<ヴィジュアル版> 放浪の聖画家 ピロスマニ (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207675

作品紹介・あらすじ

パブロ・ピカソも激賞したグルジアの孤高の画家ニコ・ピロスマニ。一九世紀から二〇世紀にかけて活躍。作風はイコン(聖像画)の系譜をひき、今も多くの人を魅了。その代表作と評伝で魅力を伝える。

感想・レビュー・書評

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  • 「私の絵をグルジアに飾る必要はない。なぜならピロスマニがいるからだ」ピカソの激賞を受けたピロスマニは生涯に1000点以上の作品を描いたと言われている。現存確認は217点。素朴な筆致は複製を作りやすいこともあって贋作が多い。豊かな土地と変化に富んだ山河をもつグルジアは、長い年月ずっと周辺の国々から侵略され続け戦火に曝され続けた。隙を見せればいつでも攻め込まれる危険は、グルジアの人々に生命を賭けて自分たちの文化、宗教、風習を守る気風を育てた。そんな中で生きたピロスマニの描く人物画は、優しさに加え、母の胎内を思わせる夢見るような温もりを感じさせる。焚き火をともに囲むような人物への限りない親しみが伝わってくる。描かれた人物の瞳は純朴で黒く深い。瞳はどれも曇りなく真っ直ぐで人懐っこい。彼の人柄が表れている。

  • 大好きな絵描きさんが
    大絶賛していた絵描きさんが
    グルジアのニコ・ピロスマニです

    「実際に目にしてみると
     なんともない そこらへんにある
     黒い布に そのまま バーッと
     色を置いているだけなのだけれど
     それが 得も言われぬ魅力になっている
     それが とにかく凄い!」
    とお話ししてくれました。

    黒の色が
    おどろくほど美しく
    おどろくほど魅力的な
    絵描きさんです

    何度読み返しても
    そのたびに
    新しい発見と
    新しい安堵感を
    もたらしてくれる
    一冊です

  • 日本では「100万本のバラ」でしられる、グルジアの国民的作家、ピロスマニについて、彼の生涯と作品を照らし合わせながら解説している。
    自らの内にある「理想郷としての故郷」グルジアを描きながら、赤貧のうちになくなっていった画家の生涯を作品とともに追想できる。

    敬虔なキリスト教の国でありながら、彼の描く世界は独特な異教の匂いに満ちている。一見素朴で単純なタッチながら、横溢する生命力がオールカラーの絵から立ち上ってくる。

    彼の作品の中では、私は特に動物たちに惹かれる。
    そのなかでも動物たちは古来シャーマンたちが友とした「パワーアニマル」を彷彿とさせる。
    しっかし、グルジアの国名が「ジョージア」になったと知ったらピロスマニはなんと思うのだろうか。

  • ジョージア(旧グルジア)の画家ニコ・ピロスマニの生涯と作品の紹介、解説。加藤登紀子が歌ってヒットした「百万本のバラ」で歌われている画家はピロスマニであることを本書によって初めて知った。また、画家が女優に恋をしてたくさんのバラを贈ったという歌詞の内容も実際のエピソードに基づいた内容とのこと。
    ピロスマニの絵の特徴は黒いキャンバスに描かれた素朴な絵であること。個人的には鹿、馬、豚、熊等の動物を描いた絵が好き。
    ピロスマニについての映画も制作されていて、岩波ホールで何度目かの再上映をやっていたようだが、観れなくて残念。

  • 図版も多く、代表作が一通り紹介されており、この画家を知るには最適。以前ロシア系絵画展で初めて見て、ナイーブアート的作風が気になってポストカードも買ったのが出会いだ。その後、行きたい国(文字通り旅行先として)にグルジアが浮上してから、画家がグルジアのニコ・ピロスマニだと知った。グルジアの国民的画家でピカソも評価していたのか。どの作品からも一貫して土着のグルジアの風景風土が伝わってきて、彼の絵を見るのも旅の目的となっている。
    実際、ピロスマニを見にグルジアに行きたい/行ったという人は、作者以外にあまりいないだろうけれど。ただこの本では、作者のピロスマニ愛が溢れすぎていてちょっとうっとおしい。

    追記:今年のGWにジョージア(旅行直前に呼び名も変更)に行き、この本に掲載の作品の多くを見てきた。大満足。

  • ピロスマニの生涯に沿って、次に絵に描かれた対象別に、彼の絵を紹介・解説している。著者の思いがそれぞれにこもっていて心打たれる。ピロスマニの映画は何度も観たし、彼の絵も展覧会で何度か観たけれど、黒いキャンバスを使っていたとは知らなかった。映画ではいかにも浮世離れした天才という感じだったが、実際繊細な神経を持つ大変人だったようだ。新書なので絵は小さいが、いたしかたないだろう。
    シェンゲラーヤの伝記映画の情報も勿論書かれている(パラジャーノフの方があまり言及されていない。)
    「グルジア」はロシア語由来ではなくペルシャ語が元になって周辺地域の言葉に反映したもので、この部分の説明は間違っている。

  • 読書録「放浪の聖画家ピロスマニ」5

    著者 はらだたけひで
    出版 集英社

    p51より引用
    “ピロスマニはたったひとつの行為、絵を描
    くために生きたのだ。絵を描くためになら、
    どんなに辛い仕事も断ることはなかった。
    「卑しい仕事を避けて、どうして崇高な仕事
    に近付くことができるのか」と語っていたと
    いう。”

    目次から抜粋引用
    “比類なきグルジア
     街がギャラリー
     ピロスマニとイコン
     多様な信仰の世界
     永遠なるグルジア”

     絵本作家である著者による、数多くの作品
    を書いたと言われる「ニコ・ピロスマニ」の
    作品と生涯を紹介する一冊。
     彼の母国グルジアについてから個々の絵の
    解説まで、著者のピロスマニへの思いの丈が
    伝わってきます。

     上記の引用は、ピロスマニの生い立ちにつ
    いて書かれた章での一節。
    面倒事を面倒くさいからといって避けてばか
    りいては、いつまでも変わらないのかも知れ
    ませんね。
     かのピカソが、「私の絵をグルジアに飾る
    必要はない。なぜならピロスマニがいるから
    だ」と言ったとのこと。天才は天才を評価し
    ていたのですね。
     どの作品を見ても、じんわりとにじみ出る
    味わいがあるものばかりです。

    ーーーーー

  • グルジアに行ってみたくなった

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著者プロフィール

はらだたけひで
1954年、東京都に生まれる。1974年から2019年まで、東京・岩波ホール(2022年に閉館)で世界の名作映画の上映に携わる。1978年公開の「ピロスマニ」以降、ジョージア文化、特に同国の映画の紹介に努め、現在は「ジョージア映画祭」を主宰する。創作絵本に『パシュラル先生』(産経児童出版文化賞入賞)のシリーズ、『フランチェスコ』(ユニセフ= エズラ・ジャック・キーツ国際絵本画家最優秀賞)、『しろいおひげの人』など多数。挿画も多く『ダギーへの手紙』(E・キューブラー・ロス)、『十歳のきみへ』(日野原重明)、『森のお店やさん』(林原玉枝)など。ジョージア関係の著作に『グルジア映画への旅』、『放浪の画家ニコ・ピロスマニ』、『放浪の聖画家ピロスマニ』などがある。2022年にジョージア政府から文化功労賞が授与される。

「2023年 『子どもの十字軍』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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