大人は泣かないと思っていた (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 5667
感想 : 295
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087442342

感想・レビュー・書評

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  • あー
    これはまたいい本に出逢った

    人にはそれぞれの物語がある
    他人には読むことのできない物語がある
    大人も子どもも男も女も関係ない
    泣きたいこともある
    我慢できなくて涙が溢れ出てきてしまうこともある

    いーんじゃないの?
    と最近はいろんなことを思えるようになって気持ちが楽だ

  • 7つの短編集。田舎に父と住む翼の周りの人を描いている。主人公を好きになれるかって、物語において重要。最初から最後まで読んで、翼のことがすごく好き。仕事を頑張っていて、誠実で、人のことを悪く言わないし、優しい。お菓子作りが趣味なところ。両親が離婚して、母が出ていった。自分は捨てられたと嘆いてもいいところを、夢を追いかける母の背中を押せるところ。「人間が人間を捨てることなんてほんとはできないんだよ、ゴミじゃないんだから捨てるとか捨てられるとか、そんなふうに……そんな言い方やめてくれよ。」って、本当にやめてほしいことは言葉を尽くしてやめてって言えるところが好き。慎重で臆病者でやさしすぎる翼がちょっとずつ変容するさまも、よかった。
    誰とどこにいたって、幸せは瞬間。

    田舎の閉鎖感とか噂話とか男尊女卑が蔓延っていることとか、そういうものに対する作者の嫌悪感が伝わってきて、すごく好きだった。男らしくとか女らしくとか、父親なんだから母親なんだからという言葉に縛られすぎないように。みんな誰かのために生まれてくるわけじゃない。もちろん自分の人生は自分だけのもの。でも、誰かのために、というか、いっしょにいたいなって思える人に出会えるって素敵なことなんだなあ。


    遠くばかり見ないように、と今は思う。遠くを見過ぎで、目の前にあることをないがしろにしないように。「来年」や「将来」が、あらかじめ設定されていて、ただそこに向かって駒を進めるようにして生きていければ、楽だろうなと思う。でも違う。予想外のことがかならずおこる。俺たちはたぶん目の前に現れるものにひとつずつ対処しながら、一歩踏み出す方向を決めるしかないのだろう。いちいち悩んだり、まごついたりしながら。

  • 私も大人は泣かないと思ってた。
    大人になって泣く回数は随分少なくなったけど、それでもやっぱりしんどくなって悩んで時には泣いたりもする。
    でも、あの時選ばなかった別の選択肢に思いをはせて悲しんだり憂いたりはやめようと思った。
    それよりも今いる場所をもっと楽しく過ごす為の時間に充てた方がずっとずっと有意義だ。

    そして、最後の章「君のために生まれたわけじゃない」サブタイトルから悲しい結末になるのかな?と思ったけど…
    自分の人生は自分の為に。
    翼くんの考え方、ほんとに好き。

  • 色んなことが起こりつつも全体を通してみれば平和でした。読み終えたあと、何となく優しい気持ちになれたような気がします。登場人物たちのその後が気になる物語でした。

  • 良いも悪いも、自分で自分はこうである。
    こうでないとならない。こうさせないといけない。
    に縛られている世界観が各人々それぞれから
    伝わるお話でした。
    いろんな考え、価値観が伝わり面白かったです。

    思ったよりも、世の中は優しい気がします。
    し、思ったよりも、言葉や感情は
    真っ直ぐ伝えた方が伝わると思いました。

    相手がいての私ですが、
    私自身もっと人に頼っても
    もっと幸せになってもいいと思いました。

  • 普通、生きてる中で自分の価値観しか感じられないけど、この小説は一人を軸に色々な登場人物の価値観が描かれていて、みんなで生きてるんだなーって感じた。どの章もすごく感情移入しやすくて考えさせられた。翼はこれから少しずつ人に頼って生きられますように。

  • それぞれが様々に囚われている「らしさ」からの解放(の兆し)。
    読み終えてタイトルの秀逸さに気づく。

  • 題名に引かれて図書館で借りてきました!
    それぞれの章によって、登場人物達の見方が変わり最後まで楽しく読むことが出来ました!

  • 一つの街で様々な立場、思いを持った人の人生が交わり合っていく話。特別な大偉業を成し遂げる訳でもないがそれぞれの思いを持って、それぞれの人生を生きている人 登場人物が魅力的。

  • しみじみしたなぁ・・・。
    けして生きやすくない閉鎖的なコミュニティの中で、男らしくないと言われながらも、自分なりの考えや好みを曲げることはしない、翼。かれと対極にいるような男らしい幼なじみの鉄也と、やりとりするところがいい。
    なんでも大ざっぱに(おおらかに)、「わからん」と言い放ってきた鉄也。結婚しようとしている女性のことに及んでも「わからん」を連発していたら、翼に叱られる。
    「なんでも『わからん』で済ませるな」

    そう言うしかないこともあるけれども。大事な人やものごと、そして自分のことこそ、分かろうとする姿勢や努力が必要なのだ。その過程で何度、涙しようとも。

    みんなちょっとずつ臆病で、でも、曲げられない想いがある。その小さいけれどしたたかな、野の花のようなつよさが、愛おしい。
    怒りや悲しみのような、はげしい感情からではない・・・でも胸の奥深くから湧いてくる、"大人の"涙。

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著者プロフィール

1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。

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