楊令伝 8 箭激の章 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087467826

作品紹介・あらすじ

激戦が続き、童貫軍がゆっくりと梁山泊内に進軍した。岳飛は先行して棗強を奪取する。楊令は新たな軍の配置を命じ、呼延灼の軍は息子の呼延凌が引き継いだ。扈三娘軍には花飛麟軍が援護に入り、劉光世、張俊軍とぶつかり合う。雨の降りしきる戦場で、花飛麟は扈三娘への恋情を露にした。一方、金国は対宋開戦でまとまり、唐昇を先鋒に、完顔成、撻懶、斡離不が南下を始める。楊令伝、悲闘の第八巻。

感想・レビュー・書評

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  • 「呉用殿が見舞いに来るとは、私ももう目醒めなくなるのだな」
    こんなことを、言いそうな気はしていた。呉用は笑いかえしたが、それは覆面で見えなかっただろう。
    「偽の書類は必要としていないのか。遠慮することはない。私はまだ、一通や二通の書類なら、書けるかもしれん。ほかに、書ける者はいないのだからな」
    「もういいのだ、蕭譲」
    呉用は、皺で隠れてしまいそうな、蕭譲の眼を見つめた。
    「偽の書類でこそこそやる時期は過ぎた。宋とは、正面切った戦になる」
    「そうか、安心して死んでいい、と言いに来てくれたか」
    (略)
    「面白いところに誘われたものだ。塾の教師がな」
    「私もわか若いころは塾の教師だった」
    「別れはしたぞ。またの見舞いはいらぬ」
    「わかった」

    この巻は全面、童貫と梁山泊との戦いであった。堰を切ったように多くの英傑たちが死んで行く。海棠の花と云われ、不幸ばかりが襲ったあの女性には、この大河物語の最後まで生きて欲しかったのであるが、ほとんど必然性を持って泥土に沈んだ。唯一礫という飛び道具を持ったあの英傑も、岳飛という新しい時代の若者の前にあっけなく斃れた。「水滸伝」時代の英傑ばかりでなく、若者も次々と斃れた。そうして冒頭にある様に、呉用をして「一軍を率いている指揮官がいないより、大きなことだった」と言わしめた蕭譲も静かに亡くなった。私もおそらく病院で死ぬのだろうが、この様に友に別れを告げたいものだ。

    それだけではない。戦いの中で若者たちの目の覚める様な「成長」も描かれる。

    思うに、この楊令伝、中盤の白眉であろう。

  • ついに始まる禁軍VS梁山泊neo

    激戦であるが故に敵味方で多くの猛者が散っていく。
    扈三娘の大跳躍、首の落ちた緑の軍法、両脚を失った馬麟・・・

    水滸伝からの生き残りメンバーも大分削られてきたような気がします。

    一方で呼延凌や花飛麟の成長が著しく危なっかしい所はあるものの九紋龍に次ぐ安定感が出てきたような気がします。

    さて本巻は8巻で楊令伝の中間地点!童貫軍と楊令軍の戦いも佳境に入っていく中、残7巻でどんな事が起こるのか楽しみでなりません!

    因みに前巻に続き本巻も子午山の話がありませんでした。子午山の話で少し癒されたいという思いがあります。

  • ついに決戦の火蓋が…と言っても、童貫は動かない。
    周辺の小競り合いが本気の度を増して、ようやく楊令や童貫を動かそうかというところ。

    しかし、本気で戦えばこそ、次々と死者も出る。
    張清好きだったんだよなあ。
    梁山泊のメンバーとしては珍しく好きな女とちゃんと結婚し、子どもも持ったし、なおかつ優秀な将校であったところ。
    普通に格好いいと思う。

    扈三娘は罪な女だよねえ。
    彼女自身も幸せだったかというと、ちょっとよくわからないけれど。
    花飛麟と関係を持てたということで、聞煥章に汚された自分をリセットして、晁蓋の元に行けたってことなのかなあ。
    花飛麟はショックだよね。救われない。

    今回郭盛はまだ死なずにすんだけど、楊令との別れをすませた時点でもう永くないだろう。
    そして馬麟もまたあちらに行ってしまった。
    世代交代は必要なことだけど、やっぱり寂しい。

  • 戦が激しくなり、両軍ともに戦死者が相次いできた。
    戦闘シーンもさることながら、その最中や合間に登場人物たちの語る話や言葉も重みがある。
    いよいよ全巻の折り返し点を折り返した。

  • 扈三娘と花飛麟
    張清の戦死
    童貫軍と梁山泊軍の激戦
    なかなか読み応えのある巻

    戦いの中で激情と冷静さの狭間で揺れる人間の心理

  • 4.1

    水滸伝時代よりも戦が目まぐるしい。攻城戦がもはや懐かしい。
    まだシリーズの中盤だというのに、お互いにどんどん削れていく。最終巻手前みたいなストーリーですわ。

  • 一層スピード感を増していく童貫戦。
    張清、馬麟、扈三娘が死に、花飛麟が鬼になる。
    一気読みせざるを得ない激闘編。

  • 張清

  • 地速の光◆天退の光◆地角の光◆地霊の光◆地楽の光

    著者:北方謙三(1947-、唐津市、小説家)
    解説:武田双雲(1975-)

  • 水滸伝に引き続き、一気読み。
    単なる国をかけた闘争を描くだけでなく、『志』という不確かなものに戸惑いつつも、前進する男たちの生きざまが面白い。壮大なストーリー展開の中で、たくさんの登場人物が出てくるが、それぞれが個性的で魅力的。よくもまー、これだけの人間それぞれにキャラを立たせられな。そして、そんな魅力的で思い入れもあるキャラが、次から次へと惜しげもなく死んでいくのが、なんとも切ない。最後の幕切れは、ウワーーっとなったし、物流による国の支配がどうなるのか気になってしょうがない。次の岳飛伝も読まないことには気が済まない。まんまと北方ワールドにどっぷりはまっちまいました。

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著者プロフィール

北方謙三

一九四七年、佐賀県唐津市に生まれる。七三年、中央大学法学部を卒業。八一年、ハードボイルド小説『弔鐘はるかなり』で注目を集め、八三年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、八五年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。八九年『武王の門』で歴史小説にも進出、九一年に『破軍の星』で柴田錬三郎賞、二〇〇四年に『楊家将』で吉川英治文学賞など数々の受賞を誇る。一三年に紫綬褒章受章、一六年に「大水滸伝」シリーズ(全五十一巻)で菊池寛賞を受賞した。二〇年、旭日小綬章受章。『悪党の裔』『道誉なり』『絶海にあらず』『魂の沃野』など著書多数。

「2022年 『楠木正成(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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