小説 田中久重 明治維新を動かした天才技術者 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087450460

作品紹介・あらすじ

幕末の九州で「からくり儀右衛門」と呼ばれた男がいた。その名は田中久重。天性の才能を生かし、精巧な「からくり人形」を生み出した。「人の役に立つ技術でないと意味がない」という思いから、灯具、万年時計など、生活機器を作り出し、明治維新後は銀座に工房を設立、後の東芝の祖となる。歴史の波に揉まれながら「技術大国ニッポン」の基礎を作った男の生涯を描く、著者渾身の歴史小説。

感想・レビュー・書評

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  • 評価に悩む。

    良くない点は主に3つある、一つ目は読み辛くはないが混乱する文章であること。タイトルにこそ小説と銘打ってあるが、実体は小説の他(著者の)エッセイと評論が渾然一体となっている。小説を期待して読むと相当面食らうと思われる。

    加えて、二つ目に、久重の生涯を周辺の史実から描写しようとするがあまり、脱線しすぎて関係が無さ過ぎる記述が目立つ。久重だけにフォーカスをあてて読書をするなら、飛ばし読みが推奨される。

    良くない点三つ目は後述するとして、それでも本書を読み終えて、とても面白かったと言えるのは、そっくりそのまま同じ点になる。

    ジャンルの特定できない文章は、慣れさえすれば、それ自体は読みやすい。そして、久重の純粋な人柄を小説という形態のみで描写すれば、かなり嘘くさく感じてしまった気はするため、総じて悪くはない文章表現だという結論に至る。

    また過剰ともいえる脱線した史実とその評論は幕末からの歴史に疎い私にとっては興味深い内容も多く、これも久重が生きた時代の空気を捉えるのに重要な情報だと言える記述も多いように感じた。特に、江戸から明治に変わる改変期に、周囲の需要変化によって久重の発明がからくりから工業製品へと変化が訪れる様子は歴史のムーブメントを抑えなければ正確に描けないはずだ。

    そう考えると、久重の一生を丹念におった"読み物"だと肯定的に捉えられなくもない。youtubeなど様々なネットメディアが発達した今でも久重に関する情報は少ないので、私にとっては貴重に感じたため、その意味で高評価をつけさせていただいた。

    ーと、した上で、後回しにした良くない点三つ目を添えたい。これこそ不満でしかないが乱文がすぎる箇所がある。どのページだったか忘れたが、「理由は二つある。一つ目はー」と書き出しておいて、二つ目の理由が一向に出てこない箇所があったり、話が飛ぶのはいいが接続語が無さすぎて唐突な印象を持ったりなど、「どうしたいんだよ!笑」と突っ込みたくなる箇所が散見される。内容自体に問題はないので細かいことは普段気にしないようにしているが、あまりに多いと扱うものが歴史なだけに信頼に欠ける印象になってしまう。著名な文筆家なので、あまり大きな声で言えないが、もう少し推敲していただきたかったのが本音ではある。

  • 幕末の九州で「からくり儀右衛門」と呼ばれた男がいた――。それは、東芝の創始者・田中久重。蒸気機関や大砲を研究、開発、近代日本の科学技術の先駆けになりました。ただの「アブナイ奴」だった若き日の姿から、話は始まります。

  • 小説とあるので史実と違う想像の部分もあると思いながら読みましたが、史実は根拠が述べられ、創造部分はそう思われる表現が使われていた。しかし久重翁の精神力の強さには感心させられます。

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著者プロフィール

歴史作家。東京都知事秘書、広報室長、企画調整局長、政策室長を歴任。退職後作家活動に専念。人間管理と組織の実学を歴史の中に再確認し、小説・ノンフィクションの分野に新境地を拓く。『上杉鷹山』『小説徳川吉宗』など著書は300冊を優に越える。

「2023年 『マジメと非マジメの間で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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