「他者」の起源 ノーベル賞作家のハーバード連続講演録 (集英社新書)
- 集英社 (2019年7月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087210859
感想・レビュー・書評
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ちょっと難解だったが、長い訳者解説に助けられた。モリスンの小説も読まないとだなぁ。
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トニ・モリスン 1931~2018
『青い眼がほしい』で作家デビュー
1993年アフリカ系アメリカ人として初めてノーベル文学賞授与
『スーラ』『ジャズ』『パラダイス』『白さと想像力』
「他者化」とは
科学的人種主義の目的の一つは、「よそ者」を定義することによって自分自身を定義すること。さらに「他者化されたもの」として分類された差異に対して、何らか不面目を感じることもなく、自己の差異を維持(享受さえ)することである
~前例によってわたしたちは「他者化」を学ぶのである~34P
奴隷制度の「ロマンス化」~ストウ夫人の描写などを例にあげて、文学の中で奴隷制度をロマンス化させ、受け入れやすくさせている
「よそ者」であること「よそ者」になること
「カラーフェティッシュ」肌の色への病的執着
「ブラックネス」
「カラーイズム -
●トニ・モリスン 人は差別主義者に生まれるのではなく、差別主義者になるのである。人はいったいどこでどうやって人種差別主義者になってゆくのだろうか?
●ボーヴォワール 第二の性 人は、女に生まれれるのではなく、女になるのだ。生物学的な性から、社会的な性への発展。
●黒人はアメリカだけに存在する。アフリカに住むアフリカ人は、それぞれガーナ人、ナイジェリア人であり、ケニア人である。つまり黒人が科学的な概念ではなく文化的な概念。
●奴隷が「異なる種」である事は、奴隷所有者が自分は正常だと確認するためにどうしても必要だった。
●サミュエル・カートライト 1851年に、ニグロ人種の病気と身体的特異性に関する報告。黒人は有益ではあるが、畜牛ではないにしても、だからといって人間とも断言できない。
●文学で「カラー主義」が果たす役割には、はっきりした理由がある。それは法律だった。「いわゆる」肌の色に関する法律「カラー法」をざっと検討してみても、合法・非合法の指標として「カラー」が強調される格好の例になっている。現在では馬鹿げた法律だが、これらの法律によって敷かれた絨毯の上で、多くの作家たちは今も踊り狂っている。
●オバマ大統領は確かに黒人であったが、父はアフリカ生まれのケニア人。つまりアメリカの元奴隷を先祖に持たないという点で、一般のアフリカン・アメリカンとは決定的に違う。しかし妻のミシェルはシカゴ貧民街生まれ。ミシェルのおかげでアメリカの黒人社会にも受け入れられたのでしょう。
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東2法経図・6F開架:930.29A/Mo78t//K
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人間はなぜ差別するのか。議論の中心はアメリカにおける事例だが、テーマとしては米国内にとどまらず、自分たち自身にも当てはまる。自分自身を確立するためには「他者」が必要で、それは肌の色や宗教、階層、出自などあらゆる「基準」がある。学歴なんかもそうかもしれない。他者と区別したいと欲する一方で、自己とよく似た「仲間」も求める。これが激化すると過激なナショナリズムや民族浄化、戦争にもなる。大げさな話でなければ、このような思考は日常にもよくある話で、つまり私たちは知らず知らず「他者と区別=差別」がある前提で生きているということ。本書では差別をなくす方法について言及はないが、このような前提であることは認識しておきたい。