- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087442021
作品紹介・あらすじ
尼崎の小さな映画館を父親から引き継いだ安室俊介は、不動産業者から、閉館と買収の話をたびたび持ちかけられていた。座席数100余りの小さな映画館は戦後間もない時期に祖父が始めたが、収益を上げることは年々難しくなっている。迷いつつも閉館するしかないと考えた俊介だったが、新聞記者からの取材には、まだ正式には決めていないと話した。だが新聞には「年内に閉館する見通し」との記事が出てしまう。記事の反響は大きく、マスコミからの取材が殺到したが、俊介はすべて断った。
そんなある日、創業者である祖父の名前を出した問い合わせが入る。電話の主は台湾に住む男で、彼の祖父が俊介の祖父と知り合いだったという。俊介は祖父の前半生を知らなかった。閉館にあたり映画館の歴史を調べようとしていた俊介は、男から驚くべき事実を告げられる。尼崎に生まれた祖父は若い頃、ある島で強制的に働かされていた。そして、祖父たちがいた場所は、当時、脱出不可能と言われ、密林の中に映画館があったというのだ。
なぜ祖父はその場所に行ったのか。どのようにそこから脱出し、なぜ映画館を始めたのか。
創業者である祖父の若かりし日々を追って、俊介はその場所に向かう。
歴史のうねりと個人の生が紡ぎだす、感動と興奮の長編小説。
【著者略歴】
増山 実(ますやま・みのる)
1958年大阪府生まれ。同志社大学法学部卒業。2012年に「いつの日か来た道」で第19回松本清張賞最終候補となり、それを改題した『勇者たちへの伝言』で2013年にデビュー。同作は2016年に「第4回大阪ほんま本大賞」を受賞した。他の著書に『空の走者たち』(2014年)、『風よ僕らに海の歌を』(2017年)がある。
感想・レビュー・書評
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安室俊介、彼は自分が経営する「波の上のキネマ」という映画館を廃業するかどうかで悩んでいた。祖父が始めた映画館を代々受け継いでいたが、近くにある大手シネコンの影響で客足は遠のくばかり。
「塚口ルナ劇場」を経営する友人に相談するも友人はルナ劇場の歴史を一方的にしゃべって別れる。俊介ははたと気づく。自分の映画館の歴史を知らないまま閉館するわけにはいかない...と。残念なことに祖父は既に他界しており、手がかりもない。
そんな折、台湾から俊介に不思議な電話がかかってくる。運命の歯車が回り始める。
ボリュームたっぷりで感動的な話だった...。時代に押し流されていく人生、そこで出会う友情、希望...。「塚口ルナ劇場」は阪急塚口駅にある「塚口サンサン劇場」がモデル。僕も行ったことがあるので超親近感。ネタバレになるので書けないがとある場所に実際にあった映画館を筆者が知り、この物語が生まれたそう。完全にフィクションだと思ったのに調べたら本当に当時存在したらしい...。意外すぎて...。
壮絶な人生を歩んだ祖父、そして多くを語らなかった祖父...それでも映画への愛は孫にちゃんと受け継がれていたんだ...と思うとしんみりと、そして温かい気持ちになる。そして最後は口元に指をあて、ニッと笑って生きようと思った(映画の作品、ネタも含まれているので映画好きな人は楽しさ2倍!) -
散髪屋の兄さんに「街の映画館が好きなら」って事で借りた。
子供の頃から通った塚口サンサン劇場も本作で出てきたし、隣町であった尼崎の歴史が知れて興味深かった。
ある映画館の設立背景を紐解く本作を読んで、事業を興していた僕の両祖父の、設立にあたっての思いや背景を知らなければならないなと感じた。たった2世代しか離れていないけど、爺さん達の思いみたいなものを知らないのは、寂しいな。
自分では手を伸ばすタイプの本では無かったんだけど、こういう新たな出会いもええもんや -
映画や音楽が好きな方にはオススメしたい作品。
最初は主人公の物語かと思いきや、
フォーカスが少しづつ変わっていく。
色んな視点から物語が見れるのが私は好きだった。
章のタイトルもリンクしてる部分があるので
読み進めてからなるほどと思ったりした。
1人1人の人生は語られないが
本当に色んな事が起こっている。
そんなことを感じれる。
自分のルーツはどこからどう向かっているのか、
そんなことを考えながら読み進められる。
臨場感がひしひしと感じる作品でした。 -
話が壮大で素晴らしい。
過酷な状況だからこそ夢を持って、
その夢を仕事にする人生。
素敵な生き方です。 -
素敵なタイトルだなぁ~って一目惚れした本でした。
読み進めて行くと、大好きな西表島のことが書いてあってビックリしました。
お話にでてくる、炭鉱跡に行ったときに、ここで沢山の人が過ごしていたんだなぁと、一人でぼんやりと空気を感じたことがあります。
そんな時間を思い出させてくれた本です。
各章が映画のタイトルなのも良いですね。
良い本に出会えました。
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装丁とタイトルで手に取ったが、想像していたより、ずっしりと読み応えがあった。
尼崎に祖父が建てた映画館「波の上のキネマ」の経営を父の次に受け継いできた3代目 安室俊介。
街の小さな映画館の経営はどんどん困難になり悩みの尽きない俊介。
そんな時、俊介は祖父と「波の上のキネマ」のルーツを辿ることになる。
メインストーリーの舞台は祖父 俊英が厳しい年月を過ごした西表島の炭坑。
小説だと思って読んでいたけれど、炭坑での厳しく強いられる生活、描写があまりにもリアルだったので調べてみると、1930年代に実際に炭坑があり、労働者は島に閉じ込められ働かされ続けたという事実に衝撃を受けた。
西表島の要塞のようなジャングルの描写、強いられた生活の中での自然の美しさ。
同じく炭鉱で働く友達との出会いと別れ、そして辛い日々を生き抜くために俊英が掛け合って実現したジャングルの中の映画館。
映画を見ている時の炭坑労働者達の、生き生きとした描写が心に響く。 -
尼崎にある映画館のルーツが西表島にあった。祖父と祖母の遠大な愛の話。
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尼崎に祖父が創業した小さな映画館「波の上キネマ」を継ぐ安室俊介は、あるきっかけで祖父の前半生に興味を持ち、南へ向かう。祖父は脱出不可能な絶海の島で苛酷な労働を強いられていたが、そこにはジャングルの中に映画館があったという。祖父はなぜその島に行ったのか。なぜ密林に映画館があったのか。運命に抗う祖父が見たものは…。壮大なスケールで描く驚嘆と希望の長編小説。
「塚口サンサン劇場」は、ずいぶん前ですが、私も行ったことがあります。塚口駅は、良く利用しました。私も超親近感です♪
「塚口サンサン劇場」は、ずいぶん前ですが、私も行ったことがあります。塚口駅は、良く利用しました。私も超親近感です♪
コメントありがとうございました。小説に出てくる場所が自分の知ってる場所だと親近感わきますよね!
逆に小説に出てきた場所に旅行に行...
コメントありがとうございました。小説に出てくる場所が自分の知ってる場所だと親近感わきますよね!
逆に小説に出てきた場所に旅行に行くというのも楽しそうです。