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著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 85
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087718188

作品紹介・あらすじ

あなたを知ることは、あなたという人を選んだわたしを知ること。
多民族国家の生きた声を掬う在豪作家が贈る、力強くみずみずしい《越境青春小説》。
父の転勤にともない12歳でオーストラリアに移住し、現地の大学生となった安藤真人。憧れていたはずの演劇の道ではなく就職を選ぼうとしていたところ、デザイン科でマリオネットを制作しているアビーと出会い、人形劇の世界に誘われる。日本人としてのアイデンティティの問題に苦しんできた真人のように、「同じアルメニア人と結婚を」と刷り込まれてきたアビーもまた、出自について葛藤を抱えていた。互いを知りたい、相手に触れたい。しかし、境遇が似通うからこそ、抱える背景の微妙な差が、猛烈な「分かりあえなさ」を生み……。

話題の既刊『Masato』『Matt』につらなる、「アンドウマサト三部作」最終章!

【著者略歴】
岩城けい(いわき・けい)
1971年大阪府生まれ。大学卒業後、オーストラリアに渡り就職。以来、在豪30年になる。2013年に「さようなら、オレンジ」で太宰治賞を受賞しデビュー。14年に同作で大江健三郎賞、17年に『Masato』で坪田譲治文学賞を受賞。他の著書に『ジャパン・トリップ』『Matt』『サンクチュアリ』『サウンド・ポスト』がある。

感想・レビュー・書評

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  • 3部作だと知らずに手に取ってしまった。
    出自についての葛藤は、当事者にしかわからないものがあるのだと思う。
    そんな人同士の恋愛は、一筋縄ではいかないだろうけど、乗り越えて欲しいなと思った。

  • Masato、Mattに続く第三弾。前の2作は多国籍のオーストラリア社会で両親とも日本人の少年が、自分は何者なのかと悩みつつ成長する話で、ストーリーを楽しみながらオーストラリアの学校制度やMasatoに代表される人たちの葛藤を考えることができた。今作は葛藤や思い悩む彼らの内面がメインで分かりにくかったけど、日本の多数派として暮らしていると想像すらしない思考に触れることができた。

  • この島国に住み生きていると忘れがちになってしまうグローバルなこと、このMasatoシリーズは考えさせてくれます。
    アビーという女の子にとってもアルメニア人であるということが足枷になっているし、悩みでもある。
    民族、人種の違いって、ましてや他所の国に住んでいるということも人としてこれほど重くのしかかっているなんて。
    清々しいだけの青春小説でない、けれど未来をこれから切り開いてゆく若い人たちに読んで頂きたい。
    マリオットって隠喩の小道具も、とても効果的です。

  • 大学生になったマサトことマット。オーストラリアでの日本人としてのあり方、自己の存在意義に揺れ動く。人形劇を通じて親しくなったアルメニア人のアビー、彼女の抱えるアルメニア人のルーツへの固執など自分にも関わりすんなりと恋人になれない。移民と言ってもいろんなケースがあり都合のいい人間を演じながら少しずつ怒りが蓄積されていく様子が伝わってくる。
    三部作が一応完結したようだが、この先マサトがアビーとまた新たに出会えたらいいなぁと思った。

  • これが最後とか。

    安藤真人もいよいよ大学生から社会人へと大人への道を進む。 

    自分の内面に向き合う多感な年頃になって
    オーストラリアは外からのイメージだとおおらかな国のように思うけれど
    観光では見えない複雑な多民族国家の中、
    真人の家族の事情、アビーの事情も絡み合って人生はより複雑に。

    大人になっていくとはこういうことなのかと、
    これはどこの国に住もうともありえる話。

  • 岩城けいの最新作。Masato がMattになって、再びMasato になって歩み始める。アルメニア系移民の彼女の自立と絡ませて、より複雑なダイバーシティのなかでのアイデンティティの獲得を物語にする。これでMasato シリーズは終わりかな?注目の作家さんです。

  • 三部作、順番は2→1→3だったけど、とにかく完読。とにかく二人の気持ちがすれ違いまくってて苛つく。でも、これがマイノリティー同士のリアルなのかもしれない。

  • 「Masato」「Matt」に続く作品は「M」。
    マサトでもあり、マットでもある「僕」が自分について問い続けるからだろう。
    とにかく、父の仕事の都合でオーストラリアに連れてこられ、
    困り果てていた少年が日本に戻らぬ選択をし、
    ここでは、ついに大学まで卒業をしてしまう!
    なんか、こちらも年をとったよね、そして読後の良さは覚えているけれど
    はたしてどこがどう良かったのかを全く覚えていないという始末。
    いちおう、本棚チェックをしたのだが、収めていなかった。
    年のためにみた、前の本棚にも無し(あの頃はムラがあったからな)

    とにかく本作は、岩城系らしさが全開、良い意味で。

    マットは自分のグルグルから、同じように悩む他者へ目を向け、
    居心地の悪さを感じるが・・・やがて、というお話。
    アビーというアルメニア系の女性が、なかなか秀逸。

    アルメニアも、以前、ジェノサイドをテーマにした児童文学作品を
    読んだのだけれど、これも収録しておらず。
    ネットでもチェックしたけれど、さして有名なタイトルでもなく
    古い作品だからなのか、はたまた検索が未熟だからか
    ヒットせず。
    つくづく、ちまちまと(?)この本棚を活用する意義を感じる。

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著者プロフィール

大阪生まれ。2013年『さようなら、オレンジ』で第29回太宰治賞を受賞し、デビュー。同作で第150回芥川賞候補・第8回大江健三郎賞受賞・2014年本屋大賞4位。2015年刊行の『Masato』(集英社文庫)で第32回坪田譲治文学賞受賞。他、『ジャパン・トリップ』(角川文庫)、『Matt』(集英社)、『サンクチュアリ』(筑摩書房)の著作がある。

「2022年 『サウンド・ポスト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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