幸福論 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087520378

作品紹介・あらすじ

「幸福だから笑うわけではない。むしろ、笑うから幸福なのだと言いたい」人間の心は外的条件に大きく左右される。とすれば正しい判断には意志が必要である。微笑んでみてごらん-幸福の本質が見えるから。ドイツ的観念哲学ではなく実践的な幸福論として、夫婦、死、仕事etc…を説くフランス哲学者アランの優しさあふれる語録。

感想・レビュー・書評

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  • 84冊目『幸福論』(アラン 著、白井健三郎 訳、1993年2月、集英社)
    20世紀前半に活躍したフランスの哲学者アランの、幸福に関する「語録(プロポ)」93編が収録。1925年に初めて出版されて以来、今に至るまで読み継がれている名著である。
    思索ではなく行動にこそ幸福は生まれる。運命などは存在せず、意志の力こそが未来を切り拓く。前向きに物事を捉える。自由と楽しさを最優先するアランの思想はシンプルだが力強く、現代に生きる我々にも活力を与えてくれる。

    〈解きほどけ、解放せよ、そして恐れるな〉

  • <心と体のつながりへの自覚が幸福への近道!>


     ひと頃、哲学者や賢人の本のエッセンシャル版を多く読んでいたのですが、そのなかで『アランの幸福論』だけ読むのに時間がかかったのです。要約版ならさらっと読めそうなものを、なぜ幸福論だけが捗らないのだろう? と、奇妙に感じたことから、完訳版を手に★
     どうやら、私は要約版よりもまるごと読んだほうがしっくり来て、早く読み進められるようでした。理由までは分からなかったけれど……★
     手に取った集英社文庫版のたたずまいが、好感を持てるものだったのも大きかったな☆ 装丁が洒落てます。巻末解説もとても丁寧。アランを敬愛する翻訳者の思いが伝わってきます。すべてに充実感をおぼえました。アランのメッセージをじっくり自分の中に落とし込む時間がとれました♪

     以前から「幸福だから笑うのではない、笑うから幸福なのだ」というアランの格言(?)は聞いたことがありました。作者は他にも、自分を幸福にする方法や物事を楽観的に見るためのコツを、数多く書き遺した人物です。アラン曰く、もともと人間の気分は良くないんで、自ら機嫌良くなるよう努めるべきで、幸福になることは義務なのだとか☆
     確かに、不機嫌さをまき散らして歩いていては他人にも迷惑がかかるものでしょう。幸せって何だっけ、などとのんびり言ってる場合ではなく、私たちは幸福にならなければならないのです★
     ヒントは、心と同じくらい体も大事に扱うこと、あるいは心と体のつながりに注目すること。自分の感情に振り回されたくなければ、精神面だけをコントロールするのではなく、体の健やさも保つとうまく行く。勘所をつかめば、自分自身の気分や感情に振り回されず、より良い状態に入っていける……☆
     本書は、周りから「もっと明るくしたら」「元気を出して」と言われて「私、もともとポジティブな性格じゃないんだけど……」と困ってる人(私もそんな感じ★)に配りたい☆ きっと何かつかめます!

  • アラン「幸福論」1925年T14世界三大幸福論のひとつ。
    高校哲学教諭でフランス大学受験資格試験の哲学受験では教え子の成績がとても良かったとか傍らに書いた2ページの短い文書プロポが記事掲載され有名に。幸福になるには健全な身体を持ち心の平静を得ることを強調。
    不平不満を人に話さず上機嫌にふるまい社会的礼節の重視すること。ドイツのよくわからない頭でっかちな哲学より人に優しく楽観的でなにより実用。但し第一次世界大戦では軍に志願し兵役を就くなど愛国的な面が
    現代日本では評価が難しくしているのかも。

  • 章がたくさんあり切れ切れになっているので同じような言葉何度もループしていて、戸惑う部分もあったが、少しずつ理解ができるようになった。
    とにかく行動をすること。そして自分の身体に注意を向けること。礼儀や人に対して笑顔で接することは自分のためでもあること。過去や未来についての考えはは頭の中から追い払いただ現在を生きること。
    くよくよと考え過ぎてしまう私にはぴったりの本だった。

  • 97章からなります。
    1章は文庫本で3ページなので隙間時間で読むことが出来ます。
    私は殆どの章を2回づつ読んで内容が腑に落ちることが多かったです。古典と言っても差し支えない本だと思いますし読んで損は無い内容です。特に35歳以上くらいなら。

  • アランの年譜付。実は「1.名馬ブケファルス」からピンの意味するところが理解できず、一度は途中で挫折したものの、二度目にしてようやく通読に成功した一冊。全体的に浅くしか理解できていないだろう私が読みながら思ったのは、幸福は身体の活動によって自分から生み出してゆくものということでした。口角を上げて機嫌よくしているほうが良いことはわかっていても、忙しいとつい疎かになるので、そういうときにこの本の存在を思い出せば、幾分か冷静に対処できそうです。

  • フランスの哲学者、アランが幸福について論じたエッセイ。
    我々の情念は精神的な問題ではなく、肉体に依存する。

    なかなか噛み砕けない箇所も多いけど、そんななかに心に響くものがある名著。

    自分なりの、アランの主張内容に関する理解は、次のようなものだ。
    幸福は自分の外にあるものではない。したがって、恐れや倦怠などの情念が起こった際は、感情をコントロールしようとするばかりではなく、身体の状況を改善する必要がある。
    また、幸福は探すのではなく、自分で創り出すもの。行動こそが幸福を生み出す。


    ついついネガティブな気持ちに負けがちな自分に必要な本だった。

  • アランの思想は理解できるが、訳者の訳が分かり難すぎて困惑した。
    もっと日本語として頭に入ってくる訳者の訳であればもっと楽しめたと思う。
    ちなみに巻末と「鑑賞」を書かれたフランス文学者の清水徹さんの文章は非常に分かり易く、そちらを読んでから本文に入る方がまだ理解がしやすいかと思うので、そちらから読み進めることをお勧めします。

  • 実は、まだ完読していないが、おそらく、書く内容は変わらないと思う。

    私がこれを読む動機は、幸せになるにはどうすればいいのかを知りたいという、しごく安易な気持ちであるために、ひとつ、こういうことかと納得してしまうと、その後を読む気力が、どうしても沸いてこない。

    厳密に書くと、おそらく、幸せになるにはどうするかではなく、こうであるから幸せなんだということが書かれているのだなと思った。他人のせいにしている時点で、既に自分で幸せを逃がしていたんだな。

  • 三大「幸福論」と言われるように、アラン、ヒルティ、ラッセルという3人の著名な哲学者が「幸福論」を書いている。

    すべてを未読だった自分は、まずアランの「幸福論」を読んでみることにした。

    アランが楽観主義の達人であったことをどこか別のところで聴いたことがあり、「悲観主義は気分のものであり、楽観主義は意志のものである」という言葉は、強いインパクトのために、本書を読み始める前まで記憶に残っていた。

    この言葉がどこかで登場するのだろうかと、期待を秘めながら読み進めていた。

    本書はエッセイ集のようでもある。一つひとつの話の塊を断章(プロポ)と呼ぶのだそうで、「名馬ブケファロス」から「誓うべし」まで93のプロポで構成されている(数えてみたがその通りであった)。

    「幸福論」というタイトルであるのに、初めから「恐怖」「苛立ち」「悲しい気持ち」について述べられ、「神経衰弱」とか「ふさぎの虫」などというタイトルが続く。

    明らかに心のマイナスの状態についての話から始まり、そのようなマイナスの心の状態を改善し、克服するにはどう対処すればよいのかというようなことが述べられている。

    つまりはアランにとっての幸福とは、心がマイナスの状態でないことと捉えているようでもある。

    プロポの前段は、先へ読み進めていくための前提となる考えが述べられており、読み進むにつれて考えが深められたり、解決のヒントが提供されたりしているように思う。

    最後の最後、「誓うべし」のプロポに至って、期待していた「悲観主義は気分のものであり、楽観主義は意志のものである」という言葉が登場した!

    ここに述べられたアランの哲学は、端的に言えばこの言葉に集約されるように感じる。けれども、個々のプロポの中にもまた読者を楽観へ導いてくれるような言葉がいくつも紹介されている。

    「運命というものは、気まぐれだ。指のひとはじきで新しい世界ができあがる。どんな小さい努力でも、限りない結果を生ずる」とか・・・。

    「未来にはひとりでにできる未来と、自分でつくる未来との二つがある」とか、、、。

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著者プロフィール

1868-1951。本名Emile Auguste Chartier。ノルマンディーに生れ、ミシュレのリセ時代に哲学者J・ラニョーの講義を通して、スピノザ、プラトン、デカルト、カント、ヘーゲル等を学ぶ。エコール・ノルマル卒業後、ルーアン、アンリ4世校などのリセで65歳まで教育に携る。ルーアン時代に「ラ・デペーシュ・ド・ルーアン」紙に「日曜日のプロポ」を書きはじめたのが、彼のプロポ(語録)形式の初めである。アランの人と著書については、アンドレ・モーロワの『アラン』(佐貫健訳、みすず書房、1964)に詳しい。邦訳されたものとして、『定義集』(森有正訳、1988)、『デカルト』(桑原武夫・野田又夫訳、1971)『プロポ』1・2(山崎庸一郎訳、2000、2003)『アラン 芸術について』(山崎庸一郎編訳、2004)『小さな哲学史』(橋本由美子訳、2008、いずれもみすず書房)などがある。

「2019年 『定義集 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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