アタラクシア

著者 :
  • 集英社
3.39
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本棚登録 : 870
感想 : 94
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711844

作品紹介・あらすじ

望んで結婚したのに、どうしてこんなに苦しいのだろう――。

最も幸せな瞬間を、夫とは別の男と過ごしている翻訳者の由依。
恋人の夫の存在を意識しながら、彼女と会い続けているシェフの瑛人。
浮気で帰らない夫に、文句ばかりの母親に、反抗的な息子に、限界まで苛立っているパティシエの英美。
妻に強く惹かれながら、何をしたら彼女が幸せになるのかずっと分からない作家の桂……。

「私はモラルから引き起こされる愛情なんて欲しくない」
「男はじたばた浮気するけど、女は息するように浮気するだろ」
「誰かに猛烈に愛されたい。殺されるくらい愛されたい」

ままならない結婚生活に救いを求めてもがく男女を、圧倒的な熱量で描き切る。
芥川賞から15年。金原ひとみの新たなる代表作、誕生。


【著者プロフィール】
金原ひとみ(かねはら・ひとみ)
1983年東京生まれ。
2003年『蛇にピアス』で第27回すばる文学賞を受賞。
04年、同作で第130回芥川賞を受賞。
ベストセラーとなり、各国で翻訳出版されている。
10年『TRIP TRAP』で第27回織田作之助賞を受賞。
12年、パリへ移住。
同年『マザーズ』で第22回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。
18年、帰国。

感想・レビュー・書評

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  • 結婚は人生の墓場という言葉があてはまる。
    これを墓場と言うんだなと。
    結婚したが最後死ぬまで広がるのは殺伐とした墓場のような現実だけでどちらかが死ぬまでその墓場から抜け出すこともできない。

    幸せな結婚とか、ラブラブなんて言葉はほんとに存在するのかと疑いたくなるほどの世界観がここにあった。
    ずっとずっと、探している。あの人の本当の姿を、心のなかで思っていることを、今誰を愛しているのかを、いつも殺伐とした墓場のような世界を彷徨いながら探し求めている。見つけたと思う途端に手からスルリとすり抜けて消えてなくなる。手にしたはずの幸せも噛みしめるはずだった喜びも分かち合うはずだった痛みや苦しみも共に死ぬまで愛を誓ったはずのあの日も何もかもなくなっていく。

    どうしてだろう、自分に問い掛けて、どうして?とあなたに問い掛けて。それでも答えは何もわからないまま時は過ぎ、崩しようのない日々と情が積み重なり、重しとなり足を抑え込まれ動けなくなる。このままここにいたら、凍死してしまうとわかっている吹雪の中でも逃げることもできないまま、その場で人の形をしたまま固まっていく。
    大きな大きな出口のない墓場を彷徨う。

    人間という生き物が人生で着ることのできる着ぐるみはどれくらいなのだろうか。人は二面性なんて言葉で片付けられないほどの顔をもって生きているとこの作品を読むと思う。騙したいと思った人の数だけ、よく思われたいと感じたぶんだけ、いくらでも顔を使い分けられる。
    私達が見ているものは今日のあの人の1枚目。2枚目、3枚目を見ることができるかどうかは誰にもわからない。

    愛している人の本当を知りたいと愛に恋をしてしまった人たちが見失ったと思い込んだあの人の本当を探す物語。

  • 繊細で壊れそうな感情が、綺麗に描写されていて好きです。

    「確かなものに触れたかった。」

    「人はどうしてこんなに不確実性の塊なんだろう。確かなものが欲しくて言葉や温もりや思考を積み重ねても一瞬で爆発して放射線状に散り散りになってしまう。だから私は信じられない。自分も人も人生も記憶も明日も今日もこれから起こることも。何一つ信じられないそして今に縋る。彼の背中に立てた爪は祈りのようだった。」

  • だいぶ、作者の世界に慣れつつあるが、まだまだ。おそらく永遠にしっくりこないと思う。
    この本も、軽い気持ちで手に取り、冒頭のキャラ名で読む決心がついた。
    最後の、桂と由依の話が好き。
    幸せになって欲しかったが、その「幸せは俺が勝手に想像する幸せであって、彼らが考える、いや彼と彼女が考えるそれぞれの幸せでは決してない。

  •  読み終わった、になっているけれど何ひとつ記憶がない。。。

  • どろどろ
    この本を読んでいたら結婚したくなくなる
    結婚のネガティブな要素にスポットを当てた作品
    苦しくて余裕がない生活

  • 人間には人間しか居ない、けれど人と人ががっちり噛み合うことなんてない。すれ違ってただ居合わせたら結婚とかしちゃってる。そうして人が苛まされるそれぞれの不幸。瑛人と由依の幸福なやり取りの薄皮一枚剥がしたところからそれぞれの人物の輪郭が鮮やかになっていく体感が気持ち良かった。

    ちょっと前まで小説を読むとき、自分と重なる登場人物を探していたし、特に金原ひとみの小説を読むときは生きづらさを分かち合える・或いは言語化してくれる何かを特に探していた気がする。自分のために歌われた歌を探したい、的なやつ。アタラクシアはそれぞれの登場人物から相対化した事物への目線が良く、あー相対化かー、と思った。小説もだし、最近何か新しいものなり人なりに遭遇しにいくのは、相対化というサバイブ術を探しに行ってるのかも、などと思った。絶対視の重力から浮遊するために相対化する目線を獲得する。(とはいえ金原ひとみワールドは、自分のコンフォートな半径の範囲にある気もするが。)

    金原ひとみの小説で、特にパリのエピソードやフランスに準えた何かが語られるのが好き。彼女がパリという異国での生活で得た新しい視点が挟まれ、新鮮な風が吹くのを感じる。

  • 読んで気持ちの良いようなものではないけれど、うまくいってない一人一人が、ちゃんと人物像が描かれていて入り込んで読みいってしまう。
    ある人から見たら最低なヤツが、ある面からみたらとても繊細で傷ついていたりする。
    文章力というのか、とにかく読まされてしまい、本の中に入り込んでしまいます。

  •  男女の愛について、読み解く事が出来なかった。個人的には、登場人物のだれにも魅力が感じられなかった。

  • 私には不向き。色んな人がいる、ということ。読了拒否。

  • 自由に生きるつかみどころのない元モデルの妻。このパターンの女性はいつでも男を当たり前のように夢中にさせ狂わせる。
    妻に執着する夫、パリで出会った恋人それぞれ視点から語られる背景がわかりやすい。三人のまわりの女性たちもみな満たされずあがいている。
    アタラクシアとは平常な心という意味らしいが、それが失われた時はすぐそこに狂気があるという意味なのだろうか?

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2004年にデビュー作『蛇にピアス』で芥川賞を受賞。著書に『AMEBIC』『マザーズ』『アンソーシャルディスタンス』『ミーツ・ザ・ワールド』『デクリネゾン』等。

「2023年 『腹を空かせた勇者ども』 で使われていた紹介文から引用しています。」

金原ひとみの作品

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