死ぬほど好き (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087475944

作品紹介・あらすじ

生まれ育った小さな町での結婚を前に、言いようのない憂鬱をおぼえはじめた由希。そんな折、高校の後輩と再会し、心が大きく揺れだして-(「果実」)。熱烈に口説かれ、引きずられるようにして克己とつきあいだした妙子。だが、いつしか恋の主導権は逆転し、不安に駆らけた妙子は執拗なまでに恋人を追いかけるが…(「死ぬほど好き」)。女たちが抱える愛の闇を鮮やかにうつしだす八つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 20〜30代の女性主人公達の"ままならない"恋愛を描いた短編集。田舎の男同士の慣習に染まり、夜な夜な飲み歩いてはトラブルを起こすクズ男と婚約することになったり(果実)、過去の恋愛の失敗を踏まえて試し行動をしていたら振られたり(赤ずきんちゃん)、離婚後に生命保険の変更手続きの為に元旦那と会ったはずが、そのまま焼け木杭に火がついた挙句妊娠してしまったり……(お元気ですか)女としての普遍的な幸せを手に入れたいと願いながら、なぜか誤ったルートを選択していく主人公が多く「いや、そうはならんやろ!」と何度も声に出かかった。真似てはいけない恋愛の見本としての資料価値を感じる。

    個人的には表題作の「死ぬほど好き」の妙子のイカれ具合が良かった。「業務が立て込んでいて暫く連絡が取れないし会えないよ」という恋人の職場に数時間おきに電話をかける前段に続き、深夜に恋人のアパートの前で帰宅を待ち伏せ。そして「来ちゃった♡」とヤンデレ彼女の十八番を惜しみなく披露してくる。もちろんそこに悪気は一切なく、「いくら仕事で疲れていたとしても、彼氏くんがだ〜いすきなカワイイ私と一緒にご飯食べてセックスすれば元気になるでしょ?」と心の底から信じきっているのが凄い。そして、「最初に熱心に口説いてきたのはそっちなんだから、こいつは私のことが大大大好きに決まってる!」と、交際中に嫌われたり、冷められる可能性を1ミリも考えていない圧倒的な自信……。恋愛に病める女子はこの妙子の強気な姿勢と凄まじい行動力をある意味見習ってもいいのかもしれない。(……だけどやり過ぎは結局妙子のように破局ENDへの道が開くので、彼氏の性格等を考慮し、許される範囲を見極めて実行するのが大事。)

    あとごく短い話だったが、「花火」の主人公のミリちゃんはちょっと可愛かった。ざっくり言うと彼氏とのセックスが気持ちよくないので自由研究に励む話なのだが、もうこの設定がエロゲだか同人誌にありがちな感じで既におもしろい。ちなみにこの後の展開もお決まりのパターン通りで、自分の経験不足が問題なのでは?と結論づけたミリは、他の男を試そうと経験豊富な女友達にイケおじを紹介してもらって開発に勤しむものの、最終的には彼氏とのセックスが一番気持ちいいよね〜〜とおじを切り彼氏の元に戻る。
    ミリのしたことは浮気といえば浮気なのだが、他の主人公達と違って精神的な部分は一切揺れていない。何度抱かれようと「ワタシ、このおじのことを好きになりそう……どうしよう……♡」みたいなふざけたことを一切言い出さないのが良い。おじとの身体の相性は良いし行為も実際に気持ちがいいけど、それはあくまで彼氏との性生活を充実させるための実験台であり、経験値!と割り切っているのが潔く、一概に彼女をビッチとは言い切れない(言い切りたくない)自分がいる。
    なんでしょうね。他の話のスッキリしない関係性や煮え切らない態度だったり粘着質な感情の末に展開される行為と違い、ミリは純粋におじとの行為から自分達カップルに不足しているセックスのいろはを習得しようとしているのが、なんか自身の技術向上に熱心なアスリートのようでさっぱりしていて好感が持てたというか。上手く言えませんが、エロはエロでもスポーツに近しいエロというか、健康的な雰囲気を感じました。以上です。

  • どちらかというと女性向け官能小説?
    全てがそうではないけど、性についての話が主になっているのがいくつか。
    行きずりの男と一夜を過ごすとか、理解できないから何ともいえない。
    不倫とか、してほしくないなぁ。

  • 2022 12/18

  • 恋愛における女性の傲慢さをまざまざと見せつけられた。二十年前の作品であり、現代と価値観の異なる点もいくつかあったものの、現代の恋愛観にも繋がる部分が多く見られた。良くも悪くも勉強になった一冊。

  • どのお話も、どこかを切り取って
    自分に透かして見ることができるような錯覚に陥る

    いろんな女性を書いているはずなのに、1人1人のエピソードからまるで生きているような感じがする

  • 全て大人の恋愛だと思った。
    すべて終わり方がすっきりしない。結末という結末がどれもなかった気がする。

  • 2021.1.18-365

  • 性描写そんなにいる?と思っちゃうけど全部の女の人の気持ちには共感できる

  • そういえばちゃんと林真理子よんだことなかったのでよんでみたら、さいしょの 果実 からザ“林真理子”でつかれた。

    シュミレーションゲーム
    結婚適齢期の女が不幸になる未来を想像しながら不倫するはなし 冷静にばかな道を選んでしまうはなしだいすき。あらすじはこの最終文に詰まってました。

    けれど私は、近々この男と多分寝るだろうということはわかる。私は本当に馬鹿だ。だけどそれがいったい何だって言うんだろう。

  • みんなほどほどにモテて恋愛を楽しめる人たちの物語。女を楽しんでいる。羨ましい。花火がエロすぎて動揺した。

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著者プロフィール

1954年山梨県生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、コピーライターとして活躍する。1982年、エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を刊行し、ベストセラーとなる。86年『最終便に間に合えば』『京都まで』で「直木賞」を受賞。95年『白蓮れんれん』で「柴田錬三郎賞」、98年『みんなの秘密』で「吉川英治文学賞」、13年『アスクレピオスの愛人』で「島清恋愛文学賞」を受賞する。18年『西郷どん!』がNHK大河ドラマ原作となり、同年「紫綬褒章」を受章する。その他著書に、『葡萄が目にしみる』『不機嫌な果実』『美女入門』『下流の宴』『野心のすすめ』『愉楽にて』『小説8050』『李王家の縁談』『奇跡』等がある。

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