- Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087504996
感想・レビュー・書評
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たぶん、高校生の頃だった。広瀬正という作家のSF小説が立て続けに文庫で販売され、面白さにはまって、一気に読んだ。そのころは、当時SFというと鉄板の星新一から始まって、小松左京、筒井康隆、らを次から次へ、読みまくっていた。もうほとんど記憶も残っていないが、田舎の高校生が、いつもの本屋でまた次に面白い本はないかと思っていた時、確か、その文庫本のちょっとオシャレな装丁に惹かれて、手に取ったのではないかと思う。
一番最初に読んだのは、マイナス・ゼロ、だったかな。さっき言った三人とは一味違う、独特の広瀬SFの世界。硬質な感じの文体、一つ一つブロックを積み重ねて行くような展開。抑揚を抑えた、丁寧な表現。理系的、と言えばいいのか。それでかつ、文句なく面白く、読者をがっちりつかんで離さない、一度読み始めたら、止まらないストーリー構成。
続けて、発刊されたエロス、鏡の国のアリス、T型フォード殺人事件、タイムマシンのつくり方、すべて読んだ。
今回、ふと図書館で懐かしい装丁を見つけ、その時は借りずに、ちょうど実家に帰ったので当時買ってそのまま取ってあった文庫本を読み返すことにした。日に焼けて、紙は黄ばみ、活字も小さくて老眼にはなかなか読みづらかったが。
ちなみに、当時はなんというか、さすがおおらかというか、今はいわゆる放送禁止用語(と思うが、調べたわけではない)がしょっちゅう出てくる。つ○ぼ、とか、き○がい、とか、あい○こ、とか。時代だな。
それはともかく。今回読み返してみたが、正直、最後のどんでん返しはちょっと、うーん、そう来たかと、ややもの足りない気がしないでもなかった。が、それも時代かな。SFのトリック、ネタは、当時は斬新でも、その後数多のSF小説が書かれ、それらを読んで、こちら側が「擦れて」しまって、もはや新鮮な感動を味わえないだけなのかもしれない。しかし、途中までは間違いなく面白かった。あと、30年も前の社会風俗の描写が古いと思うのはもちろんしょうがない、が、しかし、それでもその古さに違和感をあまり感じないのは、小説としてのレベルが高いからではないか、と思う。
さすがに全く内容は覚えていなかったので、初めて読むように楽しめた。時代の違いがやや評価を下げる部分はやむなしとして、それでもSFとしては上質な作品だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示