オーラの発表会

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717600

感想・レビュー・書評

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  • 面白くて一気読み。綿矢りさが創り出すこういう普通じゃない女子が本当に好きだ。

    主人公の大学生、海松子の感性がとにかく個性的。会話だけでなく語りも海松子の目線だから、読者は彼女の脳内が分かってる状態で読み進んでいくわけだけど、こりゃー周りから浮くよなあ、と心配になる。

    でも決してイヤな気持ちにはならない。ヘンな人だけど素直でうらおもてがない。人の言うことは聞くけど、決して振り回されることはない。孤独を恐れて友達に合わせたりしない。そしてそれを「自分は足りすぎている」と表現しているのが、素敵だなと思った。

    海松子の周りにいる父母、友達の萌音や奏樹くん、滝澤さん、父の教え子の諏訪さんなど、みんな個性的かつ魅力的。中でも海松子が塾のバイトで悩み、父の職場をこっそり見に行く場面、そこでの父とのやり取りが良かった。人生は限られてるから、さして重要でないことに思い煩ってる時間はないし、やるべきことに誠実に取り組んでいくように、ということなのだろう。

    個人的には諏訪さんがどういう人物なのか、もう少し読んでみたかった。あと、海松子の趣味だという凧揚げがとても楽しそう。川べりに凧揚げしに行きたくなった。

  • すごく面白かった!
    主人公の海松子は何処までも我が道を行っていて、同じ女性として、嫌味なく心から応援&好きになれる存在でした。萌音ちゃんも。

    みんなの中に溶け込みたい、普通であらねばと思う心にに、空気なんか読まなくていい!!何処までも自分を貫いてどんどん勘違いしちゃえ!!と言いたくなる素敵な物語です。
    『オーラの発表会』という表題の謎も最後まで楽しく読み進めることで解けますよ(^^)

  • コンビニバイトとか向いてると思う

  • 登場人物、主人公含めてクセが強い。
    良かれと思って……と素直過ぎる表現で突っ走る海松子。
    とてもじゃないけれど、実際にいたら友達にはなれないな……と思いました。
    そんな海松子に惹かれる男性陣に対しても「この子のどこがいいわけ?」と尋ねたくなるようなことばかり。
    海松子は奇天烈という言葉が似合うように思いました。
    それが彼女らしさなのでしょう。
    最早、何をしでかしても驚きませんでした。
    ただ、彼女の中に芽生えた小さな愛のような恋のような……そんな表現とラストの場面はとっても心が温まり、一気に海松子やその周囲の人達のその後を眺めてみたくなりました。
    読み始めと読んだ後のギャップが凄い作品でした。

  • あまり積極的に読みたい作家さんではなかったのだけど、この物語の説明を読んだとき、ものすごく海松子に惹かれた。

    始めから終わりまで、二十歳そこそこの若者たちの葛藤や苦渋がそこらじゅうに散りばめられている。けれどそれは若者特有のものというわけでもなく、人間の基本みたいなものなのかもしれない。
    仲良しのりなっちに対する思いを吐き出す滝澤さんのセリフや、萌音の吐露を聞いて、みんなこういう思いをしながら生きてるんだよなぁとしみじみと思う。
    そんな中で海松子を見れば、誰の心の中にも、負の感情が沸き起こってしまうのは自然なことだろうな、と思った。

    そんな日常を、心の内を、客観的に見ることができてとても面白かった。

  • 主人公が独特......!!笑
    かなり癖の強い女性なのですが、徐々にストーリーに引き込まれあっという間に読了!!
    恋愛がメインの小説ではないけれど、どうなるかわからない恋愛模様にドキドキ!

  • 他人の気持ちを読めない女のこが主人公だが、まね師のキャラが際立って魅力的。そういう生き方もありだな。大学デビューでありそうでない人間関係が描かれている。

  •  痛くてヤバい主人公に、結構偏った登場人物たち。それなのにお話がどんどんポジティブに進んで行くのが魔法を見ているよう。主人公の柔軟さとポジティブさの魅力を、周囲が理解していく様が素敵。この主人公だからこそ、みんなフランクに自分を出せるんだろうな。
     綿矢りさ作品で一番好きかもしれません。人に優しくありたいと思う一冊です。

  • 読む手が止まらず1日で読み終えた。

    この本を読むきっかけとなったのは可愛らしい表紙に魅了されて。
    実際に読んでみると装丁と中身のギャップに驚く。
    そこもまたこの本の中身をよく表しているかもしれない。

    主人公の海松子は言ってしまえば「ヤバイ人」。
    変な特技を身に付けようとしたり、枝毛を切るために出掛けたりするような変わり者。
    当然あまり理解はされ難く、友人は少ない。
    そんな娘を心配して両親は娘の成長のために一人暮らしを提案する。
    私にとっては海松子の両親も変わり者。
    砂を食べる娘に好奇心を持ったり、娘に干渉しすぎなところが私のなかでは普通ではない。
    そして海松子の友だち、萌音。こちらも分かりやす過ぎるくらいの変わり者。
    大学で出会う仲間もあぶらとり紙の趣味があったり、リスカの写真を公開したり、食に対して変な熱意を持っていたりとどこか変。おまけに海松子の変な行動をきっかけに海松子に恋心を抱く男も。
    みんな少し変わっている。

    変わっていると言えば変わっているけど、それがそれぞれの個性。個性だと気づければ受け入れられる。
    だけど人は相手と深く関わらないとそういうことに気付けない。
    相手を知らないから「あの人は変わっている」で済ませて馬鹿にし、自分の世界から省いてしまう。

    人と深く関わることができなかった、正しく言うと、してこなかった海松子は変わっていく。
    変わり始めたのは人を脳内であだ名で呼びしなくなった辺りからだと思う。
    人の個性を的確に表したあだ名には思わず笑ってしまった。
    絶妙なセンスで付けられたあだ名。それが仇。
    一言でその人を表せるが故に、付けたことで完結してしまう。そうやって海松子はその人のことをそれ以上知ろうとしなくなっていたのかもしれない。
    あだ名騒動がきっかけかは定かではないが、その辺りから海松子は相手と、そして自分の事も深く知ろうと「問い」をするようになった。

    個性強めな登場人物たちに紛れて七光殿はフラットなイメージがある。穏やかで、全てを当たり前のように受け入れられる人物。
    物語中の海松子と七光殿の会話がとても好きだ。
    「おそらく私は、一人で足りすぎているんだと思います。足りちゃいけないところまで、足りているんだと思います」
    「僕はきっと、ミルちゃんの足りているところが好き」「ミルちゃんが美しいものも楽しいことも悲しいことも、すべて自分一人で受け止められるタイプの人なら、それはそれで、素敵だと思うよ」
    七光殿は人によく「問い」をする人物だったと思う。 そして自分の気持ちに素直。
    物語終盤で海松子は彼のことを「彼の優しさを支えているのが強さだけではなく、他人を求める弱さもあった」と知り、「自分が彼のそばにいる責任感」が自分のなかに生まれてきたことに気づく。

    人を知ることで海松子は自身も受け入れられるようになった。
    この感想を書いているなかでふと、昔どこかで目にした「知ることは愛すること」という言葉を思い出した。

    この物語は本の紹介にあるように本当に恋愛「未満」小説だった。
    恋愛とかそう言うものだけにとどまらない様々な知る愛に気づかせてくれた良い物語だったと思う。

  • 綿矢りさの書くじわじわとした恥ずかしさみたいなもの、自分にもどこか心当たりのあるような、しまい込んだ思い出を掘り返されるような感覚がくせになる。共感とも違う、親近感とも違う、自分と同じではないんだけどちょっと近いところがあるような、そういう不思議な距離感を登場人物に感じた。

    【読んだ目的・理由】帯を読んで気になったから
    【入手経路】買った
    【詳細評価】☆3.9
    【一番好きな表現】好きだの愛だのという言葉を聞くと、どうしてもかつての拒否反応が甦ってきて、自分の気持ちを問いただしてみても、たまねぎのどこまでが皮か分からなくて全て剥き切ってしまい、残るは無みたいな感覚に陥る。(本文から引用)

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著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

綿矢りさの作品

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