- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087450781
作品紹介・あらすじ
戦況も敗色濃厚な昭和20年夏、3人の男に召集令状が舞い込み、北の孤島へ。45歳の片岡。4度目の召集となる歴戦の兵・鬼熊。若き医学生・菊池…。戦争の理不尽を重層的に描く渾身の長編。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
綺麗に書くなら戦争の悲劇が、汚く書くなら戦争のクソッぷりがよく分かる小説です。
年齢や身体の状況などで、本来であれば招集されるはずのない人々に、赤紙が渡され否応なく戦争に巻き込まれていくのです。
不意の招集に衝撃を受けるのは、兵士以上にその家族です。特にこれまで何度も招集に応じ、指を失っているにも関わらず、再び赤紙を渡された鬼熊とその年老いた母。二人のそれぞれを思う心情と、それに関わらず引き裂かれる場面は、戦争の理不尽さや不条理さを、改めて示していると思います。 -
太平洋戦争末期の話。
思っていたよりも穏やかな空気が流れている作中。
中、下巻でどうなるか。
このまま穏やかにと願うけれど、きっとそうはならないのだろうな。 -
上・中・下巻、一気に読みました。寝不足です(^^;)。岩手県の方言が分かるだけに、切なかったです。登場する人物の心情が一枚の布にぎゅっと織り込まれて、胸に迫ってくるようでした。私の祖父の兄は南方へ行きました。祖父は青森の三沢だったようですが、病気が見つかり、戦地には行かなかったようです。2人とも帰ってきてくれました。祖父たちの世代、ほんの数十年前に起きた戦。すっと背が高く優しかったおじちゃんと、祖父。今は亡くなっていますが、思い出すと切なく、「ありがとう」と言いたいです。歌は歌わない母ですが、賢治の「星めぐりの歌」は私たちが子どもの頃から、大きな声で歌ってくれて、メロディーが私も分かりましたので、本の中に歌が出てくると、涙が出ました。
-
上巻を読みきりました。戦時中の小説をいくつか読みましたが、いろんな立場の人をこんなにたくさん一度に描いているものはあんまりない気がします。おもしろかったです。鬼熊かっこいい!
上半期も終わるので、ブクログの冊数を稼ぎたいと思ってたのに、なぜこんな厚い本に手を出してしまったのか。長い。まさに終わらざる夏です。中巻に続く。 -
読んでる途中、何度も泣いた。
-
コロナ緊急事態宣言で巣ごもり状態での読書。
昭和20年6月下旬、既に敗色濃厚の処から話が始まる。
これから中、下巻に向かって波乱が起こってくるだろうが、上巻では登場人物の紹介に多くが割かれている。
悲惨を予感させるものは、残される者の姿。
匂いまでを感じさせる描き方に引き込まれる。