裁きの家 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087500189

感想・レビュー・書評

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  • 読んでいる間、見たくないものを抉り出して突きつけられる作品。「人が人を裁くことができるのか」という問いは法的な命題として想像していたが、むしろ道徳的な命題として、人が生きる中で常に自答しなければならないものだった。不倫ものはあまり得意ではないけれど、三浦さんの作品は読めてしまう。人の心の弱さと傲慢さが露呈したとき、人間とは何か、を常に考えさせる作品だからだと思う。そして三浦さん作品にはそこに精神世界という一筋の光がある。本題よりも修一と関子のこれからや、弘二の精神構造も気になる。続編が読みたくなる作品。

  • この本のラストがあまりに衝撃的なのではっきり覚えていました。
    久しぶりに読み直して、ああ、この本があのラストの本だったんだ・・・と思いました。

    貞淑な妻であり優しい人柄の主婦、優子。
    その嫂で、奔放でエゴの塊のような性格の滝江。
    ある日、優子は滝江が義兄以外の男性と親しげに腕を組んでいる所を見てしまう。
    そして、それを夫に言ったところ、あっさりとその出来事は嫂夫婦に伝わり、しらを切る滝江により姑のクメと同居する事になってしまう。
    優柔不断で事なかれ主義の夫。
    心優しく出来のよい長男。
    その長男を羨む次男。
    単純で物事の表面しか見ない姑。
    そして、心冷たい義兄。
    自分の事しか考えられない嫂。
    その子供でいつも無表情な甥。

    この物語は一応、優子が主人公になっていますが、登場人物それぞれの視点からその感情が描かれており、それぞれの気持ちが理解できます。
    普通だと、優子=善、滝江=悪。
    と分かりやすい構図になり、そのせめぎあいを描いた話となる所ですが、それぞれの登場人物の感情が理解できるだけに、誰が善、誰が悪と決めかねるところがあると思いました。
    優しく思いやりのある優子にだって、人を羨んだり憎む心はある。
    反対に、自分勝手で利己的な滝江も見ようによっては、ここまで自分の欲望をはっきり口に出しそのために行動するのは潔いとさえ思えるし、可哀相な人だとも思う。
    そんな不完全な人間というものが他者を裁くとはどういう事なのか。
    それを問いかける作品です。
    ラストは正にその問いかけの集大成で、最初に読んだ時は後味が悪い思いがしましたが、それだけにずっと心に刻まれるお話でした。

  • 誰かからよくない噂話を聞いたときや、ネガティブなことを言われたときに読んで、気持ちの置き場所を確認しておきたいかも。

    商社マンの夫と、高校生と中学生の息子を持つ優子が主人公。
    夫の姉、滝江の浮気現場を目撃してしまう。
    滝江に恨まれて、夫を誘惑されたり、嘘をつかれたり、いろいろな嫌がらせを受ける。
    一方、滝江の息子の晴彦も、滝江への恨みを募らせていて、どうなるんだーって話。(すごく雑)

    滝江の嘘を信じて嫉妬したり、
    姑のクメの子育てに関する苦言を魔に受けて落ち込んだり、
    客観的に見てたら「そんなの聞かなくていいのに!」と、優子をもどかしく思った。

    自分も、誰かの噂を信じたり、否定されたら自分を責めてしまったりけど
    嘘をつくような人とは、吉井さんのようにうまく距離を置いたり、
    否定をする人の言葉を鵜呑みにするのではなくて、優子の息子の修一のように、勉強をして自分の芯を持って揺らがないようにしたりしたい。

  • 自分も日々何かを裁いているのか。裁くほどの何かを持っているんだろうか?いや、持っていないと思う。そんなことを考えました。

  • 昭和の昼ドラのドロドロ具合が新鮮だった

  • 久しぶりに三浦綾子を読んだ。最初は稚拙に感じたが、やはりすぐにハマった。キリスト教に惹かれる気持ちは昔より薄れたが、やはり考えさせられる。

  • 祖母から本を貰い読みました。

    衝撃的なラストが待っています。
    人間はなんて自分勝手で自己中心的なのでしょう。

    氷点のさらに上を行くような
    人間の嫌な部分が描かれています。

  • 眠れなかったので読み始めたら、最後まで読んでしまった。
    登場人物の描写が丁寧で、どんどん人間不振に陥ります。
    あのラストは容赦ない。

  • この本で衝撃を受け、それ以来三浦綾子ファンになりました。

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著者プロフィール

1922年4月、北海道旭川市生まれ。1959年、三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の1000万円懸賞小説に『氷点』で入選し作家活動に入る。その後も『塩狩峠』『道ありき』『泥流地帯』『母』『銃口』など数多くの小説、エッセイ等を発表した。1998年、旭川市に三浦綾子記念文学館が開館。1999年10月、逝去。

「2023年 『横書き・総ルビ 氷点(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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