- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087444759
作品紹介・あらすじ
「この世から逃げたくて仕方がない。
それと同じくらい、この世に触れたくて仕方がない」(本文より)
駆け落ち、逃亡、雲隠れ。
行き詰まった人々が、ひととき住み着く「家」を巡る連作短編集。
家族を捨てて逃げてきた不倫カップル――「はねつき」
逃亡中のヒットマンと、事情を知らない元同級生――「ゆすらうめ」
新興宗教の元教祖だった老齢の婦人――「ひかり」
親の決めた結婚から逃げてきた女とその妹――「ままごと」
子育てに戸惑い、仕事を言い訳に家から逃げた男――「かざあな」
■『さいはての家』の刊行に寄せて、著者メッセージ■
それから、町で彼(もしくは彼女)の姿を見た者はいない――。
こんな一文を最後にいなくなる脇役の人、いますよね。登場人物が多いドラマティックな長編の中盤、なんらかの騒動の後にほんのり印象的なセリフを残して物語から退場する、あの人たちです。
子供の頃から、彼らが物語から退場するたび「どこに行ったんだろう」と気になっていました。居づらくなって、罪を犯して、もしくはなにかに反発して、それまで所属していた場所を捨て、他の土地へ向かう人たち。物語の作者が退場していく彼らではなく、その場に残る他の誰かを主人公に据えているということは、きっと彼らのその後は大してドラマチックでも、面白いわけでもないのだろう……と自分を納得させていた時期もあったのですが、本当だろうか。
ここではない場所へ向かった彼らは、もしかしたらとても個人的な冒険を経て、他の誰も見たことがない、静かで自由な場所に辿り着いたのかもしれない。そんな予感から、五つの物語が生まれました。
それぞれのさいはてを、見届けてください。
【著者略歴】
彩瀬まる(あやせ・まる)
1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で第9回「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。18年『くちなし』で第5回高校生直木賞受賞。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『やがて海へと届く』『不在』『珠玉』『新しい星』『かんむり』など。
感想・レビュー・書評
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古い借家に住み着く訳アリの人たち。
そこでの生活が内容が主だが
それぞれの心との戦いが秀逸。
1回読んで共感というのは難しいかもしれないけど
考えさせられる内容ではある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
古い借家
色々なものから逃げてきた人たち
庭
古い借家に住まう人たちを巡る
5話連作短編集
何かから逃げて
借家に行きついた人たちの闇に
借家の大家や不動産屋といった
いわゆる普通の人たちが
一筋の光をさす
全体に
不安、暗さ、絶望を感じつつも
普通の人が放つ光に
安堵や希望も感じられる
バランスが見事な作品です -
初読み作家。5話連作短篇集。
古い借家には、安住の地を求め、ワケありの人たちが移り住んでくる。
家庭がある年上の常連客と駆け落ちした女。新興宗教の元教祖など。
話始めは明るい兆しを感じるが、読み進めると胸がざわつき、落ち着かなくなってくる。
その家には、今までフタをして直視してこなかった本来の自分を、浮き彫りにする魔物が住んでいるのかも⁈
大家さんや、隣の高齢者ホーム、不動産屋の真っ当さと明朗さとの対比がおもしろい。南向きの明るい庭が、逃げてきた現実と向き合う光となっているように感じた。『ままごと』が1番好み♡ -
「人生に行き詰まり、逃げてきた人ばかりが住み着く」とある古い借家。
およそ共感出来そうにない登場人物が出て来るのに、ふとした表情、ワンシーンに心を持っていかれている自分がいる。
家って長く居続けるものというイメージが自分にはあるのだが、この作品の舞台となる家は、変化をするまでの一時的な居場所という感じがする。
持ち主を変えながらも、生きてきた時間の重なりは増えていく一方というか、読んでいる方も、この家の持つ重さから離れられなくなってしまう。
お気に入りは「ゆすらうめ」。
これも、人殺しをしてしまった元ヤクザと、学生時代の友人であるタクシーの運転手が、偶然再会し、一緒に逃亡した先に「家」が待ち構える。
タクシーの運転手の母が、認知症を患っており、グループホームから一時帰宅するくだり。
それまで良いところのなかった元ヤクザの傾聴が、なんだか、上手くて。
人と人とのテンポって面白いなと感じた。
そこに、善や悪はない。
でも、誰かと意思疎通が叶うことで、開けていく。
終わり方も好きな一編だった。 -
ひとつの家を舞台にした、少しホラー強めの短編集。なかでも、はねつきは暴力性とホラーと美しさとが同居していて、のめり込んだ。
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これはこれで いやいややっぱり好きでは無いな、やがて海へと続くを読んでから追い求めていたから尚更だった。明と暗の暗しかないから、再生もなかった筈だよ、ラストの当たり前に会社を敬い当たり前に会社人間で世の中1番大事な奥さん子供に2か月会わず嫌だけど仕方ない週2回の飲み会に参加するとか 考えられない 大家が逃げてよかったと言うけどあの家こそ逃げないとダメだって事 ほぼ犯罪でとりわけ宗教が嫌だよ、身近にあるから尚更嫌だよ、何であんなのが存在するの
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綺麗な装丁からは想像ができない程
重くて切ない短編集でした。
一つ一つが深くて読み応えがありました。
「ままごと」が比較的読みやすく、共感できた。 -
わけありの者たちの不穏な日常が 淡々と流れていくのだけど、読んでいて不快にはならなかった。
なんじゃ、このクズはと思えるような人物もいたけれど、このような人生もあるんかなぁ、と思うと 自分の日々のあれこれはなんと平和なものだろう、とどこか幸せな気持ちになったりした。