雑でキャラが濃いので、霊が見えない一般人代表みたいなポジションです。
    今回の謎は呪いのミイラなのですが、賢い上に霊と会話ができるエリオットにより謎解き自体は瞬殺でした。よって、見えない側の人間が納得できる説明をどのように行うかが話の軸になっています。
    エリオットの助手であるコニーが「(自分のような存在には)神の救いはない」と言い切るシーンがありますが、続いて「神は上等な人間だけを救う」とも言っていて、神の存在自体は信じている言い方なのが日本人である自分との宗教観の違いのようで印象的でした。

    3話目は幽霊が天使に見える少女リリアンと、呪われた修道院の話。コニーの怖がり方と言い方からリリアンに何かあるのかと思いきや、リリアン自身には特に何事もなく、終始無垢な少女でした。心が綺麗だから幽霊が天使に見えるのか他に何かあるのか、無垢過ぎてエリオットの調子を狂わせることも多い印象的なキャラクターなので、続刊では再登場してほしい。
    この本の中では一番ホラーな内容でした。幸せな環境にあったとは決して思えない無数の子どもの霊と、そんな霊が天使の姿に見えるリリアンの明るさのアンバランスがものすごく不気味。絶叫しながら屋敷を駆け回る霊の描写も怖かった。この作品はどの話でも人間の醜さを取り上げていますが、黒幕の霊の末路と動機を考えると少し物悲しい気分になります。

    4話目はとある精神病院で謎の死を遂げた博士の謎を解明します。ヴィクターが活躍(?)する話でもあるのですが、神の視点に立てる読者からすると作中での善人評価とは裏腹に、やたらとエリオットに突っかかってくる上に手まで上げた人という悪い方向の印象を初見では抱いてしまいました。が、霊が見えていない状態で子どもが嵐の中屋根から飛び降りようとしているのを止めようとしたら「大丈夫だよ」と逆に窘められたら確かに正気を疑うし怒る、と後から思い直しました。誰もが見惚れる顔面を容赦なくぶん殴って奇行を止める意志を持ち、子どもに優しく、なんやかんや言いながらもものわかりがいいというのは確かにいい人だ。
    ラストにちょっとした驚き要素があり、それを踏まえてパブでのやり取りを読み直すとより楽しくてニヤニヤしてしまいます。

    5話目はコニーが主役でコニー視点の話。これまでの話ではエリオットなしでは生きていけなさそうな印象のコニーでしたが、賢いし器用だし強い上に世渡りも上手いようで、一人でも十分生きていけそうだとこの話を読んで思ったのですが、やはりエリオットなしでは体は生きていても心が生きていけないようです。そしてそれはエリオットも同じということが、これまでも薄々感じられましたがコニー視点ではっきりとわかります。相互依存のような関係の主従ですね。とても好きです。

    明るいようでいて仄暗く、後味が良さそうでいて良くない部分もあり、不思議な雰囲気がなんとも言えず癖になるので、続刊がもうすぐ出るとのことで買おうと思います。

  • ミイラの話は結構好きかも。

  • 幽霊が見える男爵と助手が事件の謎を解いていくお話です。

    軽めの謎で、サクサク読みすすめられました。
    謎は一話完結なので、朝読書とかにいいかもしれません。

    主人公は意外と人情家で、考えは現代的です。
    一方で友人は当時の常識家で、当時の考えも少し知れます。

    冒険家のアレクサンドラにもう一度登場してほしいです。

  • コニーが謎めいてて、この先気になる。

    エリオットは結構キャラ立ちしていてわたりやすい。

    2022.7.16
    95

  • これが19世紀ロンドンのリアルなら、女性への考え方が偏りすぎててしんど。
    今の時代の考え方も、何百年後に触れたら、「うわっ偏見やばっ」ってなるのかなー。

  • 非常に読みやすい文体でさらさらと流れるよう。
    目が滑ることも踊ることもなく、必要なことを必要なだけ的確に読者に伝えるという点で理想的と言える。
    主要な登場人物も主人公のエリオットを始めとして皆気持ちの良い人たちで、読んでいてストレスがない。
    主役が優しく紳士的で風変わりで女性に弱いというありがちな設定ながら人物に厚みがあり、とても魅力的だった。
    またエリオットと助手のコニーの関係も単調なものではなくよく練られていて、安易な甘々主従ではないのが良い。

  • どんな読者層向きのお話なのか…
    美貌の助手コニーを従えって…そもそも助手なの?

  • 十九世紀後半のロンドンを舞台に美少年バディが、オカルト絡みの事件に首を突っ込んでいくライト・ミステリの連作。受けそうな要素はてんこ盛りなので、あとはディテール次第だが、作者さんはこの時代のことをよく勉強しているみたいだし、キャラも魅力的、事の真相も程よくひねりが効いてる。当時の女性の地位とかの社会問題への目配りもある。だからもう少し面白くてもいいような気がするんだよなあ。悪くはないんだけど。

  • 幽霊っているのかな?
    もしいたら、みえた方がいい。
    だって、そうしたら、もう会えない、話せないって思ってる人と、また会える。また話せる。。

    エリオットとコニーの絆が深い。
    最後の章で、自尊心かあ。と想いに耽った。
    まだまだ謎が多くて、続編に期待。


  • 主人公のエリオットさんがとっても好みでした!
    短編が5つ、密接につながってるわけではないので平日に1話ずつ楽しませていただきました。

    時代に沿っていて〝いかにもありそうなオカルト〟っぽさが良かったです。どの事件もたいへん胡散臭い(褒めてます)。インチキ霊能者にどうやって立ち向かうんだろう…とワクワクしてましたがまさかそう来るとは思いませんでした。相手が悪かったな、インチキ霊能者たちよ、、、

    短編にはなりますが、1話ずつのボリュームもしっかりある上にミステリーらしく「全てを知った上で読み直したくたい!」という気持ちにさせるものばかりで良かったです。個人的には1つめのお話の切ない感じと、3つ目のお話がどんより重たい話で好きでした!


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著者プロフィール

第3回角川ビーンズ小説大賞にて「即興オペラ・世界旅行者」で優秀賞受賞。受賞作を改題・改稿した「オペラ・エテルニタ」で、2005年9月にデビュー。

「2023年 『サトリの花嫁 ~旦那様と私の帝都謎解き診療録~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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