母のあしおと (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087441017

感想・レビュー・書評

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  • 道子という女性の人生を辿る物語。
    人生を「逆」からたどってみたら、母の私も娘の私も女の私も悪くない。
    それぞれの視点で見ると違ったふうに見える。
    平凡なお母さんなんてきっとどこにもいない。

    とても興味が湧いて、自分だったらどう見えるんだろうと考えてしまった。
    母で人生を終えるのかもしれないが、娘でもあったし、女でもあった。
    娘の時期も女の時期も母の時期に比べるとうんと短かかったけれど、確かにあったのだ。
    それはどんなふうに見えていたのか…
    自分であって、自分じゃないみたいに感じるのは母の時間が長いからだろうな。

  • 良い小説だったなあ。ラストは目頭が熱くなったよ。道子の人生を遡っていく構成がいいぞ。しかも、全てが理に落ちる(こんな経験をしているから、あんな性格になったのか、など)こともなく、人間を人間らしく描いている(息子の婚約者にあんなに辛く当たるのは自分がそうされたから、というわけでもなさそうだし)。他のも読んでみるかな。

  • 一人の女性の人生をどんどん過去に遡っていく。
    困った部分もあるけれど、憎めない。

    それが、母。

    最後まで読んで振り返った時、
    そういう人生だったんだねとしんみり思う。

  • 母性を巡る物語。

    道子という女性の 死後数年後から始まる。長年連れ添った老いた夫が、寂しさからやはり伴侶を亡くした高齢女性に淡い恋心を抱くも、彼女の容姿にも仕草にも亡き妻を重ねてしまう。
    道子が息子らを溺愛していた母親だったこと、嫉妬深かったことがエピソードからわかる。

    小説は、道子の生涯を遡っていく。ラストは、道子の幼少期、語り手は道子の母。

    他の章も、道子の葬式の日の次男、道子に意地悪される長男の婚約者、姑にいびられ道子が実家に逃げている間、道子の夫に想いを寄せる夫の従妹、結婚式前夜の道子、と様々な人の視点から、老人から子供時代までの道子が語られていく。

    モンペアぶりを見せるまでに息子らを溺愛し
    息子の婚約者にあからさまな嫉妬心を剥き出しにし
    死んで蜂になってまで夫に近づく老婆を威嚇し
    姑にいびられ鬱から自殺未遂
    娘時代は我慢強さとわがままのアンバランスさ

    道子が私が嫌いなタイプの女性の要素をフルコースで備えていて
    共感が全くできないのだが

    物語が進むにつれ、この人が後のあの人か、という
    構成の面白さですんなり読了。

    母性は美しくなんかない。
    歪な欲だ。






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著者プロフィール

神田茜(かんだ・あかね)
北海道帯広市生まれ。1985年に講談師の二代目神田山陽門下に入門、95年に真打に昇進。2010年『女子芸人』で第6回新潮エンターテインメント大賞受賞。著書に『フェロモン』『好きなひと』『ふたり』『ぼくの守る星』などがある。

「2014年 『しょっぱい夕陽』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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