アジア辺境論 これが日本の生きる道 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
3.74
  • (6)
  • (19)
  • (12)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 176
感想 : 17
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087208931

作品紹介・あらすじ

米ソ対立の冷戦終結から四半世紀経ち、世界各地に複数の覇権の競合関係が生まれている。その狭間で、日本が生き残るためには何が必要なのか? その鍵は日・韓・台の連帯にあり。論客ふたりが熱く語る。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  この本は、内田樹さんの読書会に参加するため、とりあえず一冊読んでおこうと府立図書館で借りて、急遽読んだという経過です(笑)。
     はじめに に書いていますが、日本・韓国・台湾の連携の夢――これがボクらの生きる道 ということでまず内田さんが問題提起し、姜尚中さんが応答し、また問題提起し、議論が深まっていくという形でお話が続いて行くという対話本でした。
     序章 問題提起――自由主義はなぜこれほど脆かったのか
     第1章 リベラルの限界――「モビリティー」に無力化された自由主義
     第2章 ニッチな辺境国家が結ぶ新しいアジア主義の可能性
     第3章 アジアの連携を妨げる「確執」をどう乗り越えるか
     第4章 不穏な日本の行く末――たどり着けるか「日本の生きる道」
     おわりに アジアの辺境「虚妄」に賭けるーこれがみんなの生きる道
    でした。
     反共法の弊害―マルクスを知らない韓国の人々
     日韓の溝を埋める感じの復活
     市民デモで政権を変えた初の快挙
     ありうるトランプ大統領の弾劾・失墜
     アメリカの国力の源泉はカウンター・カルチャー
     早く動きすぎたあ安倍の誤算
     日本のナショナリストはただのエゴイスト
     などなどについて、二人の深い洞察力が面白かったし、納得できる論理でした(笑)。
     これで、一応明日の読書会に辛うじて参加できる最低限の資格が得られたのでしょうか?
     


  • 自由の概念が"機動性"になってきてない?
    ってとこ新しかったです

    自分にとって
    フリーダムはなんなんだろう?
    って

    ちょこっと
    考えたけど
    やめた!



  • アメリカとの安保から日本、韓国、台湾から成る3国協同の新しい安保体制へと変わるべきということが昨今の政治、国際情勢を交えながら語られています。
    「日米安保の実在よりも、アジア辺境の虚妄に賭ける」
    ここで話されていることは虚妄なのでしょうか。でも、未来とは虚妄であり、そこにしか希望もない気がします。

  • 読了。なんとなく、未来をワクワクさせてくれる本である。

  • 姜尚中さんの「日本の隠ぺい体質」の指摘がズバリと刺さった。
    今の一連の忖度事件をはじめ、先の戦争が泥沼化していった過程などの日本の誤った歴史は大抵それが原因だと気付く。

    ※内田センセーの主張はいつも通りなので…

  • 面白いのだけれど、☆を1つ減じたのは本書の目論見である「明るい未来像の提示」よりも、現状への不満が多く述べられていたような気がするから。
    もちろん現状の分析があっての未来像だとは思うのだけれど、もっともっと「どんな可能性があるのか」という点について聞きたかったので、その分が残念でした。

  •  私の好きな作家,内田樹さんと姜尚中さんの対談なんだから,面白くないわけがありません。
     この二人は,いつも新しい視点を与えてくれます。
     今回のテーマは,アジア。日本と韓国と台湾の連携で,新しい可能性が拓けていく…というのは,現実からみると無理そうに見えますが,そういう大風呂敷を広げないことには,いつまで経ってもアメリカの属国になっているだけです。
     今回の安倍とトランプの外交を見ても,悲しくなってきます。
     日本の右翼がどうして反トランプ,反安保にならないのか,不思議です。

     韓国が植民地支配の反省から,漢字を廃止してハングルにしたために,若者たちが韓国の古典を読めなくなっている…という指摘には,なるほど…と思いました。英語を話せる力も大切かも知れないけれども,不易から学んでこそのグローバルだと思うんですがね。
     ま,今の社会がグルーバル化しているということさえ,眉唾ですが。

  • 日米安保の実在よりも、アジア辺境の虚妄に賭ける。一国の国力とは、よりよい未来を創ろうとするヴィジョンの提示力であり失敗から学ぶ復元力である。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/686246

  • 読書中のメモ
    ●独裁制の反対は民主制ではない。民主制はいとも簡単に独裁制に転じてしまう悪い面を持っている。みんなが難しいことを考えるのに疲れたとき、シンプルな政策を提示する者に政治をゆだねてしまう
    ●独裁制の反対は共和制。共和制とは、法の制定者と実行者が別ものである統治形態ー立法権と行政権の分離
    ●共和制の統治機構は様々。条件は重大な決定は立場や判定基準の異なる複数の審級を経由し結論までに長い時間をかけること
    ●倒産したら終わりの会社経営と国政を同様に考えてはならない。独裁で迅速な判断ができることを至上命題としてはならない。国政は会社経営と違って間違えたら取り返しがつかないのだから。
    ●憲法22条「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」。自民党の憲法改正案では、「公共の福祉に反しない限り」を削除しようとしている。(他の条項とは逆の動き)これは自民党の人々が都合が悪くなったらいつでも日本を捨てる権利を確保すること。自由と言う概念はいつのまにか機動性(モビリティ)概念に置き換えられ、機動性の高い、グローバルに活躍できる人材だけが高く各付けされる現状は奇妙だ
    ●機動性が高い人間というのは周囲にその人がいなくなっても困る人が誰もいないということ。なんでそんな人間の評価を高くしないといけないのか
    ●独裁を目指す行政府は立法機関の威信の低下をめざす。ゆえに、自民党は議員候補には無能なイエスマンをわざと選んでいる。そして議会不要論が蔓延する
    ●自民党新人議員はイエスマンばかりで党の言うなり、派閥を作る力を持つ者はもちろんいない。議員はとにかく拍手喝采してればいいという独裁の典型へ近づく。中国や北朝鮮と変わらない
    ●日本の司法権は弱すぎる。高裁で国に不利な判決は出ない。高度に政治的な問題は裁判の範疇外とされる
    ●日本の自衛隊員 インド洋の補給活動、イラク復興支援にあたった56名は帰還後に自殺した

    感想
    世界の自国ファースト主義化、日本の政治や社会のあれこれに対する考察と批判、なかなか勉強になるところあり、なるほどと思うところあり。
    2017年出版の本だから、コロナで世界が大きく変わったため古く感じる面もある。

    しかし、これからの日本は韓国台湾と協力すべきというアジア主義については、今ひとつピンとこなかった。
    基本的にはいい話なんだけど、学者っぽい理想的なものの見方に鼻白む論がそこここにあった。
    現実ではなく楽観的な目で印象や見通しを立ててしまってるのでは……と疑問が湧いた。
    いい話、聞いて賛成してくれる人が増えるといいね
    としか言えない。

全17件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

内田樹の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×