苦海・浄土・日本 石牟礼道子 もだえ神の精神 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
4.22
  • (3)
  • (5)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 86
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087211405

作品紹介・あらすじ

水俣病から新型コロナウイルス、政治的抑圧まで…。
近代資本主義社会の限界と災禍の時代によみがえる世界的文学者の思想!

◆内容紹介◆
水俣病犠牲者たちの苦悶、心象風景と医療カルテなどの記録を織りなして描いた、石牟礼道子の『苦海浄土 わが水俣病』は類例のない作品として、かつて日本社会に深い衝撃を与えた。
だが、『苦海浄土』をはじめとする石牟礼文学の本質は告発だけではない。
そこには江戸以前に連なる豊饒な世界と近代から現代に至る文明の病をも射程に入れた世界が広がる。
経済原理優先で犠牲を無視し、人間と郷土を踏みにじる公害、災害。
それは国策に伴い繰り返される悲劇である。
新型コロナウイルスの蔓延が状況を悪化させる中、石牟礼本人との対談、考察を通し世界的文学者の思想に迫る、評伝的文明批評にして日本論。
今は亡き文学者に著者は問い、考える。
「石牟礼道子ならどう書いたであろう」と。

◆主な内容◆
◎石牟礼道子の重層する「二つの世界」
◎母系の森の中へーー古代、女性はリーダーであった
◎近代社会と数値
◎江戸時代以前の循環型時間概念
◎道子が夢想した「新しい共同体」
◎島原・天草一揆と水俣闘争はつながっている
◎近代における共同体の喪失
◎「境界」を行き来する魂
◎死者と生物をつなぐ文学の役割
◎生まれ変わる力があれば

◆著者略歴◆
田中優子(たなか・ゆうこ)
1952年神奈川県生まれ。法政大学社会学部教授(近世文学)等を経て法政大学総長。2005年紫綬褒章受章。
著書に『江戸の想像力』(ちくま学芸文庫/芸術選奨文部大臣新人賞受賞)、『近世アジア漂流』(朝日文芸文庫)、
『江戸百夢 近世図像学の楽しみ』(ちくま文庫/芸術選奨文部科学大臣賞、サントリー学芸賞受賞)、
『江戸の恋-「粋」と「艶気」に生きる』(集英社新書)、『カムイ伝講義』(ちくま文庫)、『布のちから 江戸から現在へ』(朝日文庫)など多数。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「今年、2021年は水俣病公式確認(5月1日)から65年の節目となる。」
    ジョニー・デップ主演、水俣病描く映画『MINAMATA』日本公開決定|シネマトゥデイ
    https://www.cinematoday.jp/news/N0123042

    苦海・浄土・日本 石牟礼道子 もだえ神の精神 – 集英社新書
    https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1040-f/

    『苦海・浄土・日本 石牟礼道子 もだえ神の精神』 – 集英社新書プラス
    https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/review/11481

    別世で悶える覚悟 – 集英社新書プラス
    https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/review/11691

  • 石牟礼道子という名前を気にし出したのはいつごろだっただろうか。テレビで見てだったか。100分で名著で「苦界浄土」をやったのだったと思う。いつか読まないとと思っていた。そして、2年前にやっと読むことができた。何よりも水俣のことばが理解できることがうれしかった。そして被害者のやりきれない思いがひしひしと伝わってきた。今回の二人の対談もまた良かった。そして、ダムの話も、西南の役の話も、天草四郎の話も、全部読みたくなった。文庫で探すのだが、なかなか見つけられていない。古本でも良いから買って読もう。私にも道子は古代からやってきた人ではないかと思える。近代以前の世界観をもって語られる言葉の一つ一つが心に響く。ああ、早く読んでみたい。そんな思いにさせていただいた、田中優子先生に感謝したい。そしてまた、田中先生の著書もいくつか読んでみたくなった。ところで最近どうして帯ではなくカバーを二重重ねにするようになったのだろう。一般には目立つのだろうけれど、集英社新書のカラーが出ていないので私には目立たない。

  • 2021.05―読了

  • 某所読書会課題図書:これまで田中優子の本は「布のちから」「江戸とアバター」の2冊を読んでいた.本書は彼女の感性を石牟礼道子に集中して、新たな展開を見せたものと感じた.p21の道子の世界を表した図は対談の中で田中が感じ取ったものを抽象化したものと捉えたが、道子の心をうまく表現したものと思う.道子が一般的な女性解放運動を避けたことに田中は注目していたが、道子の心意気の核心を捉えたものと推測する.死者と生者を区別しないある意味でおおらかな発想も、道子独特の思考方法だと思う.独特の発想や方言の積極的な採用など、独自性が世界的に受け入れられないためにノーベル文学賞の候補にならなかったことは、反対に素晴らしい特異性を認められたと評価できる.

  • ●石牟礼道子は天草に生まれ水俣市で育った。「苦海浄土-わが水俣病」が絶賛され、多くの賞を受賞し、ノーベル文学賞に値するとも言われてきたが、惜しくも2018年に亡くなった。
    ●近代とは何か、ずっと考えてきました。
    前近代において家と言うものは企業であり、商業であり、農業であって、ものを生産して流通させるところであり、同時に消費すると思ってもあった。重要な産業の基本単位。
    ●道子は18歳で最初の自殺未遂をして新婚4ヶ月でも3回目の自殺未遂をしている。
    ●結婚して子供もいる女が、何かものを書いたり、表現することがいかに肩身の狭いものだったか。
    ●「春の白」男も女もなく、身分差も宗教の違いもない。皆が生き延びるために「戦う共同体」としてつながり合う。
    ●石牟礼道子は、水俣病闘争における「悶え神」であった。
    ●水俣病。患者さんたちが声を上げてから18年間も放置されました。
    ●祈るべき天と思えど天の病む
    どうにもならないところまで来てしまった。どうしようもないときは、祈るより他は無いと言うが、祈ろうとして空を仰ぎ見ると、その空は汚れ果て、とても神や仏がいられる場所でなくなっている。

  • 2020I073 910.268/Ta
    配架場所:C1

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

1952 年神奈川県横浜市生まれ。江戸文化研究者、エッセイスト、法政大学第19 代総長、同大名誉教授。2005 年紫綬褒章受章。『江戸の想像力』( 筑摩書房) で芸術選奨文部大臣新人賞受賞、『江戸百夢 近世図像学の楽しみ』( 筑摩書房) で芸術選奨文部科学大臣賞、サントリー学芸賞を受賞。近著に『遊郭と日本人』(講談社)、
『江戸問答』( 岩波書店・松岡正剛との対談) など

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

田中優子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×