- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087465921
感想・レビュー・書評
-
著者の脳梗塞との闘病記が半分と、その病を得てからのエッセイ集が半分の文庫本。
昨日は長嶋茂雄がスピーチの前にひとりぶつぶつと口を動かして、懸命にこれからしゃべることの練習をしていたかのように見えた。
スピーチに感動できる理由は、言葉の内容よりも、「話す」というプロセスそのものが懸命に「生きている」姿をうつしているからじゃないだろうか。
病を得た長嶋茂雄が「歩く」「話す」「手を振る」。
もうそれだけで人々を感動させることができるのです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本の冒頭部分を表紙に印字する紀伊国屋のフェアで購入。恐らくこのような企画がなければ手にとることはなかったと思う。フェア企画者に感謝。突然の病魔に襲われた著者の闘病記。著者が医療の専門家であるためか記述は淡々と時にはユーモラスな表現も。それが逆に著者の病魔への衝撃と生への思考することへの執着を感じさせる。何度も読み返すことになると思う。
-
とても読みやすい文章。描写されるからだの機能的な部分と、語られる言葉、それ自体がもつ端正さのバランスが、身体と心、あるいは脳のあり様を考えさせる
-
遠慮を省いて穿った言い方をすると、じじいのたわごと、なのだけれども、ただのじじいではないし、ただの病気だったわけでもない。ひとは、死の淵に立って、帰ってきて、そしたら体も動かなくなっていて、それで、なにを考えるのか。
不幸にしてその状況に立ってしまった人だけが知りえたことを、この人は書いた。その類まれなる強靭な精神と知性をもって書き、みなが読めるようにした。知ることができるようにした。これはほんとうに大きい。この人しかなし得ない仕事なのでは、とすら考える。 -
「脳梗塞になる前の私は,安易な生活に慣れ,単に習慣的に過ごしていたにすぎなかったのではないか。元気だというだけで,生命そのものは衰弱していたのではないか。それが死線を越えた今では生きることに精いっぱいだ」
「リハビリとは人間の尊厳の回復という意味だそうだが,私には生命力の回復,生きる実感の回復だと思う」