- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087445374
作品紹介・あらすじ
「わたしは欠陥品なのかもしれない。自分が大人になれるって、無条件で思い込めるみんなが、羨ましい」(本文より)
中学校の「図書室」を舞台に、クラスへの違和感や未来の不安、同級生に対する劣等感など、思春期の心模様を繊細に描き出す全六編の連作短編集。
【著者略歴】
相沢沙呼(あいざわ・さこ)
1983年、埼玉県生まれ。09年『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞し、デビュー。11年3月「原始人ランナウェイ」が第64回日本推理作家協会賞(短編部門)候補作となる。18年『マツリカ・マトリョシカ』が第18回本格ミステリ大賞の候補に。19年『medium 霊媒探偵城塚翡翠』が国内ミステリランキングを席巻し、大ヒット。その他の著作に『雨の降る日は学校に行かない』『小説の神様』『invert 城塚翡翠倒叙集』『invert II 覗き窓の死角』など。
感想・レビュー・書評
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「わかりみが深い」「つらみが深すぎる」
本作『教室に並んだ背表紙』は青山美智子さんの『お探し物は図書室まで』の優しさと、武田綾乃さんの『その日、朱音は空を飛んだ』の辛さを併せ持ったような、中学生の女の子達の自分と他人の距離感に悩む姿が6編入った連作短編集でした。
著者が『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』の相沢沙呼さんなのでミステリ作品かと思ったのですが、スクールカーストに悩まされながら生きる青春を描いた作品でした。
本作では学校図書室の司書として「しおり先生」が中学生の女の子達の支えになる存在として描かれていますが、最後の短編にして表題の『教室に並んだ背表紙』で、しおり先生が「しおり」先生である由来を知った時、あそこが伏線だったのねと少しだけミステリっぽい気持ちに浸れました。
作中で印象的だった言葉に、
「助けてって声をあげることを怖がらないようにした。そうしたら、変わり始めたの」p298
とあり、ちょっぴりウルッときました。
私にも『あの時』は沢山ありました。声をあげることは容易ではなく、不安に打ち勝つ勇気を充電するのに多くの時間が掛かりました。『あの時』の自分は救えなかったけれど、これから同じ想いをした子に巡り会った時は、「助けて」の声に応えてあげられる大人でありたいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
まだ2話目までだけど、
中学生とか学生とか、
陰キャで居場所がないとか
読書で現実逃避とか、
あるよねー、わかりみが深い。
やっぱ誰しも
居場所や拠り所になるものって
絶対必要だと思う。
特に思春期で周りからの評価が気になる時ってのは
ほんと辛いのよね。
読書でも友達でも先生でも家族でも、
とにかく何かしら頼れるものあてにできるものがあれば、なんとかしのいでいける。
さて中学生におすすめできる
恋愛でも部活でも友情でもない小説、
なにがあるかなーと考えるんだけれど、
なかなか難しいね。
家族ものならいいなら
重松清かな。東野圭吾もいけるかな。
芥川もいいかな -
学校の図書館と司書の先生を中心に繰り広げられるお話。
思春期特有の悩みや、不安が繊細に描かれていて胸が詰まった。
学生時代の自分と重ねてしまった部分も多かった。
学生の頃は学校が世界の全てだと思っていたけど大人になれば視野が広がり悩みなんて些細な事だった感じることがいつかくる。
けれどそれを理解するには難しいし友達や大人のサポートは必要。
とても考えさせられる内容だった。
あっと驚く仕掛けもあり、少し読み返した。
学生はもちろん、同じ年頃のお子さんをもつ親御さんにもすすめたい一冊。
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中学校の図書室を舞台に、6人の少女たちの心を描く連作短編集。自分の心という部屋に閉じこめられていた問題や葛藤が、本を開くように世界もまた拓かれていく青春群像劇となっている。
とてもささやかな物語で、読み終わった後にほんのり胸があたたかくなる。作中で語られた「結末から読み手がどんな物語を紡いでいくか」という話は、感想文で課題にしたら面白そう。相沢先生ということで、ミステリの仕掛けも隠し味に。個人の物語が繋がり合っていく清々しさが梅雨明けの夏のよう。
一番好きなのは『やさしいわたしの綴りかた』。読書嫌いなあかねは、クラスメイトが捨てた感想文の下書きを拾った。これを写せば終わりじゃん!と思いきや、どの本を読んだかわからず途方に暮れる。意図的に「マ?」など流行語が使われているが、「どうしよ平八郎の乱」は流行ってるのか──?!「エモい」など内包する意味が広い言葉から、自分の伝えたい思いを拾い集めていく。ここでアシストする司書のしおり先生は上手いなと。こういうことが感想文を通して自分でできると、自分の心にある伝えたい感情を相手に伝わる言葉に変える練習にもなるんだよね。
人という本を背表紙だけで判断したり、勝手にレッテルを貼ってしまうのではなく、手に取って読んでみること。それが読まれたい本の孤独に気づくきっかけだったりする。そして、自分の物語も同じように大切にする。読んでみて合わなかった本は棚に戻せばそれでいい。合わない相手の物語に自分が何か書き込んで変えてしまうことはルール違反なのだ。あくまで相手の物語は相手が書くものなのだから。
スクールカーストやいじめ描写があるので、そこが苦手な方は注意。あと、作中に現実の作品が登場して紹介してくれるとか、そういう話ではないのは少し残念だった。でも、例のあれは何か元ネタがありそうだけど──。
ぼくは小学生の頃にいじめに遭い、担任の先生から薦められて図書室に通い詰めていた時期があったなあ。貸出カウンター脇に江戸川乱歩の少年探偵団シリーズが棚でドーンと置かれていた。あの棚は冒険への扉みたいで忘れられない。 -
教室には居場所のない女の子たちが、図書室で過ごす中で、司書のしおり先生や、本と出会い、一歩を踏み出す連作短編集。
作家さんを分かって購入したわけではなかったので、『medium』の人かと分かり、驚く。
読んだ後に解説を読むと、とても丁寧に次の作品へと誘ってくれる。良き。
ネイリストになりたいというアイルーが、友達の描いたイラストの爪にネイルを塗るシーンが好き。
趣味やグループで序列が決められていた、あの頃、なんでそんな、しょうもないことを信じるしかなかったんだろう。
その序列でしか、「価値」を見出されなかった人のための世界で、数年間私は生きてしまった。
壊したいと今なら思うけれど。
どんな方法があるんだろうか。知りたい。 -
学校の図書室が舞台。それは読みたくなる‥‥でも自分が涙したときはビックリした。短編ごとに泣いていた。
自分も学生生活の中で辛い葛藤・戸惑い・苦しかった事あったなと色んなことを思い出し、重ねて読んでいたこともあり じんわりと心が苦しく切なくなった、と同時に温かな気持ちにもなれた。
司書のしおり先生のような優しさを持った大人や友人が身近にいてくれたら、逃げてもいいんだと受け止めてくれる人が1人でもいれば 生きやすくなるのかもしれないと、しみじみ思いました。