- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087466584
作品紹介・あらすじ
19世紀初頭、ナポレオン率いる仏軍の侵入により、スペインは無政府状態に。病気により聴覚を絶たれたゴヤは、マドリードで見た、血みどろの戦争の宿命的結果を、版画集『戦争の惨禍』等にまとめ、"描きながら告発する画家"として新境地を切り開く。1812年、妻に先立たれ、60代半ばで孤独になったゴヤは-。彼が遺した数々の絵画・版画作品と共に波乱に満ちた人生を追う傑作評伝、第3巻。
感想・レビュー・書評
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20180216読了
50代~60代のゴヤ。時は19世紀初頭、ナポレオン登場、あっという間にスペイン独立戦争へ・・・混乱の時代にゴヤが描いた版画集「戦争の惨禍」。市民ゲリラも加わった残虐な戦いの様子をが刻まれており、それを1枚ずつ追って解説していく。読みながら気持ち悪くなりそうなくらい。そしてあの「5月の2日」と「5月の3日」。プラド美術館を思い起こす。怒涛の3巻を読み進め最終章がまたもう、なんというオチか、と・・・構成にしてやられた感。●P136「巨人」の意味。●この辺境の国の情勢をナポレオンが正確に読みとっている、その目の確かさがすごい。そして、スペイン支援の体で入ってきて撤退するときには金・食糧・美術品をごっそり持ち去るイギリス軍のしたたかさ。
20180102蔵書詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
近代の波に呑まれていくスペインとゴヤ。
絵からも時代の変わり目を読み取ることができる。
ゴヤよりもスペインという国家,
そして民衆の変化に焦点が当たった巻なのではないだろうか。
耳が聞こえないことが、彼にとってどう作用していたのだろう。 -
3巻にもなって、今さらなのだが、この作品は単なるゴヤの評伝なのではない。 つまり、ゴヤを基軸にしつつ、18世紀後半~19世紀前半の歴史をこそそこに描きだしていたのだった。 3巻では19世紀が語られるが、それはナポレオンの登場によって形成、促進されて行く国民国家の世紀であり、そこには現代につながる問題をはらんでいた。 ヨーロッパ史の中でのナポレオンの位置づけと、意味づけが初めて分かったように思う。
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ゴヤの生涯とその時代背景を追っていく。ヨーロッパはまさにナポレオン戦争の時代であり、スペインも戦禍に見えて行く。ゴヤの「戦争の惨禍」といった版画集がその悲惨さを描いていく。ゴヤの作品といえば、「着衣のマヤ」「裸のマヤ」のイメージしかなかったが、戦争に苦しむ民衆を描くことこそ、むしろ近代的画家として、ゴヤのゴヤたる所以であろう。
ゴヤの生涯を見ていくと、その絵画の題材の変遷も興味深い。宗教画に始まり、肖像画そして民衆と、画家に求める時代の要請の変化が分かる。 -
いよいよゴヤの晩年に近づいていく。ゴヤの人生とともにスペインの激動の歴史も知れるという一鳥二石なこの本。ややこしくて分かりにくこの辺りの歴史を読み物としても面白く、知的かつ情緒的に描き出しているのに、なにゆえこんなに読み進めないのか不思議。私にとって高尚すぎるだけだけど。けど面白いのは事実。少しずつでもいいから読み進めて、最後の1巻を年内に読み終えるわよ。