オリンピア ナチスの森で (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087461909

作品紹介・あらすじ

1936年8月、ナチス政権下のベルリンで第11回オリンピックが開催された。ヒトラーが開会を宣言し、ナチスがその威信を賭けて演出した。その大会を撮影し、記録映画の傑作『オリンピア』二部作を生み出した天才レニ・リーフェンシュタール。著者は彼女にインタビューを試みる…。運命の大会に参加した日本選手団をはじめとする多くのアスリートたちの人生をたどる長編ノンフィクションの傑作。

感想・レビュー・書評

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  • オリンピックに興奮する事がなくなって久しい。

    何故か。その一つに結果や映像がすぐに容易く見聞きできる、つまり情報が多すぎるからである。
    4年間を待ち遠しく感じた幼い頃から、電子情報機器の発達はめざましい。
    情報は有難いが、多すぎると本番までにお腹いっぱいになってしまう。

    最も私自身が冷めた目で見る癖があるため、皆で感動するという言葉に嘘くさいものを感じてしまうのだが。


    レニ・リーフェンシュタールというドイツ人女性を初めて知った。是非次は映像を観たい。

  • ベルリンオリンピックの事なんも知らないから単純に好奇心を満たせてよかった。当時すでにマラソンの世界記録は2:30切ってたとか、高跳びにはまだベリーロールもなかったとか、バタフライが平泳の一種として取り扱われてたとか、面白い。マラソンで優勝した日本の選手が朝鮮人なのもすごく興味があるのでこのあたりについてももっと知りたい。戦前なんて大昔のような気がしてたけど、使われてたテクノロジーとかも思ったより近代的で驚いた。オリンピア二部作の監督のレニ・リーフェンシュタールにインタビューして迫る部分は価値があると思う。タイミング的にもこの時でないと書けないようなものを沢木耕太郎はよくものにすると思う。

  • 「沢木耕太郎」がベルリンオリンピックを描いたノンフィクション作品『オリンピア―ナチスの森で』を読みました。

    「沢木耕太郎」作品って、一冊読むと、また違う作品を読みたくなる魅力がありますね。

    ということで、『「愛」という言葉を口にできなかった二人のために』、『旅する力―深夜特急ノート』に続いて「沢木耕太郎」作品です。

    -----story-------------
    1936年夏、ナチス政権下のベルリンで第11回オリンピックが開催された。
    「ヒトラー」が開会を宣言し、ナチスがその威信を賭けて演出した。
    その大会を撮影し、記録映画の傑作『オリンピア』二部作を生み出した天才「レニ・リーフェンシュタール」。
    著者は彼女にインタビューを試みる…。
    運命の大会に参加した日本選手団をはじめとする多くのアスリートたちの人生をたどる長編ノンフィクションの傑作。
    -----------------------

    『オリンピア』の監督「レニ・リーフェンシュタール」とのインタビューを軸に、ベルリンオリンピックに出場した日本選手団の活躍や敗退、その舞台裏での苦悩、葛藤等を描いたノンフィクション作品です。

    本作品は以下の構成になっており、序章と終章は「レニ・リーフェンシュタール」とのインタビューが中心の内容、第1章~第8章は日本選手団のエピソードを中心とした内容になっています。

     ■序章 階段から
     ■第1章 炎は燃えて
     ■第2章 勝者たち
     ■第3章 敗者たち
     ■第4章 九千キロの彼方
     ■第5章 素朴な参加者
     ■第6章 苦い勝利
     ■第7章 故国のために
     ■第8章 氷の宮殿
     ■終章 階段へ


    「レニ・リーフェンシュタール」のインタビューも印象深いのですが、、、

    やはり日本人としては、当時の日本選手団の活躍や敗退を含めた舞台裏の方が印象に残りましたね。


    その中でも特に印象に残ったのは以下の五つ(六人)のエピソード、、、

    ○銀と銅のメダルを半分ずつ張り合わせたメダルを作った、棒高跳びの「西田修平」と「大江季雄」、
    《第2章 勝者たち》

    ○暁の超特急と呼ばれた、陸上百メートル走の「吉岡隆徳」、
    《第3章 敗者たち》

    ○「前畑ガンバレ!」の実況中継で有名な、女子二百メートル平泳ぎの「前畑秀子」、
    《第7章 故国のために》

    ○朝鮮人でありながら日本代表として出場し優勝した、マラソンの「孫基禎(ソンギジョン)」、
    《第7章 故国のために》

    ○36年後に銀メダルの「ジータス」と再戦した、男子二百メートル平泳ぎの「葉室鉄夫」、
    《第6章 苦い勝利、第8章 氷の宮殿》

    それぞれ、競技の際のエピソードだけでなく、出生や競技を始めることになったきっかけや経緯、そしてベルリンオリンピックに挑む前の精神的な状態や競技レベル、好不調の状況等が綿密な取材により調査・分析され、それが丁寧な筆致で紹介されており、一人ひとりの人生を辿ることができるだけでなく、その時代に、その場で観戦しているような錯覚に陥りながら、読むことができました。

    それにしても、当時の世界トップレベルのアスリートの置かれた状況… あまりにも過大な期待を背負わされた尋常ではない状況に驚かされましたし、、、

    先人がいない中での練習の工夫や、猛練習(「前畑秀子」は毎日20kmを泳いでいたそうです… )には感心させられるだけでなく、尊敬の念を抱きました。

    凄いですわぁ。


    『第8章 氷の宮殿』では、主な選手達の後日談が紹介されていたのも、なかなか良かったと思います。

    その後の第二次世界大戦で亡くなったり、辛い経験をされた方が多いんですよね。


    「沢木耕太郎」作品って、旅行記やエッセイも魅力的ですが、、、

    ノンフィクション作品の方が魅力を感じますね。



    そうそう、ベルリンオリンピックを記録したドキュメンタリー映画の『オリンピア』… 観たことないので、一度は観てみたいなぁ。

  • ふむ

  • 題から想像してたのと違って、ベルリンオリンピックに出場した(主に日本人の)選手たちのバックストーリーがメインだった。スポーツにあまり興味がないため、競技の描写にあまり興奮やロマンを覚えることもなかったが、民族主義の時代において、人々がどれだけ“われわれ”が優れているかを示すために熱狂し、選手がどれだけのものを背負って参加していたかと言うことが、ひしひしと感じられた。レニの、不当な中傷に対する憤り、それを抱えながら老いてなお衰えないバイタリティに感嘆した。そして沢木さんの対象との距離の取り方はやっぱり好き。

  • ナチス政権下のベルリンで行われたオリンピックを出場した日本選手のエピソードとその記録映画を撮影したレニ・リーフェンシュタールのインタビューで綴る。
    単に観戦者としては分からない、選手の悲壮感や競技の臨場感が伝わり、現代とは異質の時代の盛り上がりが感じられた。

  • 冒頭はベルリンオリンピックの記録映画、「民族の祭典」と「美の祭典」を撮ったレニ・リーフェンシュタールのインタビューから始まります。そこでタイトルからオリンピックとナチズムについてずっと書かれているのかと思いきや、その後は日本選手団の勝者、敗者の記述がメインに。ほとんど予備知識のなかったベルリン五輪ですが、プレッシャーで自滅する者、土壇場でも力を出し切って結果をだす者、メンタル面で結果が左右されるのは現代の五輪でも同じ。なかなか興味深く読めます。

  • [巫女の誘うベルリン、1936]ヒトラー率いるナチスの下で開催された1936年のベルリン・オリンピック。その記録映像で世界的な名監督として祭り上げられ、戦後はその作品の故にナチスに加担したとして世の中から疎まれ続けた「巫女」、レニ・リーフェンシュタール。五輪の映像として史上最高とされている彼女の『オリンピア』を縦糸に、その大会にまつわる数々のエピソードを記した作品です。著者は、日本のノンフィクションといえばこの人、沢木耕太郎。


    やはり沢木氏、人生の「峰」と「谷」を切り取るのが抜群に上手い。本作においても、レニ・リーフェンシュタールの、ベルリン・オリンピックに参加した日本選手たちの、さらには彼女を世界に押し上げたヒトラーの人生のトップとボトムを見事に、自然に対比させながら鮮やかにオリンピアの明暗を浮かび上がらせています。ベルリンのその後を描き、氷の宮殿と題された第八章を読んでいるときには、冗談ではなく人生の奇異さと時代のわがままさに戦慄すら覚えました。


    沢木氏の作品で好感が持てるのは、世の中の評価をいったん棚に上げ、それとは違うベクトルから対象物を覗き込み、誰も気づかなかった側面を眼前につきつけてくるところ。例えば、レニに対して「あなたは(ヒトラー)に魅かれていませんでしたか」と切り込み、それを発端としてレニのヒトラーに対する本音の一端をつかみとっていくところなどは、沢木氏の真贋を見抜く能力が研ぎすまされていることを示す証左なのではないでしょうか(そして、私はそういう人間に憧れと畏怖の念を覚えます)。

    〜『オリンピア』は、レニの用いた言葉を使うとすれば、ベルリン・オリンピックの「デュープ」などではなく、「ブロマイド」だった。しかも、極上の「ブロマイド」……。〜

    歴史に乗り、同時に翻弄された人生がここにありました☆5つ

  • 1936年に行われたベルリンオリンピックの映画と日本人選手の活躍を描いたノンフィクション。
    オリンピック映画を撮影したレニ・リーフェンシュタールへのインタビューと映画を基に、日本人の活躍と当時のオリンピック熱を描く。
    オリンピックになると、日本中が大騒ぎになっていたのは今も昔も同じだったようです。日の丸を背負って、ベルリン大会に出場した選手には大きな期待が掛けられ、栄光を掴み取った選手もいれば、力及ばず敗退した選手もいました。勝った選手、負けた選手それぞれの生い立ちから、出場までの経緯、競技の内容、オリンピックのエピソードやその後の人生など、緻密に取材されていて大変面白かった。
    レニ・リーフェンシュタールへのインタビューでは、映画を撮影する至った経緯や、撮影中の様子、ヒトラーとの関係、映画がもたらした影響など、これまで語られて来なかった内容が含まれている。
    オリンピックのドキュメンタリー映画も、実は創作(再現)部分があり、当事者に演技してもらった映像が含まれていたというのは意外だった。確かに撮影機材が進歩していなかった当時は、気象条件や日没などの不確定要素が影響し、少ない機材で一回限りの競技を確実に撮影するのは難しかったのだろう。当時の映画関係者の苦労も理解できる。
    また、当時の日本でのラジオ放送は、時差の関係で生中継できず、録音技術も無かったことから、100m走の中継はアナウンサーが見たことを、さも生で見ているかのように実況する放送だったらしい。たかだか10秒で終わる競技が、架空の実況だと30秒も掛かってしまうようなおかしな放送になったというエピソードは面白かった。陸上に限らず、水泳などでも同じような事が起きていたらしい。著者によるこのオリンピック映画の謎解きがテーマのひとつだが、それよりもベルリンオリンピックに関わった人達の、さまざまな人生ストーリーや失敗談のほうが面白かった。

  • 資料番号:111110961
    請求記号:780.6/サ

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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