- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087212129
作品紹介・あらすじ
自衛隊がこれまで活動してきたフィールドは、実は「戦場」だった!?
望月衣塑子氏・伊勢崎賢治氏推薦!
自衛隊の海外派遣について定めた国際平和協力法(PKO法)が1992年に制定・施行されてから、2022年でちょうど30年が経つ。
この間、日本は40を超える海外任務に合計6万人以上の自衛隊員たちを派遣してきた。
しかしその活動の実態や危険さに関しては、十分な情報が公開されてきたとは言いがたい。
むしろ、政府は意図的な嘘や隠蔽を繰り返してきたのである。
本書は徹底した調査により今までの自衛隊海外派遣の「リアル」を総検証し、これまでの問題点を整理する。
そして今後の海外派遣のあり方をも提案した、渾身の一冊である。
内部文書や自衛官たちの証言から浮かび上がってきたのは、自衛隊は何度も銃弾が飛び交う「戦場」へと送り込まれ、死を覚悟してきたという衝撃の事実だった。
この国が隠してきた“不都合な真実"を暴き出した、驚きの告発!
《推薦》
国家にとって不都合な情報は隠され、国民には知らされない。
ウクライナの戦場で初めて真実を知った若いロシア兵の「悲劇」は、決して対岸の火事ではない。
――望月衣塑子氏(新聞記者)
憲法9条を、命を賭けて守ってきたのは、"戦場"に送られた自衛官である。
――伊勢崎賢治氏(東京外国語大学教授)
《目次》
序 章 なぜ海外派遣の検証を始めたのか
第1章 南スーダンPKO
インタビュー1 第10次南スーダン派遣施設隊隊長・中力修氏に聞く
第2章 イラク派遣
第3章 カンボジアPKO
インタビュー2 第1次カンボジア派遣施設大隊長、渡邊隆氏に聞く
第4章 東ティモールPKO/ルワンダ難民救援/ゴラン高原PKO
インタビュー3 第34次ゴラン高原派遣輸送隊隊長・萱沼文洋氏に聞く
第5章 今後の海外派遣のあり方を考える
インタビュー4 国連PKO支援部隊早期展開プロジェクト(2019年度第2回)教官団長・藤堂康次氏に聞く
【著者略歴】
布施祐仁(ふせ ゆうじん)
1976年東京都生まれ。ジャーナリスト。
2012年、『ルポ イチエフ 福島第一原発レベル7の現場』(岩波書店)で平和・協同ジャーナリスト基金賞、および日本ジャーナリスト会議によるJCJ賞を受賞。
2018年、三浦英之氏との共著『日報隠蔽 南スーダンで自衛隊は何を見たのか』(集英社)により石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞を受賞。
その他の著書に『経済的徴兵制』(集英社新書)など多数。
感想・レビュー・書評
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●国連の平和維持活動(PKO)、自衛隊を派遣するための法律「国際平和協力法(PKO法)」が制定されてから、2022年でちょうど30年になる。
● 2017年防衛省で起きた「南スーダンPKO日報隠蔽事件」本当は激しい銃撃戦があったにもかかわらず、防衛大臣は戦闘の発生を否定し、散発的な発砲事件などと言う言葉で矮小化していた。
● 2015年「イラク復興支援活動行動史」の開示、決定通知書が届いた。紙の文書は黒塗りだったが、防衛省から文書のデータをコピーしたCD-Rは黒塗りする前の文書データを送ってきた。防衛省のミスだ。
●カンボジアPKOも、実際には戦地であった。東ティモール。ルワンダ難民救援。ゴラン高原。
● PKO等の日報の保存期間が10年に延長され、期間満了後も廃棄せずに、国立公文書館に移管する取り扱いに改められたことで、今後はもれなく情報公開の対象となる。 -
日報隠蔽問題が発覚し、当時の防衛大臣や、自衛隊幹部が辞任する事態にまで至った南スーダンPKO活動。その時に明らかになったのは、どう見ても戦場となっている地域に自衛隊を派遣しながら「停戦合意がある」、銃撃戦があっても「散発的な発砲がある」等の事実を捻じ曲げた政治家のロジックでした。自衛隊のPKO参加は、1991年の湾岸戦争後に掃海艇の派遣から始まって南スーダンに至るまで約25年間続きました。本書で明らかにされているのは、そのほとんどの現場で、自衛隊が現地の戦闘に巻き込まれていてもおかしくない状況に幾度となく遭遇していた事実です。
「武器の使用は正当防衛と緊急避難の時だけ認める(他者を守る目的のみでは武器使用が認められない以上、昨今のPKOで多く見られる文民警護任務では、自衛隊自身が相手の攻撃に身をさらし、あえて攻撃を受けてから武器を使用するしかない)」、「自衛隊は多国籍軍に入るが、同司令部の指揮下には入らず、戦闘に巻き込まれる可能性があれば撤退可能(実際には、現地司令部と一体化して活動するしかなく、現地で命令を受けながら武力行使を拒むのは事実上不可能)」などなど、PKO活動の実情と憲法9条の制限下で”出来ること”には非常に大きな矛盾を抱えながらの派遣であったことが明らかにされています。
本書後半で筆者も指摘していますが、建前は「国際貢献」でありながら、その実情は「自衛隊の海外活動の既成事実化」という構図では現場に派遣された自衛隊員にしわ寄せが及びます。「本来なら激しい戦闘の中でも、一人の犠牲者も出さずに任務を完遂したことは誇れることのはずなのに、(政府が戦闘を否定したことで)いてはならない所から帰ってきたようで、話す事が憚れるような空気がありました。これでは厳しい状況で任務を完遂した隊員に失礼です」との発言をされている派遣された自衛隊幹部の言葉は重く受け止めなければならいと思います。結局、自衛隊の派遣を決めるのは政治家ですし、その政治家を選ぶのは有権者の国民です。本書の結びでも上記の自衛隊幹部の言葉が引用されていますが「国民がどこまで自衛隊の負うリスクを許容できるのか、一人一人が考える必要がある」との発言には、非常に共感できました。 -
国際平和協力法、PKO法による自衛隊の海外派遣が始まって30年が過ぎていた。自衛隊が派遣された場所は、それまで紛争地でまだ敵対する勢力が停戦に合意しているだけの戦地であったことを、情報公開された「活動」日報によって明らかにする地道な取材で明らかにしてくれる労作。今ウクライナで戦争が起こっている時に自衛隊に防衛以外の任務を付与する余裕はないようにも考えるものの、本書にいくつかの提案は考えていいのかと思えた。軍事監視要員派遣、重機などの操作訓練を行う派遣など、「一人も殺さないアクター」として国際平和に貢献する道を模索してほしいとの著者の願いは印象的だ。それにつけても自分の行った判断を記録して胸を張って世の検証を受ける公務員、政治家が多数派となってほしいものだ。
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自衛隊の海外派遣について、とてもわかりやすく書かれていた。地道な資料請求、取材に一国民として感謝したい。肝心な資料を隠蔽したり、破棄したり、改竄したり、開示されても真っ黒だったり、そんなことは本当にやめて欲しい。
日報の保存期間が延長され(破棄できなくなった)公文書館に移管されることになったのは、著者の功績だろう。
今後の日本(自衛隊)ができるPKO活動の著者の提言もなるほどと思い、国としても考えてくれていると信じたいが、何も考えていないかも。アメリカの要請に従うことしかできないのかも。なんだか悲しいが、隠蔽や現地の戦況の過小説明で、肝心のPKO活動に参加された自衛隊の人への国民の評価が抑えられてしまうことも、酷いことだと思う。 -
東2法経図・6F開架:329.5A/F96j//K
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PKO法制定から30年
隠されてきた4万3000軒の記録
30年の僧検証と国民的議論を
序 章 なぜ海外派遣の検証を始めたのか
戦争と選挙の政党制に疑問
自衛隊海外派遣の歴史
内部記録
第1章 南スーダンPKO
インタビュー1 第10次南スーダン派遣施設隊隊長・中力修氏に聞く
第2章 イラク派遣
第3章 カンボジアPKO
インタビュー2 第1次カンボジア派遣施設大隊長、渡邊隆氏に聞く
第4章 東ティモールPKO/ルワンダ難民救援/ゴラン高原PKO
インタビュー3 第34次ゴラン高原派遣輸送隊隊長・萱沼文洋氏に聞く
第5章 今後の海外派遣のあり方を考える
PKO参加5原則
多国籍軍との一体化
文民保護のために武力行使も
武力紛争の否認
憲法9条の議論
軍事監視要員
1人も殺さないアクターとして
米世界戦略のもとで
インタビュー4 国連PKO支援部隊早期展開プロジェクト(2019年度第2回)教官団長・藤堂康次氏に聞く
[評]古関彰一(独協大名誉教授)
自衛隊海外派遣 隠された「戦地」の現実 布施祐仁(ゆうじん)著:東京新聞 ...
[評]古関彰一(独協大名誉教授)
自衛隊海外派遣 隠された「戦地」の現実 布施祐仁(ゆうじん)著:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/178677?rct=shohyo