安楽病棟 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087456233

作品紹介・あらすじ

様々な症状の老人が暮らす痴呆病棟で起きた、相次ぐ患者の急死。理想の介護を実践する新任看護婦が気づいた衝撃の実験とは? 終末期医療の現状と問題点を鮮やかに描くミステリー!(解説/備瀬哲弘)

感想・レビュー・書評

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  • 2020年4月10日、読み始め。

    2020年4月12日、読中感。
    戦時のことが、けっこう詳しく書かれているので、著者について調べてみた。
    1947年1月生まれなので、戦後生まれ。
    戦後生まれでも、身近には戦時に生きていた方々が多くいらっしゃったはずなので、話を聞いたりされたのだろうか。

    2020年4月16日、読了。

    痴呆病棟での相次ぐ患者が急死する。
    安楽死を扱った小説で、けっこう重い内容である。

    オレゴン州の安楽死について調べていたところ、次のような記事があった。

    ---引用開始---

    1998年3月24日、オレゴン州に住む余命2ヶ月と診断された80代半ばの乳がんの患者が、医師の処方した致死薬を自分で飲んで死亡したことが報じられた。彼女は、医師による自殺幇助を容認するアメリカで最初の法律「オレゴン州尊厳死法」に基づいて、安楽死したのだった。

    ---引用終了---

    つまり、1999年に『安楽病棟』が書かれた背景には、その前年の1998年のオレゴン州の安楽死が影響していると思われる。

    • やまさん
      seiyan36さん♪こんばんは。
      私は、seiyan36さん♪の感想を見ています。
      そして、「読了」したものには、「いいね!」を押すよ...
      seiyan36さん♪こんばんは。
      私は、seiyan36さん♪の感想を見ています。
      そして、「読了」したものには、「いいね!」を押すようにしています。
      これからも、感想を楽しみにしています。
      やま
      2020/04/19
  • かなり分厚い文庫でしたので 少し躊躇しました。
    初めの方は 色々な老人側の 話しが書かれてあって
    いつ ミステリーになっていくのだろうと 
    ちょっと挫折しそうになりました。

    途中から 看護師目線になって行くのですが
    突然死が 出てきましたが 果たしてこれが どう 
    ミステリーになるのかと思っていました。

    実際の介護現場が とてもリアルに表現されていて
    小説というよりも ドキュメンタリーという風に思えました。

    ミステリーだから 突然死は 犯人がいるんだろうと思いながら
    誰でも犯人になりうる 場所で 最後に誰が犯人だろうと
    読み進めて 本当に最後の最後で やっと 犯人が解りました。

    長かったです。

    でも これは ミステリーだけど 実際にありえそうな
    話しでした。

  • 懐かしい、帚木蓬生さんの作品、読了。
    閉鎖病棟は大昔、高校生くらいの時に読んだ気がする。
    そして貫井徳郎さんの作品と出会ったのもこの頃のはず。

    閉鎖病棟は、最近映画化されていて…見に行きたかったけれど、
    感染症の関係で見送ってました(涙
    でも、何か機会があれば是非とも見てみたい。


    ミステリー、と書かれてはいるものの…特に謎な感じではないのですよね。
    作家さんは精神科医で、そのご経験が多分に盛り込まれています。
    さまざまな理由で痴呆病棟に入院してきた患者さんの病棟での生活を看護師の視点で描かれています。
    痴呆症と一口に言っても色々な症状があって、異食症、老人性健忘症、せん妄など…一人一人症状が違う。
    作品の中でその症状や、行動、発言、対応などがとても細かく描写されていて、病棟での看護・介護はとても大変なものだと改めて感じました。
    さすが、現場の方が書いた文章はリアリティがありますし、看護師の立場を借りて作家さんの患者さんへの思いが伝わってきました。

    ここで取り上げられているテーマは、安楽死・尊厳死。QOLではなくQOD(quality of death )の問題でした。
    医師とは本来は命を救う側ではあるが、安楽死の考え方が進んでいるオランダでは、積極的に命を奪う選択をする立場になってきているそうです。
    救急の場面で使われるトリアージを、患者の状態を見て平時に、しかも積極的に奪う方向で決めるようなものでしょうか。。
    そこに、患者の意思は関与しない。

    生きるということや死ぬということに関して、オランダの例を見る限りではありますが、国家や民族によってだいぶ考え方が違うものなんだと思いました。
    あとがきにありましたが、日本では古来、命は授かるもので、最後は召されるものでした。
    医学の発達によって、科学が命に対して介入できる余地が増え、それまでは諦めるしかなかった存在を生かせることができるようになった。
    それは、選ぶことができなかった選択をできる機会が増えたということ。
    逆に言えば、しなくてもよかった選択を迫られるようになってしまったということ。

    現代は情報や説明は多いほどいいという風潮にあるけれど、選択の幅を広げることは必ずしも自由度を広げることには繋がらない。
    むしろウヤムヤで選択がない方が、実際には自由だという場合もある。

    生物の本質は生きることにあり、子孫を、遺伝子を残すことにある。
    意志と身体は、いつも同一の選択をするとは限らない。
    遺伝子に組み込まれたプログラムはとても強大な支配力を持っている。

    答えはなかなか出ない問題ではありますが、緊急の場面ではない限り
    少なくとも医師だけの判断で決めるべきことではない、というのが作者の意見なのだと思いました。

    最近、娘が私の読んでいる本に興味を示すことがあり…ちょっと本は選んだ方がいいなぁ、と思いました。
    あ、この作品が、よくないという意味ではないです、念のため。

  • さっそく読んだのは、私も身近に終末を迎えんとしている老人に接しているからだ。帚木蓬生の小説は初めてで、それも興味があった。

    解説に「ノンフィクション風ミステリー」とある。言い得て妙。

    長寿国になった日本のいまやどこにでもある老人施設、病棟で、起こっているかもしれない終末医療の現実と問題点を、時にはルポルタージュ喜劇風、恋愛小説風とあきさせないミステリー小説仕立てで、内容は真剣、真摯。ぐんと引き付けられ読んだ。

    新任看護士の介護に燃える情熱とベテラン医師の終末医療の理想の追及(安楽死)との対決は、冷静に老人終末の問題点を掘り起こしてみせてくれた。重い重い内容ではあるが。

    さて、この小説は痴呆症にかかった老人病棟の話。もし頭がはっきりしていて身体が動けなかったら…。

    大たい骨骨折してしまったの私の97歳の姑は痛い、痛いとまだ寝たきりに近い。

    一応病院は退院して、老人ホームに併設されている保健施設のショートステイにはいれて、それはラッキーだったのだが、長い間自分のことは自分で身じまいしてきたえらさが、「両刃の剣」本人もまわりも苦労している。

    姑「長く生き過ぎたよ、、、」(といって食事の量を減らす、オムツが嫌で水を飲まないなど)
    みんな「そんなことないよ、長生きしてね」(というけど、施設に世話になっていても遠路見舞う労力的大変さ、経済的にもどうしょう?というのが本音)

    まったく終末介護の問題そのもの。

    人生85歳くらいででいいかなーと、ちょっと過激だけれどそう思ってしまう。

    死ぬのはきらいだけれど、でも85歳以上の年月を生きていたくない気がしてくる。母と姑とを観察しいると85歳くらいから健康に問題がなくても独立して暮らせなくなった、という実情をつぶさにみている。

    病気でなくても衰えによる身体の不自由はつらい。まして病気ならもっと不自由な生活に本人は希望がない。

    「これが何が楽しい?」という顔でみられると苦しい。気丈というのは自身が身動きできない時には周りが振り回される。やさしい気持ちも萎えてしまう。

    しかしまあ、そんな質問を受けて困った顔の私たちを見て、ぼけてはいないから少しは気遣ってくれるだけでも慰めであるかな、と思うには思うが。

    思うようにいかないのが人生なら受け入れるのみ、というちかごろの心境でこの重いテーマの小説を読んだ。なんだかシリアス過ぎた、でもけして嫌じゃなかった。

    一気にファンになった感。帚木蓬生の他の作品も読もうと思う。

  • メルカリ売却

  • 認知症になるならないに関わらず、老齢になると死を望む声が一定数は出てくるわけだが、それを受け入れて死の処置を施すのもそれはそれで問題が出てくる。認知症なら、老人なら、禁断の実験に使うことは許されるのか。人間の倫理観問題には決着がつかないから難しい。

  • 600ページの文庫本一気!

     古い本だ。最初に、認知症に至った患者さんたちの背景が、ひとりひとりていねいに記載される。次に、病院?施設?の日常がとても細かく紹介される。この部分だけでもひきこまれる。ヒロインの看護師さんの奮闘や正義感に共感する。

     かなり後半になってから事件が明るみになってくる。もちろん犯人を読者に隠すようなことはしない。誰が犯人かなんてすぐにわかる。テーマが謎解きにはないから、淡々とストーリーが進む。

     ラストはヒロインから犯人にあてた手紙である。犯人の主張もヒロインの正義感も正しいように思う。

     オランダの例とされる安楽死の考えかたとか、鈴虫とか、心に残るお話だった。

     でも、犯人がヒロインを殺害しようとは思わなかったと思うのに、唐突にそれが手紙に出てくるのは違和感あったな。


    '23.4.2再読
     親父を看取ってから読む。読後感が全く異なる。痴呆、今の用語で認知症を患うと人ではなくなるのか?動屍なのか?

     自身は脳が機能しなくなるなら自分ではないと思っている。よって人でないかどうか別にして、自分ではないと思う。安楽死は自身を含め最良の選択肢だと思う自分がここにいる。

     この本のテーマ、難しいな。ということで☆ひとつ上げておいた。

  • 長かったです。
    ミステリーかな?
    作者の考え方が伝わってきます。

  • とにかく長い。ひたすら痴呆の老人たちが出てくるので最後の数%を飛ばしたらそこにミステリーが凝縮されていた。そんな大したものではないけど。
    とにかく終始希望が持てない、安らかな死がいかに希望がとしか思えなかった。
    なんとか70以降になったら尊厳死を選択できる世の中になって欲しい。

  • 痴呆病棟の話。ほんのりミステリー。痴呆の症状も千差万別、その人ごとにケアの仕方を変え、気をつけなければならない。糞尿まみれな日常、綺麗事ではすまない世界。人の尊厳とは?機械に繋ぎまくってまで生かす意味とは?この人の作品は社会に問いかけるものがあって好き。

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著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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