- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087480092
感想・レビュー・書評
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ベレンコ中尉。亡命
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現状に不満を感じている このままでいいのだろうかという焦燥感と疑問
衝動に任せて何かやらかしたいけど足場のない不安定な状態は怖くて
結局今のまま
ベレンコに憧れスナフキンに憧れ、
どうしようもない どうしていいかわからない
ぐだぐだなまま終わっていく感じがまさに現実 -
函館などを舞台とした作品です。
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1976年9月6日、函館の上空に突如として姿を現したミグ25戦闘機。搭乗していたのはビクトル・イワノヴィッチ・ベレンコ、ソ連空軍中尉。
当時29歳だった彼は、地位、名誉、家族、母国、それら全てを捨て亡命を図る。
実際にあった出来事で、後にベレンコ中尉亡命事件として人々の記憶に刻まれることになる。
本書はベレンコの亡命を軸として動き出す。主人公は30歳に差し迫りもがいている。自由を求め、路上を汗まみれで這いずり回る。29歳で亡命に成功したベレンコと、彼の亡命によって自殺を阻まれた主人公。ベレンコは亡命によって新たな「生」を手に入れたが、主人公はいつまでもベレンコの影に悩まされる。
本書を読みながら尾崎豊の存在が脳裏を掠めた。自由を追い求めるが故に誰よりも生きることに苦悩した尾崎。その苛立ちを叫ぶように歌い、そしてたくさんの共感を得たのが彼だった。
尾崎豊と異なるスタイルを持つのが作家であり、当時ECHOSのヴォーカルだった辻仁成だ。辻さんは荒々しく叫んだり雄叫びをあげたりはしない。常に叙情的な表現で自由を追求していた。
相反する自由への闊歩は、時に人をあらゆる角度から混乱に陥れたのかもしれない。ベレンコの亡命から体全体を震わせながら歌う尾崎豊を、スナフキンの生き様から淡々と物静かに革命の波を生み出す辻仁成を想起させられた。
そして、本書の主人公は、彼らへ憧憬の眼差しを送る自分自身に苛立つ。「亡命」して自由を手に入れたい。だが、一歩が踏み出せない。それは、単に臆病なのかもしれないし、逆に現実から目を背くことができない責任感なのかもしれない。
本書の主人公のように、自由への願望に雁字搦めにされた人達は昔も今も変わらずいる。そんな大多数の人達にとって住みやすい環境を作ることこそこの国の至上命題なんだ。
誰もが持ち合わせている感情を見事に言葉に落とし込み描き出す辻さん。
解説で高橋源一郎が述べているように、辻さんは他の作家が敢えて深みを持たせるように隠すところを全てありのままストレートにぶつけてくる。それでいてどうしてこんなにもカッコいい小説が書けるのだろう。
アーティスト辻仁成にも計り知れない迷いや苛立ちがあり、どんなに偉大な歌手、作家として認められようとも、不完全な自分を消し去ろうとはしない。むしろ私たちに見せつけようとしているとさえ言える。だからこそ私たちは彼の生み出す物語や言葉そのものに魅了されるのだろう。
「亡命」への願望、そして巻き起こる葛藤。劣等感、猜疑心、妬み、自己嫌悪。死ぬまで消えることのないそれらのしがらみの中私たちは生きていかなければならない。 -
僕が16歳のときに自殺しそこなったのは
亡命してきたベレンコ中尉のせいだった。
以来亡命に憧れ続けてきたがもうすぐ20代を終えてしまう。
平凡な印刷会社での暮らしに飽きた僕は
自殺したと思っていたスナフキンから亡命屋に誘われる。
僕を思いとどめるのは仕事か、ナビか、平凡さか。
装丁:大木裕
「自由とは、自分の能力を認めてくれるシステムのことだよ。」
自由を隠れ蓑にしてないものねだりをする気持ちをばっさり切る言葉。 -
1976年のミグ戦闘機の亡命シーンは実話。
辻仁成さん、函館西高校の出身だそうです。
ということで、函館の風景があれこれと出てくる。
辻仁成の作品、だんだん好きになってきた。 -
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2008
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俺も30手前…。亡命でもするか…。
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すんなり読めた。亡命に惹かれる30目前の主人公。大人のようで、子供みたいなひと。じわ、と心に沁みる部分がある。