太平洋戦争史に学ぶ 日本人の戦い方 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087212624

作品紹介・あらすじ

負けるには理由がある
この国が今なお抱え込む「失敗の本質」を深掘りした日本人組織論の決定版!

【おもな内容】
太平洋戦争史を振り返れば、日本人特有の「戦い方」が敗因となったと思われる事例は極めて多い。
人間関係で全てが決まる。
成功体験から抜け出せず、同じ戦い方を仕掛け続ける。
恥と面子のために方針転換ができず泥沼にはまり込む。
想定外に弱く、奇襲されると動揺して浮き足立つ。
このような特徴は今日の会社や学校などの組織でも、よく見られる光景ではないだろうか。
本書は改めて太平洋戦争を詳細に見直し、日本軍の「戦い方」を子細に分析する。
日本人の組織ならではの特徴、そしてそこから学ぶ教訓とは。

【目次】
はじめに
第一章 奇襲を好み、奇襲に弱い体質
第二章 一時の戦勝から生まれた妄想の迷走
第三章 習熟していなかった海洋国家の戦い方
第四章 人的戦力の育成・維持・強化を怠った結末
第五章 「特攻」という究極の戦い方
おわりに

【著者略歴】
藤井非三四(ふじい・ひさし)

軍事史専門家。
1950年、神奈川県生まれ。
中央大学法学部法律学科卒業。
国士舘大学大学院政治学研究科修士課程修了。
財団法人斯文会、出版社勤務の後、出版プロダクションFEPを設立。
同社代表取締役。
日本陸軍史・朝鮮戦争史を専門とする。
著書に『陸軍人事 その無策が日本を亡国の淵に追いつめた』(潮書房光人新社)、『二・二六帝都兵乱』(草思社)、『陸海軍戦史に学ぶ 負ける組織と日本人』(集英社新書)など多数ある。

感想・レビュー・書評

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  • ●=引用

    ●太平洋戦争史を振り返れば、日本人特有の「戦い方」が敗因となったと思われる事例は極めて多い。
    人間関係で全てが決まる。
    成功体験から抜け出せず、同じ戦い方を仕掛け続ける。
    恥と面子のために方針転換ができず泥沼にはまり込む。
    想定外に弱く、奇襲されると動揺して浮き足立つ。
    このような特徴は今日の会社や学校などの組織でも、よく見られる光景ではないだろうか。
    本書は改めて太平洋戦争を詳細に見直し、日本軍の「戦い方」を子細に分析する。
    日本人の組織ならではの特徴、そしてそこから学ぶ教訓とは。

    ●日本人はなにかと戦う時、目的と手段を取り違えたり、ただ戦うことだけを目的としてしまうからだ。そして目的を達成したかどうかは問題ではなく、「ここまでやった、やるだけやった」という自己満足感を得られればそれでよいわけだ。いろいろと頭を働かせて努力しているように見えるが、実のところ、精一杯やったという虚飾に満ちた空虚な満足感のためということになるらしい。これが日本人の戦い方の根本に横たわる行動原理なのだろう。

    太平洋戦争から見た日本人論

  • 兵站に力を入れないとか特攻を例とする人の無駄遣いとかいろいろな問題点を指摘。日本人の問題としているが日本が近代化が遅れている/未発達なせいなのかもとも思った。
    アメリカやイギリスは近代はほぼずっと戦争を行っており失敗から学ばなければここまでの地位は築けなかったとも思う。
    日本人の特性として納得する部分があるのは昨今でも同じような考えや風潮が蔓延しているせいかもしれない。

  • 東2法経図・6F開架:392.1A/F57t//K

  • これまで語られ尽くされてきた、大陸と太平洋で負けた日本人のネガティブな特徴を改めて提示する内容だが、本書ではそれを象徴する各具体例が詳述されている点参考になった。南方資源を一時期獲得しながら、タンカー割当など、大規模かつ効率的な内地への輸送手段が確立しないまま、やがて米軍の進出により輸送ルートも遮断された事例などは、そも何を目的に戦ったのかを見失っていたかの様で、拙さが凝縮されている印象。極めて重大な決定が、情緒的・刹那的・雰囲気に流されるなど、コロナ騒動でも存分に見られた「戦い方」は、約80年前とうに表れており、即ち将来も再現するであろうもの。ただ基本的に批判中心の記述なので、そこは勘案して読むのが適当。

  • 大東亜戦争における日本人の戦い方の傾向が現在のビジネス環境でも全く変わらないのが驚きです。しかし、こういう本を読んで確かにそうだと思いつつ、変えようと思うよりも諦めて受け入れてしまうのも全く同じ。そういう民族なのか?

  • 島国だから大陸国に住む国民とは性格も気質も違うだろう。宗教も西洋の様な一神教ではなく、万物に神が宿る多神教が広まった点では、何か一つの日本人気質の様なものを感じる。外部から物の流入が海によって遮られ、今あるものを大切に長く使おうとすれば、時間の経過と共に愛着心や神秘的なものを感じるのでは無いか。個を1番に考える海外と限られた空間からはみ出さず仲間との同一性・融和をはかろうとする日本人では考え方に違いがあっても仕方ない。ものは大切にする日本でも、人口増加が顕著になった明治維新以降では溢れ出す「人」の命の重さに対する考え方は変わってしまったのか。その後の日本が突き進んだ大戦、帝国主義への道のりは和を尊び平を善しとする日本人にとって極めて険しい道のりとなる。
    本書は太平洋戦争における軍部の戦い方に関して、日本人に特徴的な考え方を失敗の原因・敗因にあげながら説明していく。そこには前述の同一性や流されやすい心理も登場する。
    また義理や人情、精神論的な考えに陥りやすい点では、方針策定や現場の作戦指揮にも日本人らしさが現れているようだ。
    先ずは真珠湾攻撃での開戦劈頭、強力な一撃を加え相手の戦意を削げるとの予測も結果的には逆に団結させてしまう。1人の軍人の熱意に押され許可してしまうが、そこに現実的な数字とその後の正確な予測・判断はあっただろうか。また、失敗を教訓とせず同じ人間に雪辱を晴らせさせようとする人事。精神力で敵を圧倒しているという妄想。成功体験から抜け出せず対策した相手に何度でも挑む戦法。最後には大和魂を敵に見せつけ終戦に持ち込もうとした特攻。空から海から大量の人の命をモノ扱いで投入してしまった。
    そこには苦渋の選択、涙の決断、そうするしか無かった空気などもあっただろう。だから個人を徹底的に攻めるのでは無い。あの山口多聞ですら無謀な考えを抱く異常な時代だった。一つ間違いないのはそれら判断や指揮、そして実戦に参加していたのが全て日本人であることだ。現代の様に社外取締役がいるわけでも無い。天皇から市民までが一つの帝国という巨大なピラミッド構造にあり、言論統制や特高が目を光らせて戦時秩序を作っていた時代だ。誰かの指摘する「それは違うのでは」という意見も考えも「八紘一宇」の四字熟語の下に統制される。そして何より日本人の性格。技術進歩が激しく次々と新しい戦術が生まれてくる中、前例踏襲過去に縛られ身動き出来ない。そして機を失い続ける。頭でっかちの現場を知らない理想主義者の軍部が楽観的すぎる作戦を練る。兵は居るが銃は無い。いよいよ神の加護のもと精神力だけで肉弾戦を仕掛けるのか。
    特攻は最早敵空母の撃沈から、特攻する事自体が目的になるという最終段階においては、一億火の玉総特攻で伝統も国体までも数年先の存在までもが予想できない。
    今は平和だ。それでも変わらず残った日本に暮らしながら、これもやはり日本人、戦後の経済復興もやはり日本人。世界の見る日本人とはやはり特殊な人々なのだろう。最後に日本人である事を誇りに思いながらもそもそも日本人とは何か、もう一度考えたくなる。

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著者プロフィール

軍事史研究家。1950年、神奈川県生まれ。
中央大学法学部法律学科卒業。国士舘大学大学院政治学研究科修士課程修了(朝鮮現代史専攻)。著書に「日本軍とドイツ軍」、「レアメタルの太平洋戦争」、「日本軍の敗因」(学研パブリッシング)、「二・二六帝都兵乱」、「日本の防衛10の怪」(草思社)、「陸海軍戦史に学ぶ負ける組織と日本人」(集英社新書)。「陸軍人事」、「陸軍派閥」、「なぜ日本陸海軍は共同して戦えなかったのか」(潮書房光人社)、「帝国陸軍師団変遷史」(国書刊行会)がある。

「2020年 『知られざる兵団 帝国陸軍独立混成旅団史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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