差別の教室 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087212648

作品紹介・あらすじ

人の心に貼りつく差別の「種」は、いつ、どこで生まれるのか。
死にかけた人は差別しないか──?
新聞社の特派員としてアフリカ、ヨーロッパ、南米を渡り歩いてきた著者は、差別を乗り越えるために、自身の過去の体験を見つめ、差別とどう関わってきたか振り返ることの重要性を訴える。
本書では、コロナ禍の時期に大学で行われた人気講義をもとに、差別の問題を考え続けるヒントを提示。
熟練のノンフィクション作家が世界を旅して掘り下げる、新しい差別論。

【おもな内容】
はじめに
第1章:死にかけた人は差別をしないか
加藤典洋さんとの共鳴/人間はいつ死ぬかわからない?/人間は有限であると気づくことがもたらす変化/臨死体験がもたらす恥ずかしさ
第2章:アジア人の中にあるアジア人差別
「一般論」の弊害/『マイナー・フィーリングス』との出会い/アイデンティティーにからめとられる/中国でも日本でもどっちでもいいよ
第3章:日系アメリカ人作家の慧眼
ステレオタイプの受け止め方/白人視線の内面化/不朽の名作『ノーノー・ボーイ』
第4章:ジョージ・フロイド事件と奴隷貿易
ジョージ・フロイド事件とロドニー・キング事件/報道する側にある差別/母語を失うということ
第5章:日本にアフリカ人差別はあるか
東京のアフリカ人/マルクス・ガブリエルさんとの対話
第6章:アフリカ──遠望と条件反射
11歳のときに上野で渡された栞/条件反射の根底にあるもの/助けるってどういうことなんだろう
第7章:名誉白人、属性に閉じ込められる不幸
アパルトヘイト撤廃直後の南アフリカで/中国人老女との出会い/「名誉白人」の起源
第8章:心に貼りついたものと差別と
足立区で過ごした時代/もんじゃってなんだ?/『砂の器』とハンセン病
第9章:感受性と属性と──学生の問いに答える
ビリー・アイリッシュは差別的か/若いうちに海外に行くべきか/差別を生む「種」
を探る/差別した人に会いに行く
おわりに

【著者略歴】
藤原章生(ふじわら あきお)
ノンフィクション作家。
1961年、福島県いわき市生まれ、東京育ち。
北海道大学工学部卒業後、エンジニアを経て、89年、毎日新聞社入社。
特派員としてヨハネスブルク、メキシコシティ、ローマ、郡山に駐在。
2005年、『絵はがきにされた少年』で第3回開高健ノンフィクション賞受賞。
著書に『ガルシア=マルケスに葬られた女』(集英社)、『資本主義の「終わりの始まり」』(新潮社)、『ぶらっとヒマラヤ』(毎日新聞出版)、『酔いどれクライマー 永田東一郎物語』(山と溪谷社)など。

感想・レビュー・書評

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  • カニバリズム(人肉食)

    ラテン語
    「メメント・モリ」死を思え
    「カルペ・ディエム」いまを楽しめ

    「死にかけた人は差別しなくなる」

  • 差別は主観である、ということを事例を尽くして丁寧に説明してくれている一冊。

    差別をなくすことは難しいかもしれないが、戦争当事者に読んでもらえると世の中が平和に一歩近づくと思います。

  • 「死にかけた人間は差別をしなくなる」…肉体から離脱したころで人間を考えると差別的意識が緩む
    「差別をなくすためには熟考が必要」…差別を個人レベルに落とし込み内省し、自らの差別意識の根底に向き合う必要

    「3人集まると差別が始まる」…佐藤裕(富山大学人文学部教授)『新版 差別論-偏見理論批判』の定義から筆者独自の解釈
    著書では、「一般論(=偏見)」で物事を捉えることに警鐘を鳴らしながら、各章でそれぞれ代表的な差別の事例や筆者自らが感じた他者および自身の差別的経験、差別意識を取り上げ分析している

    感想
    差別的意識を「黒人-白人」や「ハンセン病患者」というように区分けして自分たちの範囲から切り離して考えるのではなく、ごく小さなものや日常の中にも差別や違和感があるというように個人レベルに落とし込んで向き合うというのは合理的。
    「心の中の白人主義的な自分が日本人の自分を差別する」極めて巧妙な言語化。こういう捉え方をしていきたい。
    人間は未知の相手には恐怖を覚えるため、何かで分類して形式に当てはめて捉えることで安心しているので、相手の人間を脱属、脱分類して向き合うのは人道的であると同時に野生的でもあるのかと思いつつ。
    差別=暴力という一般論もまた差別がなくならない要因であった。

  • 東2法経図・6F開架:316.8A/F68s//K

  • 「差別をなくそう」みたいな文言を見るたびに、なんだか釈然としない気持ちになっていた。お前はほんとに差別したことがないのか?と問いたい気分。
    いじめもそう。お前は一度も加害者になっていないのか?
    「差別をなくす」を考えるとき、いつも自分の中の差別感情について考える。

    筆者の言葉を借りると、「心に貼り付いて」いることがある。

    以前長距離バスに乗ったとき、運転手にため口でぞんざいに接され不快感を抱いたことがあった。私は30代女性一人客ゆえ、中年男性である運転手に軽んじられたと感じたのだ。しかし、その後彼によるアナウンスのアクセントを聞き、「もしかして外国籍の人なのでは?」と思った瞬間、彼に対する苛立ちが消えた。
    日本語が苦手なゆえのことだったのかもしれない、と。
    ーーでもすぐに、これも一つの差別意識なのではと思い至った。日本人男性に対しても、外国人に対しても。同じ現象を人の属性によって許せたり許せなくなったりするのはなぜなのか?
    自分がイヤな人間に思えた。

    この本で、筆者の南アでの中国系の人への取材中、「日本人がこんなところへ来るんじゃない」と怒鳴られたエピソードが出てくるが
    一人ひとりの人生の中にあるトラウマ、傷、そういったもの(これはもちろんごく個人的な体験もあれば、戦争などもある)が、差別意識を生み出し、それが長い間かけて熟成されることもある。
    私のバスの件で言えば、若い頃に中年男性から客としてきちんと扱われなかった経験が何度かあり、「またこれだ」と反応してしまったところがある。別に不当な扱いを受けたわけでないので、完全に過剰反応なのだが。
    外国籍で日本で働いている人への個人的好感情もあったと思う。

    筆者に怒鳴った中国系の女性は、筆者から後日話を聞かれた際に日本人への感情の理由を語り、日本人である筆者と打ち解けていく。

    これはなんというか稀有なケースかもしれない。が、
    こうあれたらいい、と思う。
    個と個の直接のまじわり。すべてうまくいくとは限らないし、社会の問題が一気に解決するわけではないけれど。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/564787

  • 京都府立大学附属図書館OPAC↓
    https://opacs.pref.kyoto.lg.jp/opac/volume/1266732?locate=ja&target=l

  • 361-F
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著者プロフィール

藤原章生(ふじわら・あきお)1961年、福島県いわき市生まれ、東京育ち。北海道大工学部卒後、エンジニアを経て89年より毎日新聞記者として長野、南アフリカ、メキシコ、イタリア、福島、東京に駐在。地誌、戦場、人物ルポルタージュ、世相、時代論を得意とする。本書で2005年、開高健ノンフィクション賞受賞。主著に「ガルシア=マルケスに葬られた女」「ギリシャ危機の真実」「資本主義の『終わりの始まり』」「湯川博士、原爆投下を知っていたのですか」。

「2020年 『新版 絵はがきにされた少年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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