ゲノム革命がはじまる DNA全解析とクリスパーの衝撃 (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087210972

感想・レビュー・書評

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  • 最近、遺伝子編集食品が出回っていると聞き、それって遺伝子組み替え食品と何が違うの?との疑問から読み始めた本。

     ノーベル賞受賞で一躍有名になった遺伝子編集技術、クリスパー・キャスナイン(以下クリスパー)の登場により、誰でも簡単に遺伝子編集することができるようになった。クリスパー以前は、何十万、何百万もの実験を繰り返して、やっとノックアウト遺伝子(欠損した遺伝子)がつくれた、という状況だったのに、クリスパーは数時間でつくりだしてしまう。なんたって切り取れぱいいだけだから。超簡単。

     遺伝子組み替え食品というのは、もともとある遺伝子に、外来の遺伝子を付け加えたもの。例えばトマトに苺の甘味情報の遺伝子を加えるとか。自然界には存在しない。

     一方、遺伝子編集食品は、もともとの遺伝子から特定の遺伝子を切り取ったもの。トマトの酸味をつくる遺伝子を取り除くとか、そういう考え方。(あくまで例えで、そんなトマトがあるかどうかは知らない)
     自然界でも突然変異として、そういったことはまあまあ起こっているので、不自然なことではない。

     最近、近大が養殖した‘近大真鯛‘’’が東京でも食べれる、というテレビ報道を見たが、あれも真鯛の肉質が増えるように遺伝子編集したものだったはず。報道ではそのことに触れてなかった。遺伝子編集食品は表示義務がないから、伝える必要はないのだ。

     なんか、不安は残る。

     アメリカでは、簡易的なゲノム編集キットが200ドルで買えるらしい。日本でもそのうち夏休みの自由研究で、ゲノム編集で在来種のカブトムシをヘラクレスオオカブトくらいデカくしてみました!なんて時代がくるかもしれない。

     遺伝子編集で一番懸念されるのが、言うまでなくヒトゲノム編集だ。
     遺伝的な病気にかからない子どもを産めるとか、アトピーになる子どもを減らせるとか、もちろんメリットは多いけれど、デザイナーベイビーの問題は当然、優性遺伝子の問題として浮かびあがる。今でも出生前診断で、障害の可能性があると指摘されて堕ろす選択をする方もいるのに、頭が良く、容姿が端麗になる遺伝子編集ができるなら、そうする人は増える。そうなると、そうじゃない子どもは劣った人間ということになる。命の選別が当たり前になってくる。ディストピアだ。

     ゲノム編集は、人類に計り知れない恩恵をもたらす福音でもあり、カタストロフへの弾きがねかもしれない。
     
     正直、怖い!

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00271607

  • 東2法経図・6F開架:467.2A/Ko12g//K

  • 生命の編集の精度が高まり、科学が神の領域に入りつつある現今、その可能性と問題点を初心者向けに纏めた良書。ゲノム革命のインパクトが、AIほどには認知されていないのは、まだ具体的な商品やサービスが一般的でないという要因があるように思うが、本書は廉価な遺伝子検査ビジネスから話題を起こし、読者の関心を惹き付けている。DNA解析による犯罪捜査や、ゲノム編集食品の現状、遺伝子ドライブによる蚊(が媒介するマラリア)撲滅など、身近なトピックに興味が尽きず、新書では到底ボリュームが足りないと感じた。それだけゲノムに関する技術革新は、(自然を含む)地球の生態系への影響が測り知れず、知らないでは済まされない事実と言える。入門編として楽しめる一冊。

  • DNAを人間が操作できる時代が来て、今までの常識がまったく通用しない状況が多方面で出現してきている。それを理解するための基本的な情報を与えてくれる好著。わかりやすい内容になっている。
    DTC[Direct-to-Consumer]というDNA検査を我々が低コストかつ手軽にできる時代がきたこと。これによってさまざまな社会へのメリットがもたらされると同時に予想外の事態が発生していること。アメリカでは非常に盛んに行われいている実態がありこれは知っておくべきことだろう。
    この検査結果などを活用することで通常ならば非常に高額になる遺伝子治療薬が現在では特別の専門機関でない企業などに於いてもAIやコンピュータの活用を行うことで作り出すことが可能となってきている。
    身近ではゲノム編集食品の販売が始まろうとしている。このことを理解する手助けにもなる章立てもある。複雑な内容を含んでいるが我々全員がすでに直面しており基本的なことを知り、判断してゆくことが迫られている。
    遺伝子ドライブ問題や不老長寿のことなどの最終章もおもしろい。

  • 小林雅一「ゲノム革命がはじまる」読了。遺伝子検査およびゲノム編集に関する現在と今後に関するルポタージュ。遺伝子に関わる新しい技術が今後社会どう受け入れられていくか大変興味深いところだが、本書はそれについていくつかの回答を示しているように思った。今後が楽しみ。

  • ゲノム革命がはじまる――DNA全解析とクリスパーの衝撃
    著者: 小林雅一
    発売日:2019年11月15日
    定価:本体840円+税
    ISBN:978-4087210972
    https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0997-g/

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著者プロフィール

1963年群馬県生まれ。KDDI総合研究所リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授。専門はITやライフ・サイエンスなど先端技術の動向調査。東京大学理学部物理学科卒業、同大学院理学系研究科を修了後、雑誌記者などを経てボストン大学に留学、マスコミ論を専攻。ニューヨークで新聞社勤務、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所などで教鞭をとった後、現職。著書に『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃』『仕事の未来 「ジョブ・オートメーション」の罠と「ギグ・エコノミー」の現実』(以上、講談社現代新書)、『ブレインテックの衝撃 脳×テクノロジーの最前線』(祥伝社新書)、『「スパコン富岳」後の日本 科学技術立国は復活できるか』(中公新書ラクレ)など多数。

「2022年 『ゼロからわかる量子コンピュータ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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