カモフラージュ (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.38
  • (23)
  • (82)
  • (101)
  • (28)
  • (5)
本棚登録 : 1284
感想 : 81
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087442441

作品紹介・あらすじ

いつもより荷物の重い日が好きだ。 お昼の弁当に加えても、もう二つ、夜に彼と食べる用の弁当を作る。食べる場所は決まって“ホテル"で ──「ハンドメイド」。
僕のお父さんは一人じゃない。お父さんの後ろには、真っ白な顔のお父さんたちが並んでいる ──「ジャム」。
恋愛からホラーまで、松井玲奈が見つめる“人間模様"を描く、鮮烈なデビュー短編集が待望の文庫化。
単行本収録作品6編に文庫書下ろしの「オレンジの片割れ」を加えた全7編を収録。


松井玲奈(まついれな)
女優。1991年7月27日生まれ。愛知県豊橋市出身。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 元SKE48の松井玲奈さんの短編集。
    一言で言うと、おしい…という感想。
    粗削り、というか、まだ作品としてこなれてないまま出版された感じ。

    松井さんはインタビューで、「人間って、誰でも化けの皮を被っているというか、そういうモノに覆われて生きていると思うんですよ。この短編集に収録されてるどの作品の登場人物も、何か1つ被ってるモノがあって、それを破ったり、脱したりして、新たな自分に出会ったりするんです」と語る。タイトル「カムフラージュ」はそのイメージからはとったという。

    着想はとても面白い。

    例えば、7作の収録作のうち1番最初の「ハンドメイド」。別に本命の彼女がいるセフレのために、ホテルの部屋で夕食として食べるお弁当を一生懸命作る話。この短編集の中で最も面白い。

    ほかにも、エッチの時かかとの絆創膏に気づいたら萎えるのか否か、とか、「運命の人」を信じる心は果物のオレンジで、実は胸の間から取り出せる、とか、ストレスを感じると、もうひとりの自分が吐き出されるという大人だけ知っている秘密がある、とか。

    突拍子はないけど、掘り下げていけば面白いものになる予感はある。
    ただ、掘り下げがちょっと浅い。唐突感だけ残る。
    ライトなものを読みたい時にちょうどよいレベルで終わっているのだけど、本当はもっと重厚で胸に残る内容になりうる素材なんじゃないかな…と思う。

  • 独特の世界観。でも無理していない感じで、文体も自然なのが良かった。

  • 松井玲奈さんの短編集。
    元アイドルが書いたとは思えないくらい
    大人ニュアンスいっぱいの
    お話ばかりで面白かったです。

    連作短編集ではないので話はひとつひとつ
    全然ちがうのに、どの話にも少しの毒を
    含んだ印象。そこが共通点かな。

    嫌な感じの終わり方では無いのに
    どこかスッキリしない…。
    晴れ晴れとした印象が無いのに
    一応、全てのお話がハッピーエンド⁈

    もっと他の作品も読んでみたいです。


  • 7編からなる短編集。
    恋愛あり、ホラーあり、ヒューマンあり…盛りだくさんの7つの物語の共通点は自分の中の自分。
    誰かが知る誰かには誰も知らない誰かが潜んでいる。いつもは影を潜めてる誰かもふとした瞬間に表に現れたり、ジッと耐えていたり…それは、誰もが持っている二面性という自分。
    まさにカモフラージュ。

    日常においても偽りの自分を繕いすぎると、どん詰まる。人目を気にしすぎたり、誰かの普通や常識に縛られたり、理想の自分を演じすぎたり…その先に待ち受けるのは幸せか。
    カモフラージュの呪縛から解き放たれた時、フェイクではない自分と出会えるのかも知れない。
    自分の中のカモフラージュのこと…ふと考えてしまう。

    松井玲奈さんて、あの松井玲奈さんなのね。
    知らずに読みました。文体は正直、好みとは言えないのですが、ストーリーはどれも普通に面白かったです。最後までちゃんと楽しめました。

    今年の2冊目
    2021.1.16

  • 松井玲奈さんの、小説デビュー作。『累々』を先に読んだが、こちらは短編集である。
    「カモフラージュ」というタイトルの作品は含まれていないが、本のタイトルからそれぞれの作品になにを読み取るか、と考えるのも楽しい。

    後書きに、今まで小説を書いたことがなかった、と記されていて驚いた。
    少しも素人臭さを感じない滑らかな読み口だ。
    きっと才能があったのだろう。
    それを見つけて引き出した人はすごいのかも。

    一編ずつ違った味わいだが、丁寧で鋭い心理描写と、物の感触の描写が心地よくリアルでバラエティに富んでいる(怖すぎるものもあるが、それも味わい)
    只者ではない感覚の持ち主と感じた。


    『ハンドメイド』
    フリンはオトコがトクするだけだよ!
    「後悔しないの?」って何だよ!

    『ジャム』
    これは・・・シュールでエグい世界。

    『いとうちゃん』
    不思議の国のアリスに憧れて、秋葉でメイドになるために群馬から上京した女の子。
    心の不安定から、つい食べてしまって・・・

    『完熟』
    少年の日に見たピュアなエロティシズム。
    それは彼の中でフェチズムに変わり・・・

    『リアルタイム・インテンション』
    動画配信を生業とする、エム、ルーペ、クマ。
    三人組のテンポ良い会話がコミカルで心地良い。
    クマ、なにを言おうとしてるんだ?気になる。

    『拭っても、拭っても』
    あなた色に染まっちゃった女性。しかしこの男もひどいな。

    『オレンジの片割れ』
    心の中にオレンジの片割れがある。
    それがピッタリと合わさるのが運命の人。
    読み進むうち、それは単なる「赤い糸」ではないことを知る。
    奈津子が選んだ決断とは?

    ーーーーーーーーーーーーーーー
    ちょっと、昔の小川洋子さんを彷彿とさせます。

  • 松井玲奈の見方が変わった。
    アイドルを卒業後に女優として
    ドラマで見ることが多くなったが
    文章の表現が独特だけど、読み
    やすくて一気に読んでしまった。
    もう一作、短編があるけどまた
    違う作品を書いて欲しい。

  • 知名度が高い人の小説は、読む前にどうしても先入観があるので、ハードルが高くなってしまう。

    それでも、面白かった。

    誰かに薦めてもよいかな。

  • 装丁の大人っぽさと色遣いに惹かれて購入しました。まだ「好み」とまではいかないけれど、松井さん、今後も注目していきたい方です。

  • 彼女が元々持ち合わせていた感性と芸能活動の中で得た経験とが混ざり合い、著者だからこそ書ける7つの作品集に仕上がったようだ。

    恋愛にまつわる作品が目立つが、どれも人間の奥底に抱えている他人には見せれない思いを独特の表現で描いている。
    当たり前のようにオレンジを取り出す描写とかちょっとホラーだけどなんか好き。面白い。

    前向きな気持ちで終わる「拭っても、拭っても」、「オレンジの片割れ」とかが好き。


  • 食にまつわる短編集。
    なかなかゾッとする印象が強い作品たち。
    特に「ジャム」は衝撃。
    しばらくイチゴジャムを素直に見れなくなりかけた(笑)
    アイドル時代や女優の姿は知っていて、華やかなイメージがある作者の中身に、こんなドロッとしたものが!
    ということ自体も、なかなかの衝撃(笑)
    でもなぜか冷たくはない、むしろ温かみがある不思議な感じ。
    今後も楽しみです。

全81件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

役者。1991年7月27日生まれ。愛知県豊橋市出身。著書に小説『カモフラージュ』『累々』(ともに集英社)がある。


「2021年 『ひみつのたべもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

松井玲奈の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×