旅人の木 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087483512

感想・レビュー・書評

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  • 兄弟。
    兎に角兄が不思議だが、弟も不思議。
    終わり方が薄い。

  • 自分は誰かに強く憧れたり目指したりする人はいない。けれどこの主人公の兄に対する憧憬とそれに付随する嫉妬や喜び独占欲は覚えがあった。
    誰かに強く憧れその人を追いかけることは、ある意味何も考えずその人を神格化して従っていればいい宗教のような生き方になる。しかしその人を失った時に生きていく道しるべは見つかるのか。
    また兄やヤスダが落ちこぼれであり下界のリズムでは生きていけないという言葉が自分には救いだった。自分もまた落ちこぼれで他の奴らのリズムでは生きていけないから苦しんでいるのかもしれない。
    辻仁成の中ではかなり読みやすい短編。

  • 両親の死をきっかけに
    行方不明の兄をさがす弟のはなし。

    辻仁成の初期の作品に漂う雰囲気がなーんかすきで何度も読み返してしまう。。
    中二病っぽくもあるけど、繊細な人特有の社会への馴染めなさとかそれを肯定したい気持ちをくすぐる。

    玉木宏がいつかダヴィンチでこの小説好きだってゆってたので、たぶん彼もネクラだとおもいます!

  • 辻さんはどんな思いで何を伝えるためにこの小説を書いたのだろうか。
    完璧なまでの整合性の欠如とさえ言えるかもしれない、それほど「確かなもの」が掴めない作品。

    兄への尊敬、憧憬、同一化願望が絡まったうえで極限までのコンプレックスが伺える内容となっている。そのコンプレックスは自己へのものか、常に人生の指標としてきた兄を省みてのものか。

    兄の失踪から始まる物語であるが、その兄が急に現れた後で不可解な状態での結末を迎える。そして、読者は思うのだろう、これはもはや兄と私を巡るコンプレックスの問題ではないと。物語は完全に私個人の自己完結的な消極感情に移っていたのだ。

    結局私は兄を頼って生きてきただけなのだ。兄の中に自分を見ることで、自己のバランスを維持していた。自分自身の輪の中で生きるのは確かに難しい。だが、兄の価値観に頼りきった挙げ句の果てがこの物語の全てなのだ。

    自分の「場」を持つことを主張しているのか、それとも他人の「場」への正しい同化を促そうとしているのか、私には全く分からないけれど、処女作「ピアニシモ」から一貫してアイデンティティを追求してきた辻さんの狙いを感じることはできた。

    アンサーを強要しない小説は本当に好ましい。ロールモデルを見失ったゆとり世代の私だから尚更のことなのかもしれない。
    さて、次はどの作品に心を寄り添わせてみようか。

  •  「旅人の木」、マダガスカル島の原産で、葉に水を貯えている木だそうです。辻仁成さん、初めてでもあるようで、2~3冊目でもあるようで。芥川賞作家ですね。「旅人の木」、1995.6発行。両親の急死にも顔を見せず、行方不明の9歳年上の兄を探す弟の物語。兄の恋人、友達などから兄の生き方などを聞き、兄の恋人と恋人になり・・・。芥川龍之介の作品はわかりやすいし、テーマもはっきり伝わってきますが、芥川賞作家の作品は読みにくくテーマもわからない作品が多いと感じました。人間の内面を描いているということはわかりますが・・・。

  • 詩人の俵万智さんが最後の解説で実に的を得ている事を言われている。
    「兄を探す旅は、つまり僕が、自分自身を探す旅なのだ、と思う。(中略)自分とは何か、というシンプルで深い問いかけに身を委ねて、私はこの小説を味わった。」

    昔、僕自身も弟と話をしている時、恥ずかしい話ではあるが、「こういう人間にならないとなぁ」とよく関心し、影響を受けたことがある。

  • 図書館にあった本。お兄ちゃんが自由。

  • (13.08.19)

  • こういう兄みたいな、どこかおかしくて、ミステリアスで、つかみ所もないのにモテる人って、現実にもいますよね。
    主人公は弟だけど、中心は兄で、登場人物はみんなそれを軸に回っていた。

  • 自分にも年の離れた兄がいるから、主人公が兄に憧れ、兄に近づこうとする気持ちがわかるような気がした。

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著者プロフィール

東京生まれ。1989年「ピアニシモ」で第13回すばる文学賞を受賞。以後、作家、ミュージシャン、映画監督など幅広いジャンルで活躍している。97年「海峡の光」で第116回芥川賞、99年『白仏』の仏語版「Le Bouddha blanc」でフランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として初めて受賞。『十年後の恋』『真夜中の子供』『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』『父 Mon Pere』他、著書多数。近刊に『父ちゃんの料理教室』『ちょっと方向を変えてみる 七転び八起きのぼくから154のエール』『パリの"食べる"スープ 一皿で幸せになれる!』がある。パリ在住。


「2022年 『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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