闘鬼 斎藤一 (集英社文庫)

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  • 集英社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087442373

作品紹介・あらすじ

新選組組長として激動の幕末を生き抜いた、最強の剣客・斎藤一の生涯を描く! 注目の時代小説家による、渾身の長編。

感想・レビュー・書評

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  • 余り描かれる事のない斎藤一の新選組物語。

    私は歴史を含めて新選組が好きなので、近藤勇が芹沢鴨亡きあと、増長した話等も知っていますが、改めて活字にされると(−_−;)

    人を斬ることに長けた男が組織の中で葛藤し、たどり着いた境地。それへ導いた友沖田総司も師である近藤勇もないのは、やはり切ない。

    生き残った隊士達はそれぞれの余生を過ごす中で、彼が残された事がよかったのか、悪かったのかはわかりませんが……。

    解説にもありましたが、るろうに剣心の斎藤さんに近いイメージがありました。

  • 少し夢中になって、頁を繰る手が停まり悪くなり、ドンドン読み進んで素早く読了に至った。そして少し深い余韻に浸るような感でもある。
    幕末期の新選組には、多くの人達が関わっている。或いは関わった人達の数だけの物語が在り得る。更に綴る人達の数だけの物語が在り得る。題材の宝庫で、多くの作品が存在するのが、新選組に関係する時代モノの小説だと思う。
    本作はそうした新選組に関係する時代モノの一つということになるのだが、本作の主要視点人物は「斎藤一」(さいとうはじめ)である。
    将軍の徳川家茂が上洛するということになった時、その警護のためとして浪士組隊士が募られ、応募した者達が京都に着いた。そこから然程経たない頃に「引揚げる」という話しになり、それに異論を唱えたグループが京都守護職の会津松平家の“御預”という形式で残留し、京都で、更に大坂でも活動し始めたというのが新選組の起りである。江戸の道場で、多摩でも活動していた試衛館の面々は、その残留した人達の中核を成していた。斎藤一もその中の一人ということになる。本作はその新選組の起りの頃から、京都での活動と、戊辰戦争の中でのことに至る迄が、斎藤一の目線で描かれる。
    「斎藤一」という名が最も知られているが、彼は何度か改名をしている。本作ではその辺りに関することも描かれる。が、それはそれとして「時代の狭間」で「自らの価値観」も揺らぐような中での“生き様”というような物語になっていると思う。
    武芸者が技や力を駆使して斬り合う、組み合うという「闘い」に対し、火砲を擁する部隊が衝突して殺し合う「争い」というモノが在る。「闘い」に生命を賭すようなことを旨とする者達の時代が「争い」の時代に移ろって行くというのが、斎藤一の目線で観た幕末から明治という、時代の移ろいということになるのかもしれない。
    作中、斎藤一と様々な人達との関係が色々と描かれる。
    最初期の新選組で、試衛館の面々に対し、もう一つの一派を成した水戸天狗党の流れを汲む人達が在ったが、その領袖であった芹沢鴨は独特な存在感を放った。この芹沢鴨との関係、試衛館の面々が彼を斬るに至った経過が前半部の核を成したように思う。
    斎藤一と年代が近い沖田総司は、殆ど全編を通じて「少し似た性向の親友」という存在感を放つ。その沖田総司については、年長の友、兄のような存在感の山南敬助が在る。この山南敬助を巡る経緯も、本作の半ば辺りでは大きな部分であると思う。
    後半部は伊東甲子太郎と土方歳三との抗争が大きな位置を占める。斎藤一は両者の間で動くことになる。
    こうした幕末期の様々な動きから戊辰戦争に突入し、その日々が描かれることになる。
    こうして振り返ると、序盤から終盤まで、盛り上がる要素が満載である。実に好い!!色々と伝えられていて、小説作品も多い時期の出来事で、大筋は判っているのだが、それでも作中世界に強く引き込まれる。本作では「闘い」を旨とする斎藤一の様子が精緻に描き込まれ、それに凄く惹かれる。
    結局、「闘い」と「争い」との狭間を駆け抜けて生きた斎藤一の物語は、深い余韻をもたらしてくれた。広く御薦めしたい。

  • 新選組に関与するキャラクターとして、斎藤一は謎めいていて、個人の高いスキルの伝説だけが残っており、歴史の進行に個人として意味をなした人物でもないゆえに、小説家にとっては造形の自由度が大きいだろう。乾いてやや軽いタッチの現代的な剣戟シーンの書き方が印象的だった。
    その他、永倉、原田と近藤の反目についてこれだけ描写した小説は珍しいと思う。ただ、沖田と斎藤の「友情」めいたものがあったかのように描くのは、ちと違和感があり、現代受けを狙いすぎの気がする。

  • 新撰組のイメージの一つに、最後の剣客集団というものがあると思います。武士道を重んじ、剣と剣の勝負を挑む。そのため、時代の流れに取り残されて滅んでいった、というようなイメージ。
    そのイメージを研ぎ澄まして不純物をそぎ落とした先に、一人の人間として戦いだけを望む存在が出現します。それが今作の主人公、斎藤一です。

    近藤勇。土方歳三。沖田総司。山南敬助。芹沢鴨。伊東甲子太郎。
    多くの新撰組隊士との触れ合いを通じて、己の求める闘いについて、それぞれの人物が適合しているのかを見極めてゆきます。個の闘いを押しつぶしてゆく、多の争いが
    時代を作り出そうとしてゆく中で、己を燃やす場所を探しもがき続ける様は、哀れだと感じることもありますが、憧れでもある。

    終盤、老境にかかった斎藤一が若者に対する場面。
    そこで発する言葉の怖さ。闘いを求め続け、燃え尽きることができなかった哀しみを覚えます。
    己の熱量を燃やし尽くすことはできなかったと思うんだよなぁ。あれは、こびりついてしまった生業の末ということなのか?
    生きることは、それ全てが闘いである。と最後の戦場に臨む前に語った斎藤一ですが、己の心の中に宿ったモノは捨てられなかった、ということなのか?




    どうも、自分がこれまでに作り上げた斎藤一を含む新撰組のイメージが先行している気がする。いろいろな新撰組を読んできているけれど、最初期に構成したイメージは強いものです。るろ剣強し。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50257677

  • 斎藤一を中心に淡々と…。と言うのが読んだ感想。
    近藤勇の人間像が少し?のような。
    もう少し踏み込んだ内容でも良かったような。

  • 吉川版斎藤一。
    最後の場面が、特にカッコイイ。

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著者プロフィール

吉川永青
一九六八年東京都生まれ。横浜国立大学経営学部卒業。二〇一〇年「我が糸は誰を操る」で小説現代長編新人賞奨励賞を受賞。同作は、『戯史三國志 我が糸は誰を操る』と改題し、翌年に刊行。一二年、『戯史三國志 我が槍は覇道の翼』で吉川英治文学新人賞候補。一五年、『誉れの赤』で吉川英治文学新人賞候補。一六年、『闘鬼 斎藤一』で野村胡堂文学賞受賞。近著に『新風記 日本創生録』『乱世を看取った男 山名豊国』などがある。

「2023年 『憂き夜に花を 花火師・六代目鍵屋弥兵衛』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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