家族じまい

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717143

感想・レビュー・書評

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  • 認知症の母と介護する父を中心に、その娘たちや娘の結婚相手の家族、と繋がりのある人たちに視点を移す連作小説。
    中島京子さんの『長いお別れ』と手法やテーマに共通するところが多いが、『長いお別れ』よりも肌触りはだいぶ冷たい。
    私は『長いお別れ』の方が好みなのだけど、この冷たさでないとなだめられないものを持つ人もいるのだろう。

  • 最近、家族のことを考える機会が増えてきた。介護をするための体力・気力・経済力、「いつでも戻れる」は「やってみるか」という気力がなくなってきたように思う。自分の中での余裕が、バランスが保たれないような気がして、この本を手にとった。
    家族のあり方はいろいろだなとあらためて思う。親子関係も、社会との関わりも結局自分の心をどう保って生きていくのかなのかなと、思った。どんな形であってもそれが家族であると自分が思っていたらいいのかな。そして、仕舞い方も人それぞれなんだなと思う。
    認知症を患った女性を起点に描かれている、女性の女として、妻として、母として、娘として、生き方、あり方、人生の仕舞いに向けて、順番を思い出させるこの作品。出てくる女性陣はなんだかんだ言って個が強い。そうならざるを得ない環境だったのかもしれないが。この小説で私にとって救いだったのは、「母はこの先誰と共有するとこも叶わない別の物語を持ってこの世をまっとうするのだろう。ふと、はっきりと言葉にはならないものの、それはもしかしたらとても喜ばしいことではないのかという思いが浮かんだ。」という部分だろうか。その後は読者が想像するしかない。おそらく、そんな劇的な解決方法があるわけでもなく、ただ、自分の出来る範囲で、日常を送れるように過ごしていくしかないのだ。
    最期まで記憶を持ったまま生き抜く人の辛さも思うけれど、認知症を患った人にとって幼い日々の幸せな記憶があるのならそれはそれで幸せと思うことにしよう。

  • なんか読んでてしんどくなる話だった。
    家族とはなんだろう?
    こういう関係性にはなりたくないと感じた。







    以下、ネタバレ
    第一章 智代
    智代は自分の母がボケはじめていることを妹から聞かされる。これまで、実家から遠ざかっていたが、先延ばしはこれまでかと感じた。

    第二章 陽紅
    智代の旦那、啓介の弟、涼介の元に嫁いだ、陽紅。
    涼介の母、うた子は孫が欲しくてたまらない。しかし、涼介は陽紅と子供を作る気はない。
    涼介は外でもいいから子供を作って来てくれと願った。陽紅は元夫と関係を持つ。妊娠に気をつけようと思ったときにはすでに遅く、妊娠が発覚した。

    第三章 乃理
    智代の妹、乃理は優しい旦那と子供達と暮らしていたが、夫の優しさになんとも言えない感情がわいていた。そんなとき母が認知症を発症した。
    頑固な父も一度倒れ、二世帯住宅を購入し、不満が解消されたかと思われたが、ストレスは解消されず酒に溺れてしまう。

    第4章 紀和
    サックスプレイヤーの紀和、船上での演奏をしていた。そこに老夫婦が現れる。投げ銭を貰うがどうやら様子がおかしい。サトミは認知症だった。夫は最後の旅行だという。夫は昔の後悔を紀和に話す。船旅最後の日、下船時に車をおろすときにサトミと一緒に来てほしいと依頼する。しかし下船時、夫は来ない。事故を起こしていた。それは故意なのか偶然なのか?

    第5章 登美子
    サトミの姉、登美子。
    登美子も二人の娘を設けていたが、一人は音信不通、一人には縁を切ると宣言されてしまった。しかし80も過ぎているのに家族とは何か、登美子はわからなかった。妹のサトミから正月の連絡がなかったことで心配になり家を訪ねるとサトミが認知症となっていることを知る。
    そこで登美子は過去や家族に思いをはせる

  • これは悲しい。
    ズーンとくる悲しさだ。
    ものすごくリアルで、
    家族とは
    老いていくとは
    いろんなものに絡め取られて
    いろんなものを捨てていく

    そういうことなんだろうなと思ってしまった。

  • 言葉少なくても、仕草や間や雰囲気で相手の考えがなんとなくわかってしまう、だからもっと、言葉で伝え合うことに遠慮や嘘くささを感じてしまう、近くて遠い夫婦のカタチの表現が、とてもしっくりきた。
    他人が夫婦であり続ける為に、自分の居場所を守る為に、家族という細い糸を必死に手繰り寄せて、それでもずっと同じカタチは保てないことは皆んな分かってる、また1人に戻っていく過程を、いろんな角度から見させてもらった。

  • 子ども時代に見ていた親と自分がその親世代となった時に見る親は全く違うことに気づく。子ども時代に理不尽な思いをさせられたり、傷つけられたことを今になって口に出すことは無いが、いつも心の奥に引っかかっている。1番近くにいるのに1番理解し合えていない関係が親子なのかも。避けては通れない自分と親の関係、そして自分と子どもの関係をも今一度考えさせられる本だった。

  • 中年以上の人には、リアルな問題がどっさりと登場する。そこで選び取られる選択肢は、自分とはまた違ったとしても、そのこと(老いから派生する諸問題、家族の諸問題)自体が持つ「寂しさ、仕方なさ」に共感することができた。人物ごとに章の主役が変わるので、ある人にとっての大問題が他の人の目にはサラリと描かれていたり、世の中そんなものよね〜と思いながら完読。

  • 桜木紫乃は北海道の人間の精神性を描写するのが本当に上手いと思う。ここに出てくる男性陣はまさに北海道の男の人そのもの。すごく優しくて人当たりは良いのだけど、子どもや妻の立場から見ると肝心な時に頼りないというか。
    函館在住の私としては函館が舞台の「乃理」の章が面白かった。乃理の父親が自分と乃理の性格を「人に勝つか一発あてないと安心出来ない性分」と言っていて、確かにいるよな、こういう人と。過去の功績を語ったり、マウンティングする人に共通する性格。 年をとるとそれがどのようにこじれていくのかわかる物語。
    全体を通して老老介護がベースになっているので、勉強にもなりました。

  • 家族が痴呆症や要介護になった時
    それまでの家族の在り方が響いてくる。
    親の介護は大変だけど
    自分もそう遠くない将来、子供に同じ思いをさせるかもしれない。
    そんな事を考えさせられた。

  • 読み進めるほどにタイトルの意味が重くのしかかってくる。決して非日常ではない誰にでも起き得ることだけにいろいろ考えされられる。章の繋がりも絶妙でどんどん引き込まれた。

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著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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