愛してよろしいですか? (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087465785

感想・レビュー・書評

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  • 三十代のOL・すみれと、一回り下の大学生・ワタルとの恋物語。しょっぱなに出てくるハイ・ミスという言葉を久々に聞いて、却って新鮮に感じる。本書の初刊が昭和54年ということで、所々昭和っぽい描写はあるが、そこがネックになるどころか、そんな前に描かれたの!?と驚くほど瑞々しい。
    すみれとワタルとの出会いはローマ旅行。まず、そのエピソードの一つ一つが胸キュンの連続。何よりワタルの人たらしっぷりよ!掴みどころのなさが実に心憎いのだが、固定観念に縛られない柔らかな考えを持った男性像は、一歩も二歩も時代を先取りしていたのでは。それでいておばあちゃんを大事にするとか、しっかり就活してるとか、真面目できちんとしたところもまたギャップがあってよい。
    どこか少女マンガっぽいようで、地に足ついてるなと思えるのが、三十代の女性キャラが描かれているところ。自立してきっちり仕事してるすみれ、彼女の友人で主婦のふく子、どちらもそれぞれに三十代女あるあるエピソード(職場の苛々や夫婦間のいざこざ)がリアルである。
    歳の差を気にしながらも、見事に恋に七転八倒なすみれ。理性が吹っ飛んだり、はたまた姉さん風吹かして上から物申したり。そしてワタルもなかなかのプレイボーイで、ハラハラなシーソーゲームだ。恋模様を追うだけで十分ドキドキだが、冒頭のローマ旅など国内外のデートシーンもまたワクワクで、ファッション描写やフード描写も田辺作品のお楽しみの一つだ。ピンクのジーンズに、リンゴに矢が刺さったプリントのTシャツってすごくかわいいな。
    余談だが、大好きな漫画家の大好きな作品の大好きな登場人物が、本作のワタルをモデルにしていたと最近知った。思いがけず推し作家と推し漫画家が繋がり、身悶えである。

  • ハイミスの主人公スミレが大学生のワタルの前だけかわいい女の子になってしまうのが素敵!元彼のことも優しく思い出しててすごく気持ちがあたたまる小説。
    2人のハラハラするやりとりもあるけど、それも含めてすごく好きな作品。

  • ng

  • 田辺聖子さんの描く女性像は今に通じ、色褪せない
    軽い読後感、ストーリーはやや都合が良すぎるかもしれないが、
    言葉の掛け合いや心情の揺れ動きん楽しむ本である

  • 初版昭和54年の作品とは思えない親近感と茶目っ気が好ましい。
    34歳独身女性がイタリア旅行中に意気投合した学生青年となんやかやで関係を深めていくはなし。青年のなつこいキャラクターと女性の媚びない性格が織り成す小気味良い関係性とちょっと甘酸っぱい展開で前半はとても楽しめた。独特の言い回しや文章もなじみがないのになぜか雄弁で読みづらさがない。好きの種類と執着の度合いが変わってきた後半からは、女性の「少女のような」わがままと青年の若さ故の価値観が目立ってもやもや。かっこいい、かわいいだけに収まらなくなるのが恋愛のリアルなのだろうな。恋する女性のわがままが行きすぎるように感じて好きになれないことが多いけど、そういった点でもバランスが秀逸だったのかも。始まりと結末を踏まえると少し冗長だったかもだけど、夢のある素敵なはなしでした。

  • 大好きな田辺聖子さんの作品。中でもこの爽やかなハッピーエンドのお話は大好き。
    主人公に魅力があって共感しまくりだし、古くささを全く感じない。
    昔も今も女性は同じような事を考えて生きてるんだなあ。

  • 初版が昭和54年ということで、表現の端々に若干古さはあるものの、昔も今も三十路付近の女性の悩みなんて大差ないなあと思える。
    今から20年後の未来の三十路付近の女性も、きっと同じような悩みをまだ抱えていそうな気がする。
    年下の男の子に振り回されるスゥも可愛いし、大学生のワタルも飄々としていて、この2人の掛け合いも面白かった。

  • まるで少女漫画のような物語で、軽く読めるが、正直、作者の都合のいい妄想を読まされてるような気分になった。

    初版が昭和54年ということで、携帯などがない時代の物語だけど
    それでも、いつの時代も30過ぎの独身女性が考え悩むことは同じような事なのだな。と感じた。

  • ワタルとスウの掛け合い漫才みたいな関係がすごく楽しくて 読むたびに 良い気分になる。
    元気がないときに読むと、心がほんわかしてきます。

  •  30代の女性と大学生の男の子の恋愛を描いた田辺聖子の小説。昭和54年の作品。

     昭和54年といったらいまから30年以上も前で、ところどころ時代を感じる描写があるが(女性一人暮らしのアパートにお風呂がないとか、コーデュロイのスカートとベストとか)、人間の気持には古びたところを感じない。ローマの午後を楽しく過ごし、「やっぱり夕ごはんご一緒しませんか」とワタルがやってくる場面などは冒頭からワクワクしてしまった。34歳にしては、ワタルを目の前にした主人公に落ち着きも余裕も少ないのがやや気になるが、作中で「20歳から成長している気がしないのに」と言っている通り、自分がこの年になっても案外こういうふうなのかもしれない。
     欲を言えばもう少し落ち着いていたいけれど。

     いまでこそ、女性が大学に行くのも就職してバリバリ働くのも、ひとつの選択肢として当たり前になった。でも、主人公が感じていた会社の中での過ごしにくさは、見えにくくなりはしてもまだ根強く残っているのではないかと思う。男性中心の社会に冷めた視線を投げながらも、日常を丁寧にこなしている主人公には好感が持てる。

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著者プロフィール

1928年3月27日生まれ、大阪府大阪市出身。樟蔭女子専門学校(現・大阪樟蔭女子大)卒業。1957年、雑誌の懸賞に佳作入選した『花狩』で、デビュー。64年『感傷旅行』で「芥川賞」を受賞。以後、『花衣ぬぐやまつわる……わが愛の杉田久女』『ひねくれ一茶』『道頓堀の雨に別れて以来なり 川柳作家・岸本水府とその時代』『新源氏物語』等が受賞作となる。95年「紫綬褒章」、2000年「文化功労者」、08年「文化勲章」を受章する。19年、総胆管結石による胆管炎のため死去。91歳没。

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