焚火の終わり 下 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 570
感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087472608

作品紹介・あらすじ

蠱惑の極みの陶酔…異母妹?!美花はもう、茂樹のすべてだった。罪悪感が、二人の果てなき愉悦の火種となった。フランクフルトへの転勤を前に、茂樹は辞職を決意する。生活の糧とすべく、二人は岬の家の近くに廃屋同然のかやぶき農家を移築して改装し、旅館業を営む決意を固めた。準備をすすめる中、美花は自分の出生の謎を記した茶封筒を手にする…。

感想・レビュー・書評

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  • 1997年初版。サスペンス仕立て。上巻での疑問が下巻で、どのように展開していくのか興味津々で読み進めました。最後まで読み終わり、なんだか消化不良は残りましたが、面白かったです。タブーに切り込んでいくのが、いいなあと思いました。性的な描写もあるのですが、通俗的で下品な感じは受けません。食べ物の描写も多いです。著者の文章の力を感じます。

  • 続きが気になってしまう作品

  • 何とも微妙な題材を綺麗で上品に仕上げたなぁと言う印象。
    近親相姦と言う文字を見るといやらしいイメージしかわかないけれど、この作品はいやらしさが全くと言っていい程ない。

    出生の謎は最後まであやふやでわからずじまいだったけれど、そこに関してはこの作品だから、まぁアリだなと思う。

    解説に書いてあった通り、作中に出てくる食べ物が美味しそう。

  • 美花は本当の妹なのか。

    鍵を握る最後の一人の死。

    そして、届いた茶封筒。
    しかし、謎は解けないまま。

    最終的な二人の決断には、謎解きはもう必要ない。

    茂樹は会社を辞め、美花と二人で旅館業を営み生きていく。
    揺るぎない二人の強い心がハッピーエンドなんだと思わせる。

    本当に綺麗な愛の物語♪

  • 人に秘められた謎を快楽の燃料とし、聖なる何かを生み出す。主人公の2人にとってはそれは出生の謎であり、自分たちは血のつながった兄妹なのか、ということで、ふくよかに支配され、残忍な愛撫を返す、深い快楽の関係につながるわけだが、謎が謎のままにしたい、でも知りたい、という葛藤と揺らぎを辿り、結局そこを明らかにしないことに決別した、そこからの2人の人生は本当に何もかもを楽しめる、前向きで明るい関係になっていくんだろうなと感じられた

  • 宮本輝が好きな読者はこの著書にどんな評価なのだろうか?

     たしかに禁忌の異母兄妹恋愛を興味本位でなく、愛の根源として描き、なおかつミステリアスな魅力も醸している。惹き付けられ、読み終えるまで本を手放せない盛りだくさんのおもしろさはさすが。

     でも、ミステリー、ゴシックロマンとして読んでしまう平凡なわたしには、はぐらかされた感じが残る。つまり、本当に異母兄妹かどうかがこの物語に絶大な雰囲気を与えているので、どうしてもその謎解きのつじつまを求めてしまうのだ。結末や解説を求めては雰囲気が壊れるのだけれど。ついね。

     そして、背景は島根県、強い風がふく岬の上の茶室風古屋。兄妹はそこでの焚火が大好き。これもなんともあぶない!

     そんな、こんなでタブー満載の小説を落ち着かない気分で読み終えた。

     この本は最近はほとんど時代物しか読まない夫が、めずらしく買ってきて読み、なんだか妙に勧めたので「どれ」と手に取ってみたのだ。へえーこういうのが好きなんだ~と認識新た(このごろこんな事が多いんだけれども)。まあ、多少エロティックではあるしするけど(笑)

     しかし、「あれ、あれれ?」と思いながらもあっという間に読んでしまって、熟練作家の力作ではあると思う。これは好きなひとは魅力なんだろうなー。

  • 平成28年10月

    宮本輝さんがよく書く「人生の目的」とは。を考えさせられる内容。

    そこには、常識、規則、当たり前を振り払い、自分が幸せと感じることをする大切さを教えてもらえる。
    人生は一度きりなんだからね。
    会社のため、仕事のため、お金のために生きるってね。
    それよりも自分の気持ちを大切にして、幸せを感じることをします!!

    そして、宮本さんには珍しくちょっとエッチネタが入っているから、ドキドキしちゃいました。
    このエッチなネタがないとこの話はやっぱりこの話にならない。

  • 少し陰鬱な気持ちにもなる宮本作品らしい作品でした。

  • 下巻は官能小説か!?って思うくらいエロ描写が多かったけれど、そこはさすがの輝さん。美しい文章で読ませてくれました。
    若干消化不良の残る読後感だったので、いつかまた再読してみたいです。

  • 謎が謎のまま終わるのは余韻を残す意味でもアリだと思うのですが、宮本輝さんの作品にしては入り込めなかったなあ。
    作者さんの言いたいことや、書きたいテーマは何となく判るのですが、先がどうなるのかというドキドキ感がなく、あまり山も谷もなくあっさりと終わった感じ。
    二人の恋愛に障害がないからなのかな?
    兄妹かもしれないという点が最大の障害といえばそれまでですが……。
    周囲がみんな茂樹と美花に理解があり過ぎのように感じた。
    少年の頃から美花に恋していたとか、茂樹さんの亡くなった奥様が気の毒。
    この作品が書かれた頃、まだDNA検査は一般的な時代ではなかったのかな?
    DNAを調べれば兄妹かどうかなんて一発で判るのにと、情緒のないことを考えてしまいました。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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