- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087470154
感想・レビュー・書評
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[評価]
★★★★★ 星5つ
[感想]
フランスの百年戦争におけるジャンヌ・ダルクの物語
主人公は架空の人物である「傭兵のピエール」
ピエールとジャンヌの2人が出会い、戦場を共にしたのかといった感じだがジャンヌ・ダルクという歴史上の結末が決まっている人物を題材にどのように物語を展開するのかと思っていたが中々に面白かった。
純朴な村娘ジャンヌが手練の傭兵ピエールと戦場を駆けていく様子は気持ちよかったし、ピエールと部下達の関係も良かった。しかし、後半の戴冠式後の展開には辛かった。
お互いを感じている者同士が様々な柵で一緒に入られあい様子は悲しかったよ。 -
レビューは下巻にまとめて。
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前半は無頼漢ながら気の良い傭兵隊長・ピエールと無邪気な熱血少女ジャンヌ・ダルクの絡み合いが面白い。熱血少女に諭されて、傭兵隊が妙に家庭的になっていくところなど、なんだか少し不思議なおかしさもありますが、どちらかというと男性的な武勇談の雰囲気です。
後半はピエールの懺悔譚というか、次々に昔の悪事のつけが廻るような話。そして最後に、ちょっと都合が良すぎるような終焉に向かいます。
上下二巻。全体の構成ととしては、やや甘さを感じるのですが、読み物としてはなかなか面白いですね。類例的な感じがしないでもないですが、それぞれの登場人物のキャラクターもなかなか良いですし。
ただ、女性の描き方はどうでしょうかねぇ。
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蔵書から。
どのキャラクターも個性的。
出てくる女性キャラクターがこっぱずかしくなる程可愛らしい。
ささ、次巻へ。 -
積読本がなくなったため再読。直木賞受賞作家・佐藤賢一によるジャンヌダルクの物語。百年戦争に参加する傭兵隊長ピエールの視点で物語は進む。
略奪に暴力、強姦に人攫いは当たり前。素朴というよりぼろい貧しい田舎町。汚物は窓から投げ捨てるのもの。中世ヨーロッパ風ファンタジーとは違う、中世ヨーロッパそのままの衛生感の発達してない世界が舞台なのが良い。
傭兵隊長ことシェフのピエールが愛嬌のある、どことなく憎めない男であることもマル。何より傭兵隊の女たちがいい。
この時代の女は、嵐のような現実に晒されて、じっと黙って愛想笑いを浮かべて耐えるだけ。耕した実りも村の娘も傭兵という賊の前では為すすべもなく、すべて奪われ殺されてしまう。何の因果かピエールの隊で攫った女はいつの間にか隊員の恋人、結婚相手となり、故郷に戻って素朴な暮らしをすることになる。男を堕落させる原罪とされる女が、たやすく奪われ犯されるこの戦乱の世で生きていくのはどれだけ苦行なことか。だが生きていくためにはしたたかでないと生きられない。例え自身の故郷を襲い誘拐された傭兵だとしても、やるだけやって捨てられるよりかは付いていって養ってもらわないと生きていけない。女が原罪なのではなく、そうしないと生きられない世の中だった。
さて救世主ことラ・ピュセルは奇跡の力を失った今でも王太子軍の光として生きることを選ぶこととなってしまった。ピエールと彼女は再び交わるのか、ジャンヌダルクは救われるのか。下巻も読もうと思う。 -
傭兵は戦争に参加するもの。冬には盗賊になる。目に心地よいものばかりでなく、歴史の教科書には載らない、目をそむけたくなることも描写しているのがよい。
ピエールのように、悪行もすれば善行もするのが人間なんだろうなあ。 -
ジャンヌダルクについて様々な本を読んでいた時があったのですが、その中の一冊としてこの本を読みました。
エンターテイメント小説としては、良く出来ているのではないかと思うのですが、ジャンヌダルクを題材とした歴史小説としては今一つの様な気がしました。
作者がジャンヌダルクという歴史上稀有な存在をどのような人物造形で描き出すのか楽しみにしていたのですが、悪い意味で裏切られました。
なんというかマンガとかアニメのステレオタイプ的なヒロイン像になってしまっていて、わたし個人的には、作者の描き出すジャンヌダルクにリアリティーや魅力を全く感じることができませんでした。
ジャンヌダルクに関する他の本から浮かび上がる彼女の人間像からはあまりにもかけ離れているような気がしてしまいどうも本書のキャラクターになじめませんでした。
(エンターテイメント小説と考えて割り切ってしまえばよいのかもしれませんが) -
百年戦争下のフランスで傭兵隊を率いるピエール。その旅の途中ピエールはジャンヌ・ダルク(ラ・ピュセル)という少女に心を奪われる。そしてピエールは彼女と共に戦いに向かう事となり…
初めの略奪の場面こそ血なまぐさいものの、個性豊かな傭兵隊のメンバーに、戦闘シーン、ピエールのラ・ピュセルへの思い、ピエールの傭兵隊の生活や、戦争で城主に雇われるまでのリアリティあるやり取りとエンタメ要素がぎゅっと詰め込まれていて、世界史なんてほぼかじっていない自分でも、難しいことは考えず楽しんで読むことができました。
そうした場面もさることながら、佐藤賢一さんの作品を読んでいて毎回面白く感じるのは、佐藤作品独特の”女性観”です。
中世ヨーロッパのキリスト教の思想があるためか、純潔や処女信仰を作中でも唱えつつ、それに対しての、性に奔放な登場人物たちが活躍します。(今まで読んだ小説ではいまのところ佐藤さんが一番性に関する露骨な記述が多い気がしています…)
そうした性に対する感覚は受け付けない人もいるのかもしれないですが、読めば読むほどそうした描写が徐々に、女性の真からの清純さや包容力や母性、またいつの間にか男を尻に敷いたり、(意識的か無意識的にかはさておき)惑わしたりといった、したたかさ、力強さを表す基盤になっているのではないのかな、と思えてきます。
ぶっちゃけ作中の女性描写が巧いとは思えないですし、作中の女性観もどこか歪んでいる気はするのですが(笑)、でもそうしたぎこちなさから浮かび上がってくる佐藤さんなりの女性観が、自分は好きなのだと思います。