梟の来る庭 めおと相談屋奮闘記 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087442960

作品紹介・あらすじ

幼馴染のために夫婦が奮闘する話、珍しい鳥をめぐる話、そして波乃の世話係モトとのお別れ。喜怒哀楽が詰まった青春時代小説。

感想・レビュー・書評

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  • よろず相談屋シリーズで10巻目、途中でめおと相談屋になって5巻目。マンネリ感は否めないが、それなりに題材を工夫して物語を繰り広げている。友人の恋、庭に来る梟との交流(信吾は動物と喋れるから)、警護を引き受けた話、波乃付の女中モトの話の4つ。ストレートな相談事じゃない話ばかりかな。信吾と波乃のいい人過ぎて、道徳ぽいところが鼻につくが、まあ面白い。モトの壮絶な過去も、伝聞だけで済まして穏やかに仕上げている。深刻にはしないんだよね。

  • 現代ぽい会話なのに話題は江戸時代。しかもユーモアのセンス抜群かつシニカル。さながら江戸の「かわら版」「戯作」はこうだった?それとも講談本?クスリとさせる会話多々。ホロリ、ジーンとなる場面も忘れていない。

    主人公信吾の「よろず相談屋」波乃と結婚して「めおと相談屋」シリーズ物の最新版。キャッチフレーズの「どこから読んでもOK」は本当。短編4つ。

    特に表題作「梟が来る庭」はお江戸の趣味世界「鳥」シリーズになっていて博覧強記。土地勘(江戸切絵図参照)、料理献立、神社仏閣、行儀作法、階級論、恋愛論と盛りだくさんなのに嫌味がないんだなあ。

    「蚤の涎」は痛快だった、ほんとすっきりした。「泣いた塑像」の最後モトさんに贈った百人一首は次作で明かされるのかな、なんて期待している。

  • 202110/よろず相談屋繁盛記シリーズ・めおと相談屋奮闘記シリーズ既刊全10作まとめて。毎回平積で新刊を見かけ気になっていたので読み始めることに。最初は、設定てんこ盛り(幼少時に大病、生き物の声が聞こえ会話できる、老舗料理店の長男、鎖双棍の使い手、相談屋と将棋会所を経営)だな~と思ったけど、主人公は勿論、登場人物達が生き生きと描写されているのでこの世界に入り込んで楽しめた。最初は使い物にならずぼんやりしてた小僧の成長ぶりやちゃっかりぶりも微笑ましい。相談事の内容や解決手法等、物語としてパッとしないものや偶然の産物だったりも多いし、自分の好みではない話(将棋会所で皆が艶話や与太話をただただ話すだけとか)もあるし、時代物とはいえ書いている今の時代にそぐわない描写や設定も感じるけど、総じて面白かった。「主人公と話してたら何故か解決してしまう」のと同様、とらえどころのないなんかわからない面白さもあった。

    よろず相談屋繁盛記シリーズ(なんてやつだ/まさかまさか/そりゃないよ/やってみなきゃ/あっけらかん)
    めおと相談屋奮闘記シリーズ(なんて嫁だ/次から次へと/友の友は友だ/寝乱れ姿/梟の来る庭)

  • 作者 野口卓氏の「軍鶏侍」を読んで、武士としての父と息子のとても素敵な関係を読みながら、この本もと、思って、読み出したシリーズの めおと相談屋奮闘記・・・

    作者は、動物好きなのであろう。
    題名の「梟の来る庭」においても、梟の言葉(?)が、理解出来る事になっている。
    きっと優しい人物なのだろう・・・・それが文中の主人公でも表されている。

    4話からなるのだが、どれも、時代小説の中で、現代的な事の方が、多いように思われる。

    最後の「泣いた塑像」では、波乃のお付きのモトの出自が、わかるのであるが、春秋堂の夫妻の心遣いが、とても、素晴らしい。
    そして、武家の姫さまであったのに、奉公人として、お仕えしたモトさんも 人の出来た人だと・・・・
    権六さんと会わずじまいであったのだが、それでよかったのか、とも思えてたが、やはり、ここでも身分の違いで、身を引く権六の姿が、良いのかも・・・と。

    ある皇室のお姫さまとの縁談に身を引くことなく奪って行った庶民の人もいるのに・・・・なんて、事を考えてしまいながら、本を閉じた。

  • よろず相談屋繁盛記シリーズ5巻に続く、主人公の信吾が結婚して始めた、めおと相談屋奮闘記シリーズ5巻目の本書。

    今回は、今まで信吾と関わりのあった登場人物が関わり、この頃話題になっていた長崎屋という、外国人が逗留する旅籠にまつわる話題。
    中でも珍しい鳥の話題。

    そして、波乃の実家春秋屋から、料理も習っていなかった波乃に伝授しながら女将としての采配を教えようとついてきた女中モトの秘密が判明する。

    誰しもがそれぞれに物語を背負っており、それぞれの人生を生きている。
    交わる人も交わらずに終わる人もいる中で、互いに何かを共有しあい感化されて生きてゆく。

    筆者が思う、人々の苦悩も併せ持つ人生の考え方ひとつでどんな未来も違っていったり、感謝する心や信じる心、言葉を素直に受ける心など生き方そのものを語っている。

    人とは違う、だけどそれを楽しむ。
    そこには想いを突き詰めていくことで、時には壁にぶち当たり苦労も拾うが、それも含めて人生の彩りという哲学が漂う。

    面白くて、ほろりとし、そして感銘するそんなシリーズ。

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著者プロフィール

1944年、徳島市生まれ。さまざまな職業を経験し、ラジオ・ドラマ脚本・戯曲を執筆。1993年、一人芝居「風の民」で第3回菊池寛ドラマ賞を受賞。日本脚本家連盟会員、日本放送作家協会員。2011年、『軍鶏侍』で時代小説デビュー。同作で歴史時代作家クラブ新人賞を受賞、同シリーズにより多くの時代小説ファンを獲得。ほかシリーズに「ご隠居さん」「手蹟指南所『薫風堂』」「新・軍鶏侍」「よろず相談屋繁盛記」「めおと相談屋繁盛記」など、単著に『からくり写楽 蔦屋重三郎、最後の賭け』など著書多数。演劇にも造詣が深く、小説、戯曲、芸能、映画、音楽、絵画の多ジャンルでのシェイクスピア派生作品を紹介した著作『シェイクスピアの魔力』がある。

「2022年 『逆転 シェイクスピア四大悲劇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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