バルザック ポケットマスターピース 03 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (792ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087610369

作品紹介・あらすじ

フランスの巨匠バルザックの魅力を集めた1冊。「悪と堕落の権化」たるヴォートランが暗躍する『ゴリオ爺さん』『幻滅(抄)』『浮かれ女盛衰記第四部』を収録し、“人間喜劇"の真髄を描く。(解説/野崎 歓)

感想・レビュー・書評

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  • これは誠に美味しい読書だった。(三田誠広「天気の好い日は小説を書こう」などで言われていた意味において)
    たぶんユゴー「レ・ミゼラブル」と同じように、この時代のこの町を「全部残したい」という熱情に駆られていたのではないか、だからこそこの書き込み量。

    「ゴリオ爺さん」はいわば「人間喜劇」の出発点ともハブとも呼べる小説らしい。
    ここに登場するヴォートランに着目すると、「幻滅」「浮かれ女盛衰記」がある、ということでそれぞれ抄訳。
    抄訳はあまり好きではないのだが、ヴォートラン……本名ジャック・コラン……偽神父カルロス・エレーラのデモーニッシュな魅力には読書熱をぐいぐい引っ張られた。
    要は女嫌いで、美青年に自分を投影して出世させる、という独特の熱情に駆動されている。
    駆動と言ったが、彼以外の青年も、貴族の女性も、みな「駆動されている」という印象がある。
    パリという都市には欲望や虚飾や金や虚栄やといったエンジンが備わっており、参加するためには「巻き込まれる」必要がある。
    その中で、濁流に脱落する者、生き抜く者、がそれぞれに思いを加速させていくのだ。
    という感想を、ネット上で松岡正剛氏が、裏付けてくれた。

    (以下引用)
    【ヴァニティ・エンジン】
    19世紀の世界を看過してはいけない。まさにアメリカの独立とフランス革命と産業革命で再起動したネーション・ステートの社会は、今日の高度情報資本主義に至るまで、そのエンジンを剥き出しにしていったのである。
    ドゥルーズやガタリ(1082夜)はそれを心身資本主義を纏った機械装置としての「アンチ・オイディプス」とみなしたわけだけれど、バルザックはそれらを「ヴァニティ」とみなし、そこに方法の開花を投入した。
    ぼくはバルザックその人が文芸システムそのもので、バルザックはその執筆編集装置と化したアパラタスそのものをめざしたと思っているのだが、そのシステムあるいはアパラタスのエンジンは「ヴァニティ」というガソリンで起動していたのである。
    【虚栄文芸装置】
    君 ヴァニティ。虚栄ですか。
    僕 バルザックには、あの時代のパリにそのすべてが露出していたということが見えたんだね。
    君 それを一人の作家が文芸装置と化して射出していったんですか。そんなことできるのかなあ。
    (以上引用)

    取り引き先の人が「ゴリオ爺さん」をおすすめしてくたので、せっかくならと「人間喜劇」を齧ってみた。
    なんでもバルザックは作品群をカテゴライズしていったらしいが、ダンテの「神曲=神聖喜劇」にもなぞらえられる。
    本書収録が「煉獄編」とすれば、ずっと前から(山尾悠子の筋で)気になっていた「セラフィタ」は「天国編」らしい。
    この勢いで「セラフィタ」にも手を出してみる。

  • 2023年4月映画化
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50056845

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00250184

  • ゴリオ爺さん・幻滅(抄)・浮かれ女盛衰記(第四章)の三本立て。

    『世界の十大小説』にゴリオ爺さんの名が挙がっていたので、本書を手にとった。ゴリオ爺さんはそれ自体で全てが完結する話ではなく、バルザックの書いた人間喜劇と呼ばれる作品群の一部らしい。

    ・ゴリオ爺さん
    権力と金と恋愛模様がおどろおどろしく展開するパリの社交界が舞台。好々爺はよそに嫁いだ娘を愛するも、娘は父親を利用して金を巻き上げるばかり。父親の死に目にも会おうとしない娘に対し、いよいよ最期で呪詛の言葉をつぶやくゴリオ爺さん。私が受けた印象としては2chの鬼女板まとめに近い。
    ラスティニャックが主人公なのが良かった。田舎から来たばかりの若者という設定で、パリの社交界のドギツさに染まりきっていない。ゆえに共感しやすく、物語における観察者の役割を果たしてくれている。これで爺さん自身が主人公だったら、あまりに娘への献身ぶりが強すぎて感情移入できなかっただろーな。
    ここまでパリの社交界のエグさを見せつけられた後でも、社交界で立身出世を目指さんと一歩を踏み出す主人公。このラストシーンは解釈が難しい。ラスティニャックは何を考えていたのだろうか?いろいろと想像させられる。



    (以下、読んでいる最中。随時更新する予定)

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著者プロフィール

フランス文学を代表する作家の一人。1799年生まれ。ロマン主義・写実主義の系譜に属する。現実の人間を観察することが創作の出発点だが、創造力を駆使して典型的人間像を描きあげる。歴史にも大きな関心を持ち、歴史的事実から着想を得ることも多かった。様々な作品に同じ人物を登場させる「人物再登場法」という手法を用い、膨大な作品群によって「人間(喜)劇」と名づける独自の文学世界を構築しようとした。代表作は『谷間の百合』。豪放な私生活も伝説的に語り継がれている。1850年没。

「2020年 『サンソン回想録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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