8050問題 中高年ひきこもり、七つの家族の再生物語 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087443110

作品紹介・あらすじ

推計61万3千人。深き苦悩を見つめた、
希望と救いのノンフィクション。

「8050問題」とは、80代の親が50代のひきこもりの子を抱えている家庭、そしてそこから派生する問題を指す。
1990年代後半から顕在化してきた若者のひきこもり問題が、解決せぬまま長期化。
親が高齢者になるとともに当事者が中高年に達し、今、深刻な社会問題として浮上してきている。
本書では、当事者や家族、支援者に密着取材。
その現状や心理をリアルに描写する。彼らはどこでつまずき、何によって光を見出したのか。
その格闘の姿を伝える、希望と救いのノンフィクション。

●山田ルイ53世さん(漫才師「髭男爵」、6年間ひきこもり) 激賞!

本書で描かれるのは、7つの家族の物語。皆一様に、“普通"から滑落した人々だ。
そこからの再生、“ルネッサンス"の物語でもあるが、その歩みはあまりに弱々しく、輝かしいものではない。
しかし、長い間「社会と関係ない人間」だった筆者には、痛いほどわかる。踏み出した一歩の偉大さも、それが半ば奇跡だということも。
彼らを知れば、「8050問題」はすべての家族に起こりえるリアルな“将来"の1つであり、にもかかわらず差し伸べられる手の少なさに愕然とする。
かつて“当事者"だったことを盾にとり、不謹慎な物言いをお許しいただこう。
本書は「面白い読み物」。
絶妙な距離感で取材対象と接し続けた著者が、丁寧かつ情熱的に書き上げた一冊……「ひきこもって」一息に読み終えることをお勧めする。

【著者プロフィール】黒川祥子(くろかわ しょうこ)
ノンフィクション作家。福島県出身。東京女子大学文理学部卒業。
2013年、『誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち』で、第11回開高健ノンフィクション賞受賞。
近著に『子宮頸がんワクチン、副反応と闘う少女とその母たち』『「心の除染」という虚構 除染先進都市はなぜ除染をやめたのか』
『県立! 再チャレンジ高校 生徒が人生をやり直せる学校』『PTA不要論』、共著に『WHO I AM パラリンピアンたちの肖像』。
橘由歩名義で『「ひきこもり」たちの夜が明けるとき 彼らはこうして自ら歩き始めた』がある。

感想・レビュー・書評

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  • ノンフィクション作家、黒川祥子さんの、8050問題についての本です。

     8050(ハチマルゴマル)問題とは、ひきこもりの50代を80代の親が世話するという社会問題のこと。
     その背景には、保健所の減少があり、ひきこもりの根本原因があり、家族問題があり……と、ひきこもりは「本人」だけが問題で起こることではない、ということがとてもよく分かります。

     少し前であれば、ひきこもりは「本人に問題がある」と言われていました。なかには「精神的に未熟だから」「本人が怠惰だから」という意見もありましたが、この本を読むと、本当の実態が良く見えてきます。
     親の依存が激しくて自分を出すことが一切許されなかった人、家族まるごと共依存になってしまっている人、いじめが原因で社会への疑念が拭えず苦しむ人、それぞれ違った苦しみを抱えて、どうしようもなくなってひきこもるしかなかったのだと分かります。

     個人的に思ったことは、8050問題の本当の病巣は、80代男性の気質、その時彼らが生きていた社会と今の社会との乖離が凄まじいことではないかということです。
     強くなければ男ではない、立派な大人になる、経済を支える、家族を支える、などなど……その当時の男性を育てた社会的なスローガンが、今となっては全く違っていて、彼ら80代男性自身、もう今更考え方を変えることも時代に適応することもできずにいるのでしょう。
     しかしながら、その皺寄せは弱く繊細な娘、息子、そして妻にのしかかっている、ということも事実。
     変えられない考え方で家族を追い詰め、息子を責め続ける姿などは、「あなたが彼(女)をひきこもりにしたんじゃないの?」「あなたが悪いのに、なぜ自分を改めるつもりが微塵も無いの?」と言いたくなるほどです。

     社会の歪み、その皺寄せは弱いところ、少数派、物言えぬ人たちの方へ押し寄せて来ていて、そのなかの一つが「長期化するひきこもり」なのだと思います。

     冒頭で著者は「これは解決策ではなく、自分が体験した7つの家族の物語」というふうなことを書いておられますが、今もしこの問題の渦中にいて、この本が気になる人がいれば、読んでみることで少し違ったものが見えてくるのではないかと感じました。
     ひきこもりは被害者である、ということが、もっと世界に浸透したら良いなあと思いました。

  • ノンフィクションですので、現実の家族のお話なのでしょう。

    日本中で実際には知られてはいないだけで、もっとたくさんの苦しい惨めで悲惨な家族たちが存在してしまっているのでしょう。

    どうしても自分と他人を比べてしまいます。
    高齢化しているひきこもり当事者たちは、すべてにおいて「今さら」という気持ちが非常に強い。もうどうしようもない、と思っている。

    P.178「自分が一番ひどいとか、こんなダメな奴はいないとか思っている人もいるかと思います。僕も何回もそう思いました。でも、そんなことないんです」
    あなたに似た人はたくさんいる。あなた一人だけではなく、同じように、「自分はできないだらけの中にいる」と考えている人は……今はわからないだろうけど、きっとたくさんいる。


    ひきこもりを抱える家族たちはどうなるのでしょうか。
    ひきこもり当人たちでさえも現代人として大きく取り残されてしまっているのに、高齢の親御さんたちもまた、さらに現代人としての技術や文化、学力から大きく取り残されていく。

    完全な日本人社会の2極化。
    ひきこもりと家族たちと、そうでない日本人たちとの。

    中高年ひきこもり問題は、現代日本人が現在進行系で直面している大問題です。
    ですので、ある程度社会生活を営むことができるようになれた元中高年ひきこもりの方とご家族の人たちも現在進行系です。

    できれば元中高年ひきこもりからの脱出例を知りたいです。

  • 様々なケースがリアルに紹介されている。
    対社会的な繋がりが少ない、家族に依存している状態を変えるのはなかなか難しい。そもそも家族に問題がある場合も多い。
    依存先を増やす事が自立に繋がる。
    まずは現状をありのままにみつめ、人間関係を客観的にきちんと認識する所から何かがはじまるのかもしれない。

  • 色々な家族がいるなぁ…と知れて興味深かったですねぇ…社畜死ね!!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    中年のひきこもりを抱えている家庭の共通項? と言えば親が金持ちなことですな…だからこそ、引きこもり一人抱えてもそんなに家計には響かないし、まあ、余裕があるってことですなぁ…。

    しかし、金稼げて社会的な地位も高い親だからこそ、子供を自由自在にしたくなるのか、ああしろこうしろと口やかましく言うみたいですね…放置、ということができないんですな…。

    それで子供は親の言いなりになって…しかし、心の中では反発心もあって…中年になっても家族の問題で頭を抱えている人らがたくさん居るようですな…。

    まあ、そんなアレでこの本に出てきたような家族は今の世の中、多数居るんでしょうけれども、そして、引きこもりの問題とかもう何年も前に出てきているんですけれども…国は本腰入れて取り組む気無さそうなんですなぁ…。

    先が思いやられますねぇ…社畜死ね!!

    ヽ(・ω・)/ズコー

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著者プロフィール

黒川祥子(くろかわ・しょうこ)
ノンフィクション作家。1959年福島県生まれ。東京女子大学卒業後、弁護士秘書、ヤクルトレディ、業界紙記者などを経てフリーランスとなる。おもに事件や家族の問題を中心に執筆活動を行っている。2013年、『誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち』(集英社文庫)で第11回開高健ノンフィクション賞受賞。その他の著書に『熟年婚 60歳からの本当の愛と幸せをつかむ方法』(河出書房新社)、『「心の除染」という虚構 除染先進都市はなぜ除染をやめたのか』(集英社インターナショナル)などがある。


「2018年 『県立! 再チャレンジ高校 生徒が人生をやり直せる学校』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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