- Amazon.co.jp ・本 (517ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087731569
作品紹介・あらすじ
すべては蒸し暑い六月のアーリントン国立墓地から始まった。埋葬されるのはジョン・ポール・ヴァン。一介の元陸軍中佐であり、ある意味では軍に反逆した人物である。それでもアメリカ政府、軍の要人を初めあらゆる人びとが葬列に加わった。ペンタゴン・ペーパーズ(国防省秘密文書)・スクープでニクソン政権に痛撃を加えたニューヨーク・タイムズ記者ニール・シーハンも参列者のひとりだった。陸軍軍楽隊が慣例を破って奏でる「花はどこへ行った」を聴きながら、彼はある決意をかためた。ひとりの男の生涯の記録で描いたアメリカ現代史。全米図書賞、ピュリッツァー賞、コロンビア・ジャーナリズム賞、ロバート・ケネディ賞受賞作品。
感想・レビュー・書評
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英雄である主人公の葬式から始まり、ベトナムでの初期の作戦、生い立ちと言う順番に書かれている。
主人公は実在の人物なのだが、サイコパスだと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
冒頭からアーリントン墓地での埋葬場面である。葬られるのはジョン・
ポール・ヴァン。元アメリカ陸軍の中佐である。
ピューリッツア賞を受賞したデイヴィッド・ハルバースタム『ベトナムの
泥沼から』の主人公であり、本書の主役でもある。
文字通りアメリカを泥沼にはまり込ませたベトナム戦争は、そもそも
ゴ・ディン・ジエムなんていう人物を初代大統領として認めたことから
間違いだった。
サイゴン政府とそこへ派遣されたアメリカの軍事顧問の将軍たちは、
戦場の現実を見ようとはしなかった。それどころか、前線から上がって
くる報告書を握り潰した。そして本国に報告する。「ヴェトコンを壊滅
状態に追い込んでいます」。
上層部が自分の報告に耳を傾けないことがはっきりすと、ヴァンは次
なる手を考える。アメリカからヴェトナムへ派遣されて来た報道陣だった。
そして、アメリカ版大本営発表と実際にデルタ地帯で起こっていることの
相違が、メディアによって明らかになる。
ハルバースタム『ベスト&ブライテスト』は、こういった背景があって
書かれたものだったのだなと納得。
本国へ戻ったヴァンには、通常現地帰りの将校が行っていた国防総省
でのブリーフィングも認められなかった。
現実を見ようとしなかったアメリカは、皇帝になろうとしたゴ・ディン・ジエム
の思惑にまんまとはまって泥沼から抜け出せなくなるのだ。 -
本書は戦争と言うより政治ドキュメンタリーとして非常に重要な本だと思う。本書は私の思考に重大な影響を与えた本です。