- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087711615
感想・レビュー・書評
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2019.1 勉強になりました。
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聖徳太子の話というよりも,蘇我馬子に依頼されて国史の編纂の調査をするという形で,大王家の成り立ちを描いている.出来上がることはなかったがその内容は古事記とほぼ同じで,その内容の謂れを詳しく書いていて,とても面白い.
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初出 2017〜18年のweb文芸「レンザブロー」の2話、2018年の「青春と読書」の2話
外つ国に負けぬ国史を創ろうと編纂に取り組む厩戸皇子(聖徳太子)とその手足となる朝廷の記録担当官人船の史(ふひと)が、記紀神話を創りあげていく物語。
船の史は前作の『蘇我の娘の古事記』にも登場していた。
第1話、伝承が残る最古の大王ミマキイリヒコ(第10代崇神天皇)の大叔母で、巫女として統治を助けたオオヒルメを、厩戸は魏志にある卑弥呼に当たると考え、さらにこれをモデルに皇祖神アマテラスを構想する。
第2話では、何も伝承のない国の始まりについて、淡路島に残るイザナギ、イザナミの国産み譚を取り込む。
第3話、神々と大王家をつなぐものとして天孫降臨を構想するとともに、ナカツヒコ(第14代仲哀天皇)の妃オキナガタラシヒメ(神功皇后)が、遠征先の九州で夫が死ぬが子(応神天皇)を産んで、大和へ入って王位争いを制したのをモデルに、日の御子(第1代神武天皇)の東征を構想する。
第4話、厩戸の伯母で当代の女帝カシキヤヒメ(第33代推古)と、オオハツセ(第21代雄略)、シラカ(第22代清寧)の暴政に抗し、二人の弟を育てて大王にした女性イヒトヨヒメから、女性神アマテラスを性格付けする。
「附記」が末尾にあって、幻の史書「天皇記、国記」は、聖徳太子と蘇我氏によって編纂されたが、蘇我氏の滅亡とともに失われたが、船の史によって伝えられた、ともっともらしく書かれていて、『蘇我の娘の古事記』につながっていく。 -
こういう感じで読み解くの、妙に親近感があっていいなあ。
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初めて読む作家さんだったが、なかなか面白かった。
タイトルから厩戸皇子の物語なのかと思ったら、厩戸皇子が古事記を編むという(結局は頓挫するが)話だった。
古事記に出てくるいくつかのエピソードが実は…という設定は面白い。
厩戸皇子の系譜に繋がる蘇我家の祖先のエピソードもなかなか。
厩戸皇子の母である間人皇女と伯母である推古天皇との、複雑な関係も興味深い。
個人的には後の政変についても新解釈を書いて欲しかった。
実際のところ、古事記や日本書紀もこのような形で創作されたのだろう。