続・韓国カルチャー 描かれた「歴史」と社会の変化 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
3.85
  • (2)
  • (7)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 91
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087212723

作品紹介・あらすじ

前著『韓国カルチャー 隣人の素顔と現在』に続く待望の第二弾。本著では「歴史」に重点を置き、韓国社会の変化を考察する!本書で取り上げる作品は『今、私たちの学校は…』『未成年裁判』『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』『ブラザーフッド』『スウィング・キッズ』『リトル・フォレスト 春夏秋冬』『子猫をお願い』『シークレット・サンシャイン』『私たちのブルース』『シスターズ』『D.P.-脱走兵追跡官-』『猫たちのアパートメント』『はちどり』『別れる決心』など。Netflix配信で世界的に人気となったドラマからカンヌ国際映画祭受賞作品まで、全25作品以上を掲載。【主な内容】韓国と日本の教育制度の違い、部活動も大学入試のため韓国人が考える、「大人の責任」とは?韓国での「オルン(大人)」の意味ソウルの南北問題――江南と江北韓国映画における女性監督の草分け、イム・スルレとはどんな人なのか子猫がリードした「ワラナコ運動」映画『サバハ』が描いた、韓国のカルト宗教韓国人にも難しい済州島の言葉済州島のアイデンティティ、「サムチュン」とは?入隊したBTSのJIN出演者たちにも軍生活のトラウマが…… 富裕層はなぜ江南に引っ越したか? パク・チャヌクが主題歌『霧』にこだわった理由【著者プロフィール】伊東順子(いとう・じゅんこ)ライター、編集・翻訳業。愛知県生まれ。1990年に渡韓。ソウルで企画・翻訳オフィスを運営。著書に『韓国カルチャー 隣人の素顔と現在』(集英社新書)、『ピビンバの国の女性たち』(講談社文庫)、『韓国 現地からの報告――セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)等。訳書に『搾取都市、ソウル――韓国最底辺住宅街の人びと』(イ・ヘミ著、筑摩書房)等。2017年に同人雑誌『中くらいの友だち――韓くに手帖』(皓星社)を創刊。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 韓国映像作品から見る韓国の「歴史」と社会の変化。幾つか私の馴染みのある作品が扱われていたので、手に取ったのだけど、読むと知らない作品も見てみたい、となり、昔の作品ももう一度観たい!となって、珍しく韓国ドラマで何日も夜更かししてしまい、珍しくDVDを買ってしまった。それは、また別途レビューしたい。

    第四章「映画でふりかえる「6.25(ヨギボ)朝鮮戦争」」には、歴代朝鮮戦争映画を網羅している。韓国で大きな事件は日付で記憶される(私たちの3.11よりももっと一般的だ)。1950年、6月25日、北朝鮮は突然攻めて来て、ソウル市民はあっという間にソウルを追われた。そしてあっという間に全土制圧まで行きかけた(「戦火の中へ」)。米国の連合軍参戦、中国参戦で前線は何度も行きつ戻りつする(「高地戦」)。朝鮮戦争の民間人の犠牲者は少なく見積もって200万人と言われる。太平洋戦争時の日本の民間犠牲者は80万人である。しかも同族で殺し合った。親兄弟で殺し合ったことも少なくなかった(「ブラザー・フッド」)。犠牲者の多くは、北のせいだけではなく、大国と政府のやりとりで、市民がなおざりにされたことが大きかった。ビックリしたのは、これら朝鮮戦争の全体を国民が学んだのは、民主化(90年代)がなされて以降だというのだ。2000年代に立て続けに戦争映画ができたのもムベなるかな。

    第七章「韓国の宗教事情を知る映画」では、私の大好きなチョン・ドヨンがカンヌ映画祭主演最優秀女優賞を獲った、「シークレット・サンシャイン」(原題「密陽」2007年イ・チャンドン監督)が取り上げられていた。実は、翌年2008年日本公開直前に作品舞台である慶尚北道密陽を旅していた。駅前に派手にカンヌ受賞の立て看板が立っていた。確かに街中を縦横に歩いて、本当に小さな町なのに、どこからでも教会の十字架が見えた。2015年の宗教人口別の数字は以下。
    1.基督教(プロテスタント)約970万人
    2.仏教 約760万人
    3.天主教(カソリック)約390万人
    4.円仏教 約8万5000万人
    5.儒教 約7万5000万人
    プロテスタントとカソリックは明確に分かれていて、上位三つが三大宗教である。いずれも、日本のようななんちゃって宗教ではない。明日取り上げる「マイ・ディア・ミスター」でも、いざという時に主人公たちが頼るのは「お寺」だった。
    そしてだからこそ、問題はある。聖職者も人間であり、世俗的な部分もある。だからこそ、「普遍的な問題」も取り上げることができる。決して「反・キリスト教映画」ではない。

    第9章「ベトナム戦争と韓国ドラマ、そして映画」
    ベトナム戦争を扱った作品は「ホワイト・バッジ」(1992アン・ソンギ主演)と「あなたは遠いところに」(2008スエ主演)だけしかなかった。何故か前者の日本語字幕なしの海賊版DVDを持っている。こんな凄い内容(韓国人兵のベトナム民間人虐殺)だったんだと初めて知った。後者はファンタジーだから、まだ韓国社会が本気でベトナム参戦を精算できていない証拠だろう。

    第12章「映画「別れる決心」とパク・チャヌク監督のこだわり」
    今年観た映画で、間違いなくベスト10に入る。来月4日にレンタル開始。機会があれば、是非!
    伊東さんは、内容がミステリーということを考慮して、ストーリーに関することを一切書かずに主題歌「霧」についてとテーマがいかに関わってゆくか、在韓中国人のヒロイン・ソレの生きる位置と在韓朝鮮族やその他外国人差別についての、この作品への背景を書いている。なんでこんなことまで書いているのか?一度映画を観ている私でもスッキリしないほど書いている。そもそも映画については一度見ただけでは50%ぐらいしかわかっていなかったということだけはわかった。正に映画である。これこそが映画だ。ちなみに、伊東さんは言及しなかったが、最後に選ばれた原発の町、イボは、韓国南部にあるのでおそらく古里(コリ)だ。そうやってみれば再見時、又何か発見があるかもしれない。

  • 伊東順子『続・韓国カルチャー 描かれた「歴史」と社会の変化』(集英社新書)を小針進さんが読む
    ドラマ・映画への深堀りで読み解く韓国の変化
    青春と読書
    http://seidoku.shueisha.co.jp/2308/read12.html

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年 |ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト(2024年04月15日)
    https://www.newsweekjapan.jp/ito/2024/04/10.php

    第1話 私もナグネだから|移動する人びと、刻まれた記憶|伊東 順子|webちくま(2023年10月5日)
    https://www.webchikuma.jp/articles/-/3258

    続・韓国カルチャー 描かれた「歴史」と社会の変化 – 集英社新書
    https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1172-b/

    続・韓国カルチャー 描かれた「歴史」と社会の変化/伊東 順子 | 集英社 ― SHUEISHA ―
    https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-721272-3

  • 近年の韓国映画、ドラマの話題作を中心に、その作品の背景、関連する作品などを解説。一見して見過ごしてしまう点、理解できない点を韓国の文化、風習を踏まえて理解できる。このシリーズは次も期待したい。

  • ドラマはほとんど見ていたからこの本の内容は面白かったけど、夫はなんじゃこれ?って言ってた。

  • 紹介されている映画やドラマをみんな見てしまいたくなった。第一章:韓国の学校教育を知る、ドラマ「今、私たちの学校は…」、第二章:韓国人が考える、「大人の責任」、第三章:実は、大人たちの物語、第四章:映画でふりかえる「6・25朝鮮戦争」、第五章:イム・スルレが描く、生きとし生けるもの、第六章:「子猫をお願い」が描いた、周辺の物語、第七章:韓国の宗教事情を知る映画、第八章:ドラマ「私たちのブルース」、第九章:ベトナム戦争と韓国ドラマ、そして映画、第十章:語られることのなかった、軍隊の話、第十一章:「タワマン共和国」、第十二章:映画「別れる決心」とパク・チャヌク監督のこだわり。

  • 東2法経図・6F開架:778.8A/Ka56k/2/K

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

編集・翻訳・執筆業。愛知県生まれ。1990年に訪韓。著書に『韓国 現地からの報告』(ちくま新書)、『ピビンバの国の女性たち』(講談社文庫)等。『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)では解説を執筆。雑誌『中くらいの友だち』を主宰。

「2022年 『搾取都市、ソウル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

伊東順子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×